第351話 駐輪場横の暗闇 『お兄ちゃんどいて！お部屋決まらない！』廃村さーくるショートショート☆

『ど、どうしよう・・・。いくらサークルでは気心が知れた仲だとはいえ、

”女の子”を二人、自分の部屋にご招待するのは初めてだ』

　－－－数日前

　ドドドドドドド・・・と、毎度同じく廊下を突っ走ってきた夕実ちゃんが、息も絶え絶えに捲くし立てた。

『先輩！先輩！先輩！今年の冬休みの廃村さーくる旅行プランを立てましょうです！

　イセエビにサケにイクラに・・・わきゃーブリもおいしそーですう！』

　・・・はは～ん、さては昨日の夜にやってたテレビの特番を見たな夕実ちゃん。

『その意見に乗った！』

　ええっ!?　いつのまにやらボクの背後にいた首塚さんがビシっと挙手をしながら、ボクを覗うように見ている＾＾；

『ねえねえ＾＾；　ボク達は一応『廃村さーくる』なんだよ？　旅行がメインじゃないのは分かってるよね？』

　と、腰掛けていた椅子をくるりとまわして彼女らに振り返るのだが・・・まったく聞いてない＾＾；

『ここなんてどうでしょう？』

『いや、もうちょっと遠出もいいんじゃないかしら？』

　どこから出したのか、旅行会社のパンフを広げて地べたで検討をしていた・・・。

　・・・こうなっては言うこと聞いてくれなそうだ＾＾；

　仕方が無いので、彼女たちが『ここどう？』という場所と、廃村・廃墟・廃道・遺構が近隣にあるかないかで判断してあげますねと、

　ボクもその旅行プランの輪に入ったのだ。

　－－－それはそれは中々の熱戦、熱戦、大合戦！

　ボクも夕実ちゃんも首塚さんも一歩も引かないガチンコバトル。

　－－－気づけばもう遅い時間でした。

『じゃあ、今日は一旦ストップね。もう遅いし。この続きは月曜日まで持ち越しにしよう』

『ええっ!?ここまで来たのに月曜日まで待てないわよ！おあずけ食らってる犬じゃないんだから！』

『そうですよ先輩！もうこのまま二日も間あけたら生きていけません！』

　そこまで旅行に命掛けてんすか＾＾；

『あ、分かりましたです！明日、先輩のおうちで続きしましょうです！』

　え？・・・ええええっ!?　なんでよ？

『そ、そ、それも悪くは、な、ないわねえ』

　首塚さんまでどうしてよ!?

　－－－－そんな感じで今日を迎えたってことなんですよ＾＾；

　ああ・・・もおー！とは思ったものの、でもドキドキ（笑）

　玄関キレイに～

　キッチンの汚れピカピカに～

　トイレもゴシゴシ。

　床掃除に、えっと・・・洗濯物でパンツぶら下がってるのもまずいかもだし、取り込んでおくか。

　ふいい～・・・。いつもより大掃除だね＾＾；

　毎回来てくれるとボクの部屋って超キレイなんじゃなかろうか＾＾；

　あとは座布団とお茶菓子は何にしようかな？と、考えていたところに『ピンポーン』と、チャイムが。

　・・・・・・あれ？まだまだ約束の時間よりも前だよな？

　勧誘か何かか？と、しばらく出るのに躊躇しているとーーー

『ピンポーン！ピンポーン！ピンポーン！』と実に騒がしい。

　ちょっとうるさいなと、ボクは半分不機嫌そうにドアを開けたんだーーーーー

『えっと・・・どちらさま・・・でしょうか？』

　ドアの前には見知らぬ女の子が。うん、本当に知らない。

　新手の独身者を狙った勧誘か？なんて思いました。

『いえーい♪　お兄ちゃん、おひさー＾＾』

　ボクの目の前の女の子がボクにブイサインを突きつけて、ボクのことをお兄ちゃんと呼ぶ。

　－－－こ、これは独身者を狙った『お兄ちゃん商法』なのか!?

『お兄ちゃん何ぽけーーーっとしてんのよ？　私よ私。琴音☆』

　はあ。琴音ですかそうですか。

　自分の妹の名前までリサーチしてくるなんて、実に手の込んだ商売です・・・ね・・・

　って、ええっ!?　琴音!?

