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第391話『首塚さんの言いたかったこと』筑西市 廃ストリップ劇場跡編☆② [廃村さーくる]

『わきゃー・・・真っ黒ですぅ・・・』

 ボクより少し間を置いて入って来た夕実ちゃんが、ストリップ劇場跡の室内を見上げながら呟いた。

 その表情は感動ではなく、寂しげな表情に見えた。

 ・・・だからボクはここに夕実ちゃんを連れて来たく無かったんだ。

 その理由も分かっていたから。

『スガワラさん!