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第278話『秩父・茶平編』vol③朽ちた家屋に残された回覧板  [廃村さーくる]

「もうここまで来たら、とにかくひとまずなによりすなわちですよ! わきゃー☆」

 浦山ダムの縁を延々と歩いてきたボク達三人。

 駅から一体、どれくらい歩をすすめたのだろうか?

 アップダウンの道のりに体力をそぎ落とされ、見上げた山の頂上に続く緑の林道が恨めしいほどです・・・。

 さっきまで「おんぶーおんぶー! ・・・お姫様だっことかでもいいかなあ~」なんて冗談を言いつつも、少し疲れた感じだった夕実ちゃんが、キーン・・・と両手を広げて林道を駆け上がっていく・・・。

 彼女の子供みたいなわけ分からんタフさが、たまにうらやましくも思います^^;

 早く早くぅ!と急かす夕実ちゃん。

 う~ん・・・ちょっと脚痛いんですけどォーと嘆く首塚さん。

 さあ、もうすぐ?目的地。

 ボクは首塚さんに手を貸しつつ、ゆっくりと緑の林道を上へ上へと歩きだしたのでした。

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「廃村へと続く道なわりに、なんだか普通じゃない?」

 うん、まあ~首塚さんが言うのももっともだ。

 イメージ的には「荒れ果てた道無き道を突き進むぅー!」って思い浮かべるかもしれないよね。

「本当はね、別のルートがあるんだ」

『『別のルート?』』

 この浦山ダムのずっと縁を歩いてきたわけなのだが、実は山の上に残された旧集落と旧集落たちを結びつける『別の道』が存在する。

 それは『うわごう道』と呼ばれるもので、かつて存在していた山々の集落どうしを行き来できる生活道路があったのです。

 そこは今では車などの通行は非常に困難な本当の山道として残っているのだけれど、

 彼女たちには少し酷なのかと思い、今回はあえて廃村群の一つである『茶平(ちゃだいら)』と言う旧集落を訪れることにした経緯があるのです。

 ここは県道から続く舗装された林道から至れるので、比較的ライトな廃村巡り?には、打って付けと言う訳なんです^^;

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「せ~ん~ぱ~い~・・・。・・・登っても登っても、全然ソレっぽいところが見えてきませんですぅ・・・」

 ・・・あくまでも、その『うわごう道』よりは『ソフト』なだけであって、決して簡単には廃村には辿り着けませんですよ~。

 なぜ、ここが廃村へと至ってしまったのか?

 これだけでも少し分かってもらえるのではないかなと。

「もう少しですから頑張りましょうね☆」と、彼女たちに発破をかけつつ、ボク達はさらに上へと向かったのです。

 ダム湖のほとりの林道入り口から何十分歩いたのだろうか?

 ・・・下半身に鉄球でも繋がれたんじゃないか?ってくらいにボク達の動きがゆっくりになる。

 さすがの夕実ちゃんもバテバテだ・・・。

 首塚さんは・・・言うまでも無いか。むしろ死にそうです^^;

 もう・・・引き返しても文句は言われないだろうと思い始めた頃、夕実ちゃんが先を指差し、ボクと首塚さんに振り向いた。

「道が三つに分かれてますですぅ・・・」

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 ・・・ほんとうだ。

 実は自分も茶平と言う廃村への詳しいルートは、よく分かっていなかった。

 ネット検索で紹介されてる廃村を調べたりするのだが、

『暗黙のルール』とでもいうべきでしょうか?

 詳しいルートは、ぼやかして表現したりするものなのです。

 静かに朽ちていく村・集落への『配慮』なのかもしれません。

「この三つの道の先のどれかに『本物』が存在するってことよね? ・・・どうする?

全部イってみる?」

 先ほどまで死んじゃうんじゃないかってくらいに、ゼーハー・・・ゼーハー・・・と言っていた首塚さんは、ワンピースの秘宝でもこの先にあるのじゃないのかと急に息巻くのだ。

「・・・多分~、真ん中です☆ 真ん中行きましょう! わきゃー☆」

 夕実ちゃんは、ボク達に少しのシンキングタイムをくれることなくズンズンと真ん中の道へと歩きはじめる・・・。

 ・・・しょうがないのでついていくことにしました^^;

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「い、いきなりソレっぽいの発見ですぅ! わきゃー☆」

 真ん中の道を少し進んだところで、一軒の廃屋?らしきものを見つけた。

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「う~ん・・・でもおかしいなあ。見回してもここ一軒しか見当たらないよね・・・」