『ちょっと髪の毛イってみたんだけど、どーかなあ～＾＾』

『ど、どうかなあ～って本当に琴音!?　・・・いや、まあ・・・全然知らない人には見えたんだけど・・・』

『ありがとう。褒め言葉として受け取っておくから』

　そういいながらもさっさと靴を脱いで上がろうとする琴音。

『あれ～？　めずらしいじゃん。なんだか部屋がスゴクキレイになってるゥ～。

　はっは～ん。お兄ちゃん、どっちの子を選んだの？』

　ウシシと、口を押さえつつニヤニヤと問いかけてくる琴音。

　はあ？　どっち？　って？

『何ポカンとしてるのよ。夕実っちか、首塚さんって人のどっちかとデキチャッタから、こんなに部屋がキレイなんでしょ～＾＾　なんだかんだでヤルじゃんお兄ちゃん♪』

　はああああああああああっ!?

『ちょちょちょちょちょ！勘違いするなバカ妹。別にどちらとも何にもなってないからっ！

　・・・まあ、確かに今から二人ともくるけどさあ・・・』

『え・・・お兄ちゃん・・・ジゴロ？』

　ジゴロってなんだあああああーーーっ！

　それ死語だよおおおおおお！

　なんでそんな日本で死滅しちゃいそうな言葉知ってる＾＾；

（簡単に説明しますと、ジゴロは、うーん・・・ひも男のパワーアップバージョンってとこかな？　女の人からお金を貰いながら生きてく男だけど、ひも男よりは強気でかっこいいってイメージ？女性を囲って生きてる人）

　－－－それから、どうにかこうにか今日の事情説明をして、やっと納得してもらうことに＾＾；

『でも今日はなんでうちに来たんだ琴音？』

『んん？　えっとねー、来年の部屋探し＾＾　ほぼ本決まりで東京の大学に行くことになったから、一人暮らし用にどこがいいのかリサーチしにきたの。

　で、やっぱりこういう時は、東京に住んでる人に色々聞いたほうがいいんんじゃないかってね＾＾　それで☆』

　・・・ここ埼玉なんだけど。って、

『もしかして本当にオレと同じ大学ぅっ!?』

『そうだよ？　夕実っちと同じとこ☆』

　なぜオレじゃなくって夕実ちゃんなんだ＾＾；

　まあ・・・駄目とかそんなこと言う権利はボクには無いし、仕方が無い。

　そんなこんなで夕実ちゃんちが来るまで暫くは、ここいらへんの物件の相場とか、スーパーが近いからとか色々レクチャーしていました。・・・とりあえず夕実ちゃんち用に用意したお茶菓子バリバリ食うな愚妹！

