第382話『あわわ・・・わっきゃーってこだましてくるですっ!』函南こだま石&伊東八幡野廃ループ橋編☆ [廃村さーくる]
---少し日を遡ったある日のこと・・・
『ドンッ!』
あいてててて・・・。いつものように廃村さーくるの部室を目指して夕実ちゃんと喋りながら向っていたのだが、廊下の曲がり角で誰かにぶつかってしまった。
会話をしながらとは前方不注意にもほどがあるね^^;
『わきゃー!? だ、大丈夫ですか?先輩! そ、そちらの人も』
『ダ、ダイジョウビデス・・・こちらこそゴメンナサイ』
目の前に尻餅をついている女の子が謝る。だが、ボクの方が過失相殺的にもバツが悪い^^;
あわてて『大丈夫ですか?』と、手を差し出して引っ張り上げたのです。
『本当にダイジョウビデスカラ』
まるで向こうがやらかしてしまったかのようにペコペコとお辞儀をする彼女。
散乱したビデオや図書をあわてて拾い集めて、もう一度『ダイジョウビデスカラ』とお辞儀をして、さっさと立ち去ってしまった・・・
『あの子・・・外国人さんですかね先輩? 留学生?』
『ん?まあ~留学生かな^^ 彼女は首塚さんが一応所属している、心霊研究会の「副部長」だったりするんだなあコレが』
『えええええっ!? ふ・く・ぶ・ちょ・ううううううううううううう??? わきゃー!びっくりですよお!
だって本当に心霊研究会があるだなんて』
そっちか^^;
確かに部長である首塚さんが、何故かほとんど廃村さーくるに入り浸ってるし、夕実ちゃんも彼女のサークルらしい活動なんて見た事無いだろうしね^^;
『うん、まあ~・・・えっと、あれでも一応、他大学からも知られているサークルの部長だったりするんだよ?
巫女さんでもあるし、少しばかりかイタコさんみたいに「口寄せ」も出来ちゃったりするらしいし』
『ほえほえほえーーーですう!そんな漫画みたいなことできるんですか!』
なぜか夕実ちゃんの目が興味の塊だ。このあと部室であれやってですうーとか、これやってみてですうーなんて言い出しそうだ^^;
『ちょっと地味な感じもしますが、でもあの副部長さんって、シスターさんっぽい格好してましたですが・・・まさかやっぱり能力者とかなんですかわきゃー☆』
『んーーどうなんだろ? 実家が教会とかは聞いた事無いけど、かなりのオカルトマニアだよ?
それに地味はちょっと失礼だよ^^; ああ見えても、部長不在のサークルは彼女がほとんどまとめてるんだしね』
・・・って、夕実ちゃんいねーし!
ふと見回すと廊下の向こうに『待ってろです首塚先輩わきゃー☆』と突っ走ってる彼女の姿が^^;
いつもなら首塚さんが部室にいることにいや~な顔するのに現金なことだ^^;
----それから数日が過ぎ、ボクと夕実ちゃんは正月に一緒に里帰りをすることにしたんだーーー
---2013年 1月2日
静岡県は伊豆稲取で、ボクは正月を過ごしていた。
大晦日に同郷の夕実ちゃんと共にやってきたのだが、帰ってくるなり本家の新年行事の手伝いに借り出されて、休みとは程遠い生活をしていた。いや、されていた^^;
ボクの実家は夕実ちゃんと同じ町ではあるけれども、山側。
夕実ちゃんは港側の家だったりする。
『初詣でも一緒に行きましょうね^^』って言われていたのだが、やはり彼女も田舎の子。
家族の手伝いに借り出されているのだろう。元旦を過ぎても連絡は無かった。
『はは~ん。どったのお兄ちゃ~ん。さ、て、は、夕実っちからのお誘いが無くってショボーンしてるのかなあw』
うっかり携帯をボーっと見つめているところに、妹の琴音がひょっこりと顔を出し茶々を入れる。
『そ、そういうんじゃないよっ!ただ忙しいんだろうなあ~って思ってただけだってば』
何をあわててるんだかボクは^^;
冷やかされてムキになるなんて中学生かオイラは^^;
『じゃあしょうがない。オホン!えっとー私も暇だしドライブにでも行きますかオニイサマw』
『えって!?マジ?・・・っつーか、おまえ車の免許は・・・』
『今年の夏にとっちゃったよお。裏山のミカン畑でオフロードの練習したから腕はぴか一っす☆
さ~初運転で峠せめるぞー! 待ってろ伊豆スカイライン! ターンパイク!!!』
初運転って今年年頭一発目ってことだよね?