 想像していたのとは違う気がした。・・・そもそもここは林業に携わる人の待機所みたいにも感じられたのだ。

 たしかに荒れ果ててる感じはするのだけれど。

「だったら後は二択よ? ・・・右か左か」

 残された道は二つ。

 片方は舗装が残ってる上へと更に続く道。

 もう片方は、すぐに草むら。その先は木々に囲まれている。

「くんくん! なんかこっちの方から廃村臭がするです! こっちに行きましょうですわきゃー☆」

 鼻をフンフン言わせて左手の草むらのルートに突っ込んでいく夕実ちゃん。

 呆れ顔でその後に続くボク達。

 ・・・呆れていたはずだったのになあ・・・

 草むらと木々を少し抜けたあたりで、なぜか急に明るい場所へと辿り着くことになるのでした。

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 そこは長い長い芝生のような草で覆われた場所。

 周りに木々は無く、そこだけが別の世界。

「上の方に建物がありますですぅ!!!」

「わあ!ほんとだあ!」

 彼女たちが指差した方向を見やるとそこには『家屋』が数軒立ち並んでいたのでした。

 草と木々に隠れた人の作りし建築物が。

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「なんか・・・ふつーに人が住んでそうなんだけど・・・」

 首塚さんがそう言うのも仕方が無い。ぱっと見、一番手前にある建物からは、廃屋らしき雰囲気は感じられなかった。

「うん・・・もう少し行ってみようか」

 ここまで来たなら、もう少し探ってみたかった。

 それが有人なのか無人な建物かは別として。

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「これは自転車かしらね?」

 あたりを見回すと、古びた、もしくは朽ちた感のあるものがいたるところに見受けられた。

 ここで少し確信をする。

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 先ほど見上げた家屋の裏手にまで上ってきた。

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 家屋に近づくにつれ、雰囲気があからさまに変わっていく。

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 一軒の家屋の玄関までボク達は辿り着いた。

「こ、こここここんにちは~・・・」

 夕実ちゃんが恐る恐る声をかけた先は、がら空きの玄関と、その先に広がる無人の室内だった。

 ・・・ボク達は『茶平』と言う『廃村』に辿り着いた。

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「お、お邪魔しちゃってもいいのかしらね?」

 玄関口から覗き込むボクに首塚さんが問いかけてきた。

「ぶっちゃけると『よくない』と思う。なるべく荒らさず、そして外から見るのがいいんじゃないかな」

 こんな荒れ果てた場所でも必ず所有者・管理者は存在する。

『「ごめんくださーい♪ 誰かいらっしゃいますかー?」って感じで見回せばいいってことですかね☆』

 いや夕実ちゃん・・・そういう問題じゃ・・・無いんだけどね^^;

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「かまど? ・・・なのかしら?」

「う~ん・・・たぶんそうだろうね。残ってるものを見た限りじゃ・・・2~30年近く経過してるんだろうかね?」

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「先輩!先輩!せんぱ~い!」

「ん? どうしたの夕実ちゃん」

「さっきから、ところどころに動物のウンチを見るですよお」

 ・・・犬や猫じゃないな。

 おそらく猿かイノシシかもしれない。

「へたすると猿とかイノシシに出くわす危険もあるから、用心したほうがいいかもね」

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「なんか、軒先にトロフィーが置いてあるんですけど」

「これはあからさますぎだよね。・・・たぶん、ここを訪れた人のイタズラなんじゃないかな?」

 よく見てみると、ボーリング大会でもらったトロフィーでした。

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「わきゃ・・・なんか破れた障子紙って・・・こわいですぅ・・・」

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 ふと軒先に回覧板を見つけた。

 今では隣の家々には誰も住んでいない。

 もうこの回覧板を持っておとなりさんに渡す事が無いんだろうね。

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「はしごですぅ・・・。登ります?」

「いや・・・やめておくよ」

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「三ツ矢サイダーって今でもあるけど、みんなペットボトルよね~。

 ん? あらら?

 これって全部、蓋してあるにもかかわらず中身が空っぽね。どういうことなのかしら」

 ん~・・・それはボクにも分からないなあ。

 ご丁寧に王冠で蓋してあるしなあ、真相は永遠に闇の中だと思う。

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「ダムから免れたにもかかわらず、結果として廃墟となってしまったのがここ『茶平』という集落なんだけど、

 コレを見て色々考えさせられるよね」

「わきゃー・・・だって・・・不便じゃないですかー・・・ここ^^;」

「その言葉につきるんじゃないのかしらね^^ 人ってやっぱり便利な暮らしを求めるものじゃない?