『ピンポーン』

　それから数十分ほどでまたもやチャイムがなる。

　おそらく約束の時間的に夕実＆首塚チームだ。

　するとーーー

『はーーい☆』と、なぜか琴音が出迎えにドアへ。

　ちょ!?　なんかお前が出ると嫌なフラグしか立たないからっ！

　－－－－案の定、それから夕実ちゃんと首塚さんにコレは琴音だ、

別に彼女じゃないし、と数分を説明会に時間を掛けることになるのでした＾＾；

　一番びっくらしたのは、琴音が『私の彼に何かご用？』とかよけーなことを言ったのだよ＾＾；　おかげですげー手間取ったじゃないかあ＾＾；

　まあ、そうは言っても、一旦正体が分かればそこは和やか。

　彼女達はいつの間にか、琴音の部屋探しに付き合ってくれたのである＾＾

『ここなんていいんじゃないかなあ～。角部屋だし＾＾』

『ああーんでもでもでもォ～、こっちもいいよ～琴音っち。私んちに近いしｗ』

『さすがお姉さま達ですね☆　あっ、こっちなんてどうでしょうか。築2年でキレイそおです＾＾』

　うーん・・・なんか皆理想ばかりで、現実を分かっていないな。

　お兄さんがもう少し、周りの生活環境とのバランスで提言して差し上げましょう。

『ここなんていいんじゃないかなあ～。築２０年と建物は古いけれど、二階の角だし、前住まいの人のエアコンが残ってると書いてある。

　風呂・トイレ別だし、ここいらへんは商店街も近いし便利なんじゃないかな？』

『『『ええ～、なんか建物汚ったなーい』』』

　確かに賃貸の雑誌に写る物件の外観は少し小汚いが、値段・周りの環境・交通の利便性を考えると中々の物件だと思ったのだが、女の子連中の大ブーイングだ＾＾；

　－－－仕舞いには

『うっさいなあー！お兄ちゃんどっか行ってよ！』といわれる始末＾＾；

　ああそうですか＾＾；

　じゃあーいいです。勝手に小奇麗でお高くて駅から遠いとこでも選んでくださいな。

『じゃあ～、散歩でもしてくるからゆっくり考えてな＾＾；』と、声を掛けるが誰一人お返事くれない・・・

　かくして、ボクはいつのまにか旅行プランが琴音の部屋探し会議となってしまった自分の部屋を出ることになったのです。

　－－－えっとどこ行こう＾＾；

　とりあえず駅前あたりまでボーっと歩いて見ましょうかね。

　暫く歩くと、ふとボクは足を止めた。

　そういえば、昔から気になってたとこがあったから行ってみよう。

　その気になってたというところは駐輪場。

　正確に言いますと『駐輪場の横の建物』である。

　ボクはこの駐輪場を利用していないが、駅への通り道でいつも気になっていた。

　・・・随分とボロボロな母屋？だ。

　せっかくなので、駐輪場に入って近づいてみた。

　窓ガラスも割れて、完全に廃屋満タン状態。

　えっと中は？と、申し訳ない感じでおそるおそる覗いてみる。

　どお考えても使われているようには思えない。完全な廃屋だ。

　試しにこの建物の周りをまわってみる。

　古臭い看板がぺたぺたと掲げてある。

　新堀ギターとか金鳥の蚊取り線香とかあったらモアベターだったのだがさすがにそれは無かった。

　まあでも古い感じはすこぶるしますね。

　・・・じゃあ、ここは完全に見放された町の中の廃墟なのかと、もう少しグルリと周ってみた。

　あれれ？　印刷会社でした。

　しかも２０１１年賀状受け付けていますとポスターが貼ってある。

　なるほど。ただたんに、古い母屋は放置プレーだったということですね。

　まあ色々事情はあるのでしょう＾＾

　その足で、更に駅前まで歩いてみた。

　なにやらとても賑やかだ。ん？『福祉まつり・草加』とのぼりが立っている。

　えっと・・・身体障害者福祉会と、今では少し差別用語？チックな感じの本部のテントを中心に、駅前に色々と出店が出ていた。

　綿菓子・焼きそば・うどんに焼き鳥に子供のおもちゃなど。

　中には車椅子体験なるものもあった。

　こういうのはいいですね。そして嬉しいのが、皆通り過ぎずに大勢の人で賑わっている。

　いくらかこういうイベントで身体の不自由な方の何かを知るのもいいのかもしれない（まあ、ほとんどが食べ物目当てなんだろうが、多少なりとも駅前をぐるぐる回ってる車椅子の人達を見て、何かを思ってくれればいいだろう）

　－－－あ、そうだ。

　みんなに焼きそばと、焼き鳥と、あと餌で缶チューハイも買って行ってあげよう＾＾

　そうすれば仲間に入れてもらえるかなｗ

　そう思い、ボクはこれらを手土産に短い短い散歩を終えて、皆のところに戻ったのでした-ーー

※ここまで長々と読んでいただきありがとうございました＾＾

　おそらく長々と描けるのも書けるのもこれからは減ってしまうかもしれませんが、

　またいずれ廃村さーくるでお会いいたしましょう＾＾

　おまけの埼玉県・草加市のマンホールです☆

　ま、汚水なんですけどねｗ

 

　駅前で購入した『餌』は大成功☆

　なんかそのうち酔いで皆どうでもよくなって大宴会です。

　ま、結局は『何も決まらなかった』のです＾＾；

　そんな晩秋の夜長でした。めでたしめでたし？

　ではではまた今度＾＾

 

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コメント 28

>廃屋満タン状態

これ～楽しい言葉～レギュラー満タン
灯油満タン～♪～


by みうさぎ (2011-11-14 01:28) 

長々描けるのも・・・
という事は、再就職が決まったという事でしょうか?＾＾
by 銀狼 (2011-11-14 02:09) 

家の間取りを見るのはすきだな〜
賃貸でもマンションでも　眺めてるだけでワクワク♪
そして　現実に戻った時…　　ねぇ…な感じ
by ねこじたん (2011-11-14 06:37) 

有給がばっちりあるといいわねぇ。
by サンダーソニア (2011-11-14 08:07) 

おおっ！兄にも分からないぐらい変身できた妹がすごい！
そして女子同士で盛り上がる姿。。。
かわいい！
そうそう。。。女子の会話に現実を持ち込んじゃダメ！
どうせ、現実を踏まえた選択はするのだから、
時間のあるうちは夢を見る生き物なのよ～！^m^
by リン (2011-11-14 08:25) 

「新堀ギター」か…どっかで見たな(-_-)ﾆﾔﾘ
廃墟だったかどうかは微妙だけど…＾＾；
by 下総弾正くま (2011-11-14 09:51) 

草加にこんな廃墟が(・.・;)