初めて公道にでて運転するって意味じゃないよね? ね?ね?ねえええええ???
『じゃ、親戚のおねーちゃんの車借りて、そのあと夕実っちサラってレッツゴー!』
---ということで、ボク達三人のおっかなびっくりドライブが始まったのである・・・
『わきゃー! あけましておめでとうございますです先輩、琴音っち^^』
稲取駅で夕実ちゃんを乗せ、ボク達は国道135号線を北上する。
女の子が二人になるととても車内が賑やかだ。いやウルサイ^^;
『そういえば~、首塚さんって正月どうしてるのお兄ちゃん?』
『実家の青森に帰省してるよ』
『すっごく、すごーーーーーーく恨めしい顔してましたですけどね。わきゃー☆』
『てっきり、お兄ちゃん達に付いてくるのかと思ってたんだけどな~。なんとなくw』
まあ・・・琴音が言う通りだ。
冬休みに入る直前、首塚さんはまるで血の涙でも流さんばかりか、何かを五寸釘でうっちゃいそうなくらいの勢いで、
ボクと夕実ちゃんの帰省をうらやんでたしねえ^^;
『なんでも、正月はご実家のシキタリで絶対帰らなくちゃいけないみたいなんだよ。まあ・・・しょうがないよね。
それにお正月くらいは家族と過ごした方がいいと思うし、今度実家に帰ることがあったら誘ってみるよ』
『ぶーぶー! ちょー反対ですう☆』
異議を唱える夕実ちゃんの顔は、笑顔の割には少し怖くも感じた^^;
『ちょっとさ、本家の集まりに参加できなかった親戚の三島のおばさんところに届け物しないといけないから、そのあとお兄ちゃんの好きなところにいくらでも連れてってあげるよ』
あいよ。そうか、三島か。
だったらアソコに行って、それからそれからアソコに・・・
彼女たちの会話には入らず、ボクは色々とどこに行こうかと思案するのであった。
『リンダ・・・、こちら応答願います。どうぞ』
『ハイ、部長サン。今、ターゲットを捕捉シマシタデスYO。引き続き尾行をツヅケマス』
『見失ったりしないでよね? 私がいない間に甘~い雰囲気にならないようにしっかり監視!OK?』
『ムコウハ3人デスが、3人で甘いフンイキダナンテ日本人も性がミダレテマス。これがジャパニーズ的禁断の愛ってヤツデショウカ?』
『・・・とにかく続けて。あとばれない様に』
『心配しないでクダサーイ。彼にぶつかった時に発信機を服にトリツケテオキマシタ♪ どこにいこうがニゲラレマセーン!』
『あらすごいじゃない! ・・・って、その発信機つけたの何時の話よ・・・』
『オカシイデース!レーダーの反応ダト、彼はイマダニ東京にイマース。
マ、マサカ・・・これがジャパニーズ的幽体離脱ッ!!!
ジャパニーズ恐るべし!』
『・・・健闘を祈ります^^;』
『実はね~! 私行ってみたいところあるんだ~^^』
用事ごとを済ませた後、ボクは頭の中に描いていた行き先を告げようかと思っていたのだが、先に琴音からの提案を受けることになった。
不本意だが運転手様だ。言い分は飲まざるを得ない・・・。
『それはね~伊豆の七不思議のひとつ『函南町のこだま石』なんだ^^ 私、そこだけ行って無いの』
『こだま石? わきゃーなにそれなにそれ琴音っち^^』
伊豆の七不思議ってのは、伊豆に伝わる七つの物語や伝承に基づいた場所や物なんだけど、
まさかネットおたくの琴音がこんなものに興味をしめしていただなんて驚きだ^^;
『あれ~? なにその顔。何か私が七不思議に興味があるのが変みたいっすねw
だって言ったよね? この前。
来年、私ってば廃村さーくるに入るからってさ』
・・・うう、本気だったのか^^;
『言っとくけどね? 私が入ったら私が廃村さーくるのエースよw
夕実っちには悪いけど実力至上主義です!』
『わきゃー! 琴音姉御と呼ばせていただきますですう^^』
これはなんとも頼もしい・・・か?