 私も代官山とか銀座の近くのほうがいいしねw」

 まだまだ上の方には数軒ほどの廃屋が見受けられた茶平廃集落だったのだけれど、

「お腹がちょーー減ったです・・・」という夕実ちゃんの嘆きでお開きに^^;

「じゃあー、せっかく秩父まで来たんだ、お蕎麦でも食べて帰ろうか?」

『『さんせー♪ さんせー♪』』

「ああ・・・そうだ。そういえば今時期の秩父は「アレ」もやってるかも。

 お蕎麦食べたら少しみんなで寄り道してみようか。

 きっと喜んでもらえると思うよ☆」

 ええ~!? 「アレ」ってなんだろう~?とはしゃぐ彼女たち。

 ボク達はこの山中に、そして時間に取り残された小さな小さな村に別れを告げ、林道をゆっくりと下るのでした。

※ここまで見ていただきありがとうございました^^

 次回は番外編「上も下もサクラがわきゃー☆な秩父編」をお送りしたいと思います^^

 

※次回


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コメント 29

リン

夕実ちゃんの勘がさえまくりですね!
そして、回覧板。。。一人減り、また一人。。。
そして、回覧板が回ることなくなったのかな?
それともある日みんなで山をおりたのかな?
経緯が気になりますよね、廃村って。。。
by リン (2011-05-01 07:19) 

まめ

家も、誰もすまなくなったとたんに風化がすすみます
ものねぇ。何年放置されてるんでしょうか。
夜に来ると怖そうですね
by まめ (2011-05-01 08:29) 

tomomame

建具とか見ると、私が子どもの頃暮らしてた借家よりずっと丁寧な生活をしていただろうと偲ばれます。
住む人がいなくなってしまうと、こうなってしまうんですね。

ここまで歩いてきたらお腹すくでしょう^^
お蕎麦、お蕎麦~♪わきゃー☆続きもお待ちしてます♪
by tomomame (2011-05-01 12:09) 

yoshinorhythm

ちょいのりさん、度胸ありありっすね!
これは明らかに誰かが住んでいて・・・。
現金目当てに襲われて・・・。
殺害されて・・・。

とか・・・。

考えちゃいません?(笑)

僕、意外と臆病者なんです。。。^^;

by yoshinorhythm (2011-05-01 14:34) 

たかれろ

これは、ごちそうですね~ (゚∀゚)

「こ、こここここんにちは~・・・」の上の写真と、
障子の上の洋ダンスの写真が、特に♪♪
by たかれろ (2011-05-01 15:12) 

ろーるけーき

昼までも怖そうですね
今度は夜にチャレンジw^^;
夜は危険ですよね。
by ろーるけーき (2011-05-01 18:39) 

サンダーソニア

いろいろ置いていっちゃうものなんですね。
by サンダーソニア (2011-05-01 19:47) 

kiyo

最後に残されてた「片方は舗装が残ってる上へと更に続く道」は、どこへ続いていたのかも、気になります。

by kiyo (2011-05-01 20:56) 

末尾ルコ(アルベール)

先だっては素敵なコメントありがとうございました。
ブログも「気持ち」がこもっているものって、素晴らしいですよね。

                         RUKO


by 末尾ルコ(アルベール) (2011-05-01 23:20) 

ちょいのり

リンさん、その経緯はネットじゃ調べきれませんでした^^;
実際に聞かなければ分からないのかもです。
ただ、家財道具がそのまま残されているところからすると、、徐々に移り住んだ、移動したって感じにはみえませんよね。

by ちょいのり (2011-05-02 01:16) 

ちょいのり

まめさん、残っている物を見た感じですと、30年くらいは前な気もします。
建物ってほんと不思議。
掃除・修理をしないでも、そこに人が住まうだけで違うと思います。
家も生き物なんでしょうかね。
by ちょいのり (2011-05-02 01:26) 

ちょいのり

tomomameさん、だいぶ風化をしてはいますが、造り自体は立派だと思いました^^

ここまでかなり歩きましたが、お酒飲みながらだったので、
意外とおなかペコペコでは無かったですよおw

by ちょいのり (2011-05-02 01:29) 

ちょいのり

yoshinorhythmさん、ある程度リサーチしてから行くので、その点は大丈夫かもしれません^^

あと、ボクが早朝にこの手の廃屋・廃墟に行くのは「同じ目的の人となるべく遭遇しないため」とか「こんだけ朝早くならオバケも寝てんだろw」って理由だったりします^^

ヤンキーや犯罪者がたむろってそうなラブホとかの廃墟はたぶん行かないかもですw

怖いのはなんだかんだでやっぱり「人」ですからね。

by ちょいのり (2011-05-02 01:37) 