東京近郊のこの手のやつはヤ〇ザ屋さんがからんでたりするから要注意ですよ(-_-)

サイドバーのイラストも何気に変わりましたね～♪

by 吟遊詩人４１ (2011-11-14 13:39) 

新堀ギターの看板、未だにありますね！
金鳥は減ったけど。。。
うーん、魚が食いたい！
沼津はいつもだから由比でも行ってみようかな？
ホントは福井方面に行きたいな~
by レイリー (2011-11-14 15:42) 

どのへんでしょう（＾＾）
その昔住んでいた（－－；）
by taiyou (2011-11-14 15:48) 

うおう、草加！懐かしいー！( ；´∀｀)いい所ですよね。（=ﾟωﾟ）ﾉ色々懐かしい。
by 大林　森 (2011-11-14 17:08) 

みうさぎさん、まさかそこがツボだとはｗ

いや、嬉しいですよ～＾＾
by ちょいのり (2011-11-14 17:33) 

銀狼さん、まだまだなんですよ～＾＾；

今日はそれについて触れようかと思ってます＾＾

by ちょいのり (2011-11-14 17:34) 

ねこじたんさん、選んでる時は楽しいんだよねえ～＾＾

絶対買えないのにマンションとかの間取り見てるだけでも楽しいものｗ

by ちょいのり (2011-11-14 17:41) 

サンダーソニアさん、たぶん・・・無いかなあ・・・
by ちょいのり (2011-11-14 17:42) 

リンさん、なんだかんだでそれぞれ1個づつ年が離れてる設定なので、三姉妹みたいな感じですねｗ

なんかこれ書いてるとだんだん女性の扱い方がわかってきたような・・・・と、ちょっと自惚れてみましたｗ

by ちょいのり (2011-11-14 17:44) 

下総弾正くまさん、まだまだありますよね＾＾

大概、ブロック塀かコールタールの壁だったりするんだよなあ～ｗ

by ちょいのり (2011-11-14 17:45) 

吟遊詩人４１さん、いやああー！こわいい＾＾；
　なるべく近づかないようにします＾＾；

サイドバーは流石に初期の絵とだいぶ変わってきたので変更してみました＾＾
by ちょいのり (2011-11-14 17:47) 

レイリーさん、確かに金長はだいぶへったかもですよね＾＾

魚？
福井かあ・・・。車じゃハードですよねえ＾＾；
お金もかかるだろうし＾＾；
由比なら伊豆の先っちょ行くのとかわら無そうですし、いいかも＾＾
by ちょいのり (2011-11-14 17:50) 

taiyouさん、場所的には丸井のおもいっきり裏です＾＾

by ちょいのり (2011-11-14 17:51) 

大林　森さん、おおう!?　昔いらっしゃったことがあるのかなあ～＾＾
by ちょいのり (2011-11-14 17:52) 

廃屋の写真って、みょうに怖い…
by めいちゃん (2011-11-14 18:22) 

草加と云えば煎餅で有名な所ですね、就職決待ったんですか？
by 馬爺 (2011-11-14 20:54) 

女子の会話に入ろうなんて、まだまだ怖いもの知らずですね(>_<)
私なんて、最初から女子の会話には巻き込まれないようにしています！
と言うか、会話の流れについていけないだけなんですけどね・・・^^;
by ニッキー (2011-11-14 22:22) 

出だしを見て，ついに，〇ロ作家誕生か？
って思っちゃいましたが，安心しました(笑)

力作が続いていますねぇ
by 唐津っ子 (2011-11-14 22:48) 

めいちゃんさん、けっこー廃墟画像が苦手な人は多いですね～やっぱり＾＾；

廃村さーくる当初は、結構アクセスガクンと下がったこともありましたしｗ
今は多いけど＾＾
by ちょいのり (2011-11-14 22:52) 

馬爺さん、そうなんですが、草加に19年も住んでおきながら、一度も地元でせんべい買ったことありませんｗ

就職の話はこのあとすぐ！です＾＾
by ちょいのり (2011-11-14 22:55) 

ニッキーさん、酔っ払ってればかろうじて突入できそうなんですが・・・

たぶん作中と同じように、シッシ！って言われちゃいそうですね＾＾；

by ちょいのり (2011-11-14 22:57) 

唐津っ子さん、さすがにメインブログじゃ書けませんよお～（じゃあサブブログで書くのかと言われたら書きませんがｗ）

今回、長めの記事を多く書くのは理由があります。
しばらく書けなくなりそうだからってのが理由です。

by ちょいのり (2011-11-14 23:01)