そもそも、こだま石は・・・どちらかというと・・・廃墟・廃村・遺構でもなんでもない気が・・・^^;
まあでも、ボクとしても非常に興味がある。せっかくの車移動だ。存分に甘えてみようかと思ったのです。
静岡県は伊豆地方の函南町。ここの丹那盆地を通過する県道11号線(通称、熱函道路)。
丹那盆地に差し掛かったところで、11号線を潜り抜けて山の中腹へと抜ける側道へと入っていった。
妹の情報だと、ここまでしかネットの情報では詳しいいことがのっていなかったと言う。
道なりに来ては見たのだが、どうもそれらしいものが見当たらなく、近隣をしばらく行ったり来たりしていた。
監視要員のボクと夕実ちゃんが窓越しに探す。ひたすら目を凝らして。
『ちょちょちょちょ!あれじゃないですか!不思議発見です☆』
---しばらくして、夕実ちゃんが竹やぶの向こうに何かを発見した。
夕実ちゃんが発見してから少し通り過ぎてしまったので、車を止めて、そこまで徒歩で向うことに。
そこに見えるのは山の中の幅員の狭い道路と何かの倉庫。
『えっと、夕実ちゃん。そのこだま石があったのってどこいらへん?』
『その倉庫の裏側の竹やぶに見えましたです!』
ボク達は、倉庫の横の畑の脇から竹やぶへと向った。
---すると
『うわっ!竹やぶに不似合いなくらいでっかい岩があるよ、お兄ちゃん!』
確かに。まるで異物だ。これがこだま石なのか?
ボク達は恐る恐る近づいてみることにした。
『わきゃー☆ こだま石って看板ありますです!』
『なんか、ちょー手書きなんですがー』
よくよく見ると函南町文化財って書いてある。
・・・が、ボクも何度かこの町の文化財を調べたこともあるのだが、パンフにはおろか、それらしい資料で見たことなかったんだが・・・^^;
『じゃ~せっかくだし、私がこの石のなんたるかを説明しちゃおっかなー』
少しふんぞり返りつつ、指をくるくるさせつつ、雄弁に琴音がこの石の謂れを続ける
『ここの平井地区ってところに、昔『おらく』さんって言うお母さんと『与一』さんって言う息子さんが住んでてね、
お父さんが戦で行方不明になってちょー貧乏生活だったらしいの。
それでね、出稼ぎに山を越えた熱海まで行商に行って生計を立ててたんだけどォ、
その道すがら、よくこの岩のところで休息をとってたらしいの。
で、ある日お母さんが・・ううう・・・これ以上はとても・・・言えません。悲しすぎて!
その悲しみを声のあらん限りに与一さんがぶつけたのがこの岩ってお話です。チャンチャン^^』
『それはお前端折りすぎだろ^^;』
間違っちゃいないが、与一が母親の名前を読んでこだましたってのがこの岩のおおまかないわれとされている。
『じゃ、試しに叫んでみましょうよー!』
ワクワク顔で夕実ちゃんが言うのだが、そんなのは大概『迷信』だったりする。
実際に叫ぼうがたぶん返って来ないだろう。
『行きますよ~。せーの!わっきゃーーーーー!!!』
『わっきゃーーーーー・・・わきゃーーーー・・・わっきゃーーーーー・・・』
『・・・』
『『・・・』』
『『えええええっ!? 本当にこだまするのおおおおお!!!???』』
びっくりした。こだま石は伊達じゃない!
地形的に反響するのだろうか?
どう考えてもただの山道なんだけどな・・・
(本当の話です^^ 実際に何度も叫んでみましたよ^^)
『いや~これはびっくりだ。まさか本当にこだまするだなんて』
『ふっふっふ。なんだかんだで来てみてよかったでしょ?お兄ちゃん』
ああ、実際に行ってみると色々と知ることがあるもんなんだな。
これは廃墟・廃村にも通ずることが多い。改めて百聞は一見にしかずを思い知らされた。
さて、いつまでも面白がって『わっきゃーーーーー!!!』を繰り返してる夕実ちゃんを引きずりつつもボク達は次の場所に向うことにした。
その場所はーーー
『伊東市の八幡野の未成ループ橋に行ってみたいと思ってたんだけど~・・・あれれ?もしかしてお兄ちゃんと意見かぶっちゃった?』
くそ・・・考えることは一緒か。廃ホテルも考えていたのだが、昔は親父に連れられてしょっちゅう近くを通っていたのに存在を知らなかった未成ループ橋も興味を持っていたところだった。
『サスガ、妹様です。お見通しでございますな。さささ、さっさと行こうではありませんか^^』
ボク達は伊豆は伊東市の未成ループ橋を目指すことにした。
伊豆の海岸線を走る主要道路135号線。伊豆高原駅から少し過ぎたあたり、そして線路を越えないあたりに山へと向う道がある。
ボク達はそこへと車を走らせた。
『うーん・・・うーん・・・です』
『どうしたの夕実ちゃん?』
