第222話「八っ場ダム」ふぁいる③ このダムって完成するんですか? 廃墟のメカニズム&新たな旅へ [廃村さーくる]
「わきゃ~・・・菅原先輩? そういえばさっきからずっと歩いているのに、全然、人とすれ違うことが無いですね~」
ちょっぴりえっちな温泉地獄?を脱出してきたボクと夕実ちゃん。・・・まあボクだけが生き地獄と言いますか、生殺しだっただけなんですがね・・・。
雪の衣をまとった川原湯温泉街の坂道を下る途中に、ふと夕実ちゃんは下唇に人差し指を当てながら、う~ん・・・と疑問を投げかけてきたんです。
「良い疑問だね!」
「ええ~!? な、な、なんでですか?よくわかんないですよ、わきゃ?」
ボクの返事に彼女は、?マークをいっぱい頭の上に浮かべたみたいにわきゃわきゃと言いながら首をかしげる。
「ここはね、少しづつ住民が流失してるんだ。それのせいも多分に関係してるのかもしれないね」
「うーん・・・、その住民さんたちはどこに行っちゃったんですか? ・・・ってああそういえば!?」
何かひらめいたように、ポンと手を叩き、その先の言葉を嬉しそうに続ける。
「そう言えば駅を降りてから目の前の高い丘に、このダム建設で沈んじゃう住民さん達のために、代替地を建設してましたよね?
そこに移り住んじゃったんじゃないですか?って私、超かしこいかも、わきゃー☆」
「ブブゥゥーーー! ・・・不正解です」
「ええーーーー違うんですかぁーーー!わきゃわきゃ・・・」
まるで不幸のどん底にでも叩き落されたような顔をして、ガードレールに、よよよッ・・・ともたれかかる夕実ちゃん。
この子はどうもオーバーアクションな白人の血でも流れてるに違いないな・・・。
「代替地はまだ完成してない所もあったんじゃなかったかな?確か。
それとね、いつまで経っても中々完成のメドが立たないダム建設に不安になったり諦めたりで、この土地を捨て他の町や県外に引っ越す方も多いと聞いてるんだ。
ここは『過疎化』が始まってる土地なんだよ」
そう、ここは工期延長・延期に散々翻弄されることによって過疎化が進行しているところです。
「廃墟や廃村の定義って夕実ちゃんは~・・・当然サークルメンバーだし、・・・・・・知ってるよね?」
「え?え?えーーーーーッ!? なんで突然ここでそんな質問とかするんですかあ!?」
超イジワルですこの人ってくらいに、ほっぺをぷーーーっと膨らませて、ふいの質問にしばらく考え込む夕実女史。
「自信ないですけど・・・え~っとですね・・・なんかの理由で維持管理ができなくなって、放置プレイされた建物や集落・・・かな?」
「おお!!!夕実ちゃん、だいたいあってるよ!すごいね~」
「えへ☆ これでも廃村さーくるのメンバーですもんっ! わきゃーーーー! 先輩に褒められちった♪」
まあ簡単に言えば夕実ちゃんが言ったことが基本の廃墟の定義なのかもね。
・・・放置プレイはどうかと思うんだが。
「でもこれがさっきのお話とどう繋がってくるんですか?」
「関係アリアリだよ? この廃村でもなんでもない土地に出向いてきた理由は廃墟へのメカニズムをより理解してもらいたかったってことなんだよ。
廃墟ってのは、人が『いなくなってしまった』建物だ。廃村も同じだよね。
理由はそれぞれなんだけど、ボクはね『廃墟そのものに興味がある』というよりも『廃墟へとどうやって至ったのか?』っていう、
メカニズムと言うかプロセスに興味があったわけなんだ。
だからこのサークルを作ったと言っても過言じゃないんだよねえ」
「うわ~、そういうことだったんですね。私を温泉に連れ出して、その後良い雰囲気に持ち込んであんなことやこんなこと・・・なんて勝手に思ってましたよお~。わきゃー☆」
せっかく廃村サークルを何で作ったのかと、初めて打ち明けたのがそのお返事ですか。あはは~ん・・・。
まあ~もう1個の理由(いつも追いかけてきちゃう夕実女史を怖がらせて遠ざけるため)は絶対言わないけどね。
そうこう色々考えてる間にぼくたちは川原湯温泉駅の前を通り過ぎ、国道をゆっくりと下っていくのでした。
「わーーーッ!すごいキレイな眺めですねえ♪ 川の色が緑!緑ィッ!! わきゃー☆」
ここは名勝「吾妻渓谷」へと通ずる八っ場大橋からの眺めです。
なくなってしまうであろう国道145を駅から下ること10~15分といったところでしょうか。
「でもせんぱーい? なんでこんなところに? は!? ・・・まさか・・・」
「それはない」
「まだ何もいってませんけどー」
夕実ちゃんに勝手に妄想されると話が進まないので、冷たくバッサリといきました。・・・どうせエロだろ。