ちょいのり

たかれろさん、もー、すぐに探そうとするんだからっw
 
 今回は前回の廃病棟ほど、何かを感じるってことはありませんでしたね^^

 うちの父さんに白い女の子の幽霊の話を聞いた後で廃病棟の写真を見返した時は、さすがにゾッとしましたけどね^^;
by ちょいのり (2011-05-02 01:41) 

ちょいのり

ろーるけーきさん、大概、廃墟廃村に出向く時は、べろんべろんに酔っ払ってるので、これまた意外と怖くないんですw
もーーいけいけドンドンですよw

・・・夜は無理かなあ^^;
by ちょいのり (2011-05-02 01:44) 

ちょいのり

サンダーソニアさん、たぶんそれなりの理由があるんじゃないかと想像できますよね。家財道具を置いていかなくてはならなかった理由。

でも意外とサスペンス的理由じゃなくって、
持ち出すのがめんどくさかったからとかそんなオチだったりするんじゃないかとも思ってますw
by ちょいのり (2011-05-02 01:48) 

ちょいのり

kiyoさん、この先は途中で舗装道路は行き止まりだと思います。
・・・ですが、
この茶平から更に南に行った場所にも廃集落・過疎集落が存在していますので
そこへと通ずる昔の生活道路とどこかで接していると思います^^
時間があればまた訪れようと思ってますので、いつかまた秩父編を書きたいですね^^

by ちょいのり (2011-05-02 01:59) 

ちょいのり

末尾ルコ(アルベール)さん、ボクは時にはブログも億劫だなあ~と思うときがあります。
なんでおいらブログ書いてんの?と。

でも書き上げた自分のブログを見返した時が楽しいんだ~^^

ボクは自分で見返したときに、自分が書いたのに「俺・・・よくやったな。よくこんなん書いたな!見てくれよみんな! へへへ~^^」って思えるようなのが書きたいです。

自己満足バンザイ! そしてそれがブログ。



by ちょいのり (2011-05-02 02:11) 

ちょいのり

まさかふじたさんも心霊写真とかさがしてないよね~w

by ちょいのり (2011-05-02 02:12) 

ふぢた

う~~~~ん
写ってるし~

なんでこんなに、物を置いて出てるんでしょうね・・・・
物には念がのこってるんですよね~
どうみても、のっぴきならない事件?
by ふぢた (2011-05-02 02:13) 

ちょいのり

ふぢたさん、事件性は~・・・どうなんだろう? でもやっぱり考えちゃいますよね^^;
家財を置いてまで人が居なくなった根拠とか。
ちょいのり探偵としたら・・・せいぜい病死してしまったからそのまま放置とかを推測したいと思います。

by ちょいのり (2011-05-02 02:19) 

aeon

都会に住む方から見たら 不便で住みにくい土地にしか見えないんですね(^_^;
住んでる人には心休まる場所だったりするんだけどなw
それも色々なのかなぁ~
by aeon (2011-05-02 09:19) 

サンダーソニア

街に住む息子夫婦に老夫婦が引き取られたって
感じでしょうか。
勝手な推測w

by サンダーソニア (2011-05-02 09:58) 

ちょいのり

aeonさん、まあ~色々ですよ。

ただ、ここは病院とかも無いし・・・
癒しだけでは、美味しい空気だけでは・・・とも思ってしまいます^^;
by ちょいのり (2011-05-02 11:59) 

ちょいのり

サンダーソニアさん、うん、さすが探偵ですなw

それが一番しっくり来る理由だと思われ~^^
まあ憶測ですけどね^^

by ちょいのり (2011-05-02 12:02) 

yu-papa

nice!有り難うございました^^
by yu-papa (2011-05-02 23:35) 

吟遊詩人41

回覧板はうちの玄関の前に何日も放置したら...
いつのまにか無くなってました!怖いでしょw
by 吟遊詩人41 (2011-05-04 21:34) 

くま・てーとく

軽妙な文体と、色々考えさせられる写真のコラボが、
何とも不思議なちょいのりわーるど。
今回も、冴えまくってますね^^
人の暮らしの墓標のような写真に、深刻な文章では
たぶんつらくて最後まで読めなかったかも。
貴重な写真をありがとうございます。
by くま・てーとく (2011-05-06 01:23) 

ちょいのり

くま・てーとくさん、やっぱりこの手の廃墟物ってのは、暗くなりがちだと思うのです。
ボクはそういうのは嫌なんですよ~^^
明るく紹介・提示して、考えていただけるところは真面目に自分なりの言葉を入れたい。そんな感じなんです^^

by ちょいのり (2011-05-06 01:44) 

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