『えっとですね? なんかさっきから同じ白い車が後ろを走ってるような気がするんですよおー』
そういうことって結構あるよね。
偶然だと思ってたら『えっ!? こんなとこまで道が一緒???』ということ。
でも結局は別に尾行けられてるとかそういうんじゃないことってさ^^
『たまたまでしょ^^ 車のナンバーが地方だし、135号線も混んでるし、地元ナンバーの車についていけば抜け道にありつけるとかそういうんじゃないの?』
ボクの言葉にそれでもうーん・・・うーん・・・と唸る夕実ちゃん。
『さあ着いたよ。じゃ、降りて向おうか^^』
ボクは夕実ちゃんに声を掛け、伊東の山道に降り立った。
目の前に広がるはーーーー
赤い色の陸橋。
ここが今回のボク達の調べたい場所だ。
『何かパッと見、今でも普通に使えそうな陸橋じゃない?』
ま、それはココから見える範囲だけなんだけどね。
狭い道路をいくらか下っていくと、山側に小屋?らしきものを見つける。
『じゃ、ここから入るよ』
『えっ!?マジ?』
まるで汚らしいものでも見るように疑う琴音。
『ココから先に色々待ってるんだから』
ーーー後半に続く^^
ちょいのりさん、
うおー、一番乗りだ。
今年初の廃村サークル。
ばんざーい。
ばんざーい。
by kiyo (2012-01-09 19:16)
熱函道路はこの前通ったけど、それらしきものは見当たらなかったなぁ…もうちょっと宣伝しときゃいいのに^^;
怪しい少年少女博物館は元ペンギン博物館…家族旅行で行ったなぁ…(=_=)
by 下総弾正くま (2012-01-09 23:16)
いつもストーリーが面白くて楽しみながら見て居ります、
現実と創作の世界を行ったり来たりしてなんだかややこしいですが実際に有る所なんかもおりまぜているから面白いのですね。
by 馬爺 (2012-01-09 23:22)
おいら 運転はじめに 一人で行くと言ったら
運転慣れした妹を連れて行けと ハハに言われました
しかし なんかあったら二人居なくなるよと言ったら
一人でどうぞと(笑
by ねこじたん (2012-01-09 23:36)
ストーリーは、いつも通りなまら面白いのですが、
「逃しませんよ・・・」が怖いです~;^_^A
by 銀狼 (2012-01-10 01:22)
また謎の人物出現?!
三角関係が四角関係に・・・
ならないよね?!
by リン (2012-01-10 06:09)
おはようございますo(^▽^)o
素晴らしい文章といい、挿絵といい。
この才能をもっと仕事に役立てられないものかしら…ライターにいいのにね。
by popo (2012-01-10 07:49)
久し振りに本領発揮ですね~
ストーリーも最高!!
面白い石があるもんですね。
しかも文化財なのに手書き (^^;
未完成ループ橋、楽しみですが怪しい人影が。。。
by レイリー (2012-01-10 09:01)
石がこだまするとは
不思議ですねっ
by みうさぎ (2012-01-10 10:06)
見たところ音が反響しそうな形態でないのに、不思議~
あ、「一文は一見にしかず」ではなく「百聞は一見にしかず」では…
by くま・てーとく (2012-01-10 10:13)
楽しそうだ・・ストーリーを考えているちょいのりさんがww
by サンダーソニア (2012-01-10 10:22)
あ、一文じゃ無いねw
さすがに修正しておきます^^;
by ちょいのり (2012-01-10 10:27)
ストーリーは、書きながら考えてたりしますよ~^^
だから伏線どうのこうのとか、複雑なお話は書けないのですよ^^;
でもやっぱり楽しいねえ^^
by ちょいのり (2012-01-10 10:29)
誤字直されたあとやった~w
巨石という意味では、実家から自転車で1時間くらいの
ところにありましたっけ。
中学のころに友達と探索にいきましたねぇ・・・
懐かしい
by まめ (2012-01-10 12:27)
こだま石!ちょ、ちょっとホラーにも出てきそうですね。(>_<)廃村サークル見て思うのは「夜は絶対無理ー!!(((((>_<;)))))」こわいこわいー!
by 大林 森 (2012-01-10 15:31)
こだま石なんて 面白い文化財があるんだね~
本当にこだまするなんて・・・
廃村サークルの続きが楽しみだぁ~(^^♪
by miwa (2012-01-10 17:46)
身近なところにもいろいろとあるものですね.
今から次に・・・
by 唐津っ子 (2012-01-10 22:16)