「遊歩道・・・閉鎖中ですね先輩・・・。もう少し近くで見てみたかったなあ~・・・」
残念そうな夕実ちゃん。まあボクは冬季閉鎖であることは当に知っていた。
「先輩!先輩!先輩!!! 渓谷の岩肌に、すごくいっぱいツララができてるんですけど!? すごくキレイですゥ!わきゃー☆」
遊歩道には行けないけれども、それでも国道から見渡せる冬の吾妻渓谷が見せる姿に、夕実ちゃんは驚嘆の声を何度も上げる。
「崖がほとんどツララで出来てるってすごくないですか?先輩!」
すごいよな。秋の紅葉・初夏の青々とした緑もいいところではあるのだけれど、
冬の崖一面をびっしりと埋めたツララの群れには、ただただため息しかでないくらい圧巻な景色だった。
「この景色も、いつかは無くなってしまうのかもね」
ボクは国道沿いに立てられた八っ場ダム建設の看板を見上げながら呟いた。
「なんか・・・もったいないですよね。わきゃ・・・」
さっきまであんなにはしゃいでいた彼女だが、まるで自分の不幸であるかのように悲しい顔をしてみせる。
・・・ボクは彼女のそういうところはとても好きだったりもする。
「でもでも~、このダムって未だに完成してないんですよね?」
「うん、工期も延長に延長を重ねたりして中々進んでない状態だね」
「こんなに長い40年以上っていう年月の間に『このダムがなくて非常に困った』ってことがどれだけあったんでしょうかね。
ちょー困った~ってことがあったんでしょうか?
今まで無くてもなんとかやれてきたんじゃないんですか?先輩」
目に涙を滲ませつつも訴える夕実ちゃん。
「ん~どうなんだろう。夕実ちゃんが言うように、超困ったってことは無かったような気もするね。
でもこれが完成すればもっと暮らしが良くなる・・・かも?ってことなのかな」
「疑問系は嫌いです!」
あやふやに答えてしまったボクに対してふるふると憤る夕実ちゃん。
ごめんね。この問題は複雑なんだよ。ボクにはとやかく言えない問題でもあるしね・・・。
本来ならばもっと先まで国道を下り、国道や橋の付け替え工事現場を見てもらおうと思っていたのだが・・・
「お~な~か~減りましたですよ~う!先輩!ゴチってください。さっき私を怒らせた罰として☆」と、
オレが怒らせたみたいな理不尽で無理矢理な理由で食堂を探すために駅前まで戻ってきたのだ。
・・・が、食堂らしきものはほとんどなく、あってもやっているのか疑問に思えるところばかりで、
帰りの時間もそうそう無いというところで、今回の旅はこれでこの地を離れることにした。
「高崎で途中下車して奢ってくださいよー、うう・・・お腹ぺこぺこです」
僕たちは簡素な木造の休憩所で次の急行列車を待っていました。
こういうところにある座布団ってみんなバラバラな柄で、なんで派手な座布団とかあったりするんだろうか?
毎回、都会を離れた時に思うことだったりする。
そんなことを頭の中でぼんやりと考えていたときです。
「スゥゥーーーーー・・・・スゥゥーーーー・・・」という寝息?と同時に、少し左肩が重く感じられるのでした。
・・・眠っちゃいましたか。
まあ~無理も無いかな。朝早かったし、かなり歩いたかもしれない。
次の急行列車が来るまでは、そっとしてあげよう。
それにしても静かな時は可愛いんだけどなあ~この子。
ああ・・・ちょっといい匂いするかも。
なにしてんだオイラは・・・。
「むにゃむにゃ・・・・・・先輩・・・」
寝言だろうか? 相変わらずボクにもたれたままの夕実ちゃんが、目を閉じたまま口をもごもごと動かしている。
「先輩・・・オス・・・」
その言葉に、深呼吸するように彼女の匂いをかいでいたのを止めておきました。
・・
・・
「流石に途中下車してる時間が無いから、これで許してよ夕実ちゃん!」
帰りの車内販売で駅弁を購入し、夕実ちゃんに手渡した。
「お酒付きなんで、これで許してあげましょう!」
そう言って350mlのほうでなく、500ml缶の缶チューハイをプシュッと開けて、豪快にグビグビする夕実女史。
・・・ボクが500mlを飲もうと思ってたのになあ・・・
まあいっか、機嫌もすっかり直ったようだし。
「あれ? このお弁当、おみくじがついてますよ?」
ああほんとうだ、試しにボクの方からおみくじを開いてみることに。
「先輩は吉ですかぁ。まあまあってところですかね☆」
いやあんた、吉は良い部類なんですけど・・・。
「じゃあ~夕実ちゃんはなんだったのさ? ちょっと見せてみそ」
「だめーーーー。みせませんよーだ☆」
そう言って、こそっと胸元のポッケにしまい込んでしまった。
そこに入れられたら、さすがに手を出すわけにはいかないよな・・・
「じゃあ~せめて、少しくらい書いてあったこと教えてよ夕実ちゃん。お弁当二個とアルコールで奮発したんだからさー」
「2000円くらいで先輩せこすぎですよー。そんなんじゃ女の子逃げていっちゃいますよ、わきゃー☆
・・・あ、でも旅行のところだけ教えてあげよっかな~」
待ち人とか失くし物とか金運とかじゃなくって旅行ですか。
「近し者と西へと進むが吉って書いてありますよ☆ 先輩、今度は西ですよ西!」
西? 西かあ・・・。ボクは暫くその「西」と言うキーワードに頭をめぐらせる。
「どうしました先輩?考え込んじゃって。 あ!? まさか・・・えっちなこと? わきゃわきゃー!」
相変わらず勝手な妄想で突っ走る夕実女史。
周りの乗客もなんだなんだと、こちらを見るもんだから恥ずかしい・・・
「まあまあ夕実ちゃん、落ち着いて。ね? ・・・でさ、次の目的地の候補が1個思いついたんだけどさあ~、廃村さーくる的にはうってつけかもよ?」
「それはどこですか?」
「それは『犬島』だね☆」
「犬島? ワンワン?」
「ネコの方が多いらしいですよ」
さてさて、次回の廃村さーくるはいったいどこへと向かうのやら?
それはまた後のお話^^
ここまで読んでいただいた方、ありがとうございました☆
お疲れ様です。長かったでしょ~w
良い所でしたね
犬島気になります
ロケハンお願いしますね(^^)
by (。・_・。)2k (2011-02-01 03:47)
わきゃ~!
このシリーズはいろいろと考えさせられるシリーズですね。。。
犬島にはいったい何が待っているのやら。。。。
by リン (2011-02-01 07:50)
一瞬、下田かと思いましたがあっちは「犬走島」でしたね^^;
西の方なんて言うから、某〇崎県にある正式名称が「端っこの島」的なあの島に行くのかと…^^;
高崎観音弁当のコンニャク抹茶もちが気になります…(・_・;)
by 下総弾正くま (2011-02-01 08:43)
長かったよぉ~
40年も長いですね ダムどうなるんだろ?
犬島も気になるなぁ
by ねこじたん (2011-02-01 12:16)
40年前、、、ランドセル買ってもらったあたりです^^←歳がばれちゃうってが^^
by 吟遊詩人41 (2011-02-01 12:34)
うんうん。凄く良い場所ですが・・・。
ダム問題、40年間の経緯はいったいどうなのでしょう?
自然をぶっ壊してまで必要な物なのでしょうか?
と、僕は思うのですが。
その答えは【犬島】なんですかね??
NEWマスクで『ちょいのり参上!!』みたいな。(爆)
by yoshinorhythm (2011-02-01 15:34)
(。・_・。)2kさん、ここは一度行ってみたいなあ~と思ってたところなんですよ~^^
まあ~行くかどうかはまだ分からないんですけどね^^
by ちょいのり (2011-02-02 01:04)
リンさん、色々と考えられるように作ったつもりです。
まあ~ちょっと、第三者的で公平じゃないんですけどね^^;
by ちょいのり (2011-02-02 01:05)
下総弾正くまさん、某〇崎県? ああ!宮崎県だよね^^
え?違う? ああ~!あっちかw
本当はそっちいきてーですよおー^^
抹茶もちは・・・プニプにでモチモチで・・・普通のお味でございました☆
by ちょいのり (2011-02-02 01:08)
ねこじたんさん、まあ~そのうち完成予定ってことで^^;
住民さんのためにも、はっきりさせてもらいたいところなんですが・・・。
by ちょいのり (2011-02-02 01:10)
吟遊詩人41さん、オイラは~・・・まだ生きてないなあ~w
by ちょいのり (2011-02-02 01:11)
yoshinorhythmさん、犬島にヒントはまだ分からないのですが、共通項はどこかにあると思っていますので、
行けたら探して考えてみたいと思ってます^^
マスクは新調したいなあ~w
by ちょいのり (2011-02-02 01:14)
あろさん、ゴメン!コメ消した^^
ちょっと乱暴過ぎる文章だと思ったので許してください^^
by ちょいのり (2011-02-02 01:15)
廃村とかって私の場合人ごとじゃないからなぁ。。。
街に住む人は ダムになっちゃうとこに住んでる人の
気持ちなんか全然分かってないんだよね
生活が豊かになるより もっともっと大事なものが
そこに存在してるって事 どんなに説明しても分かって
もらえないんだよね。。。
by aeon (2011-02-07 11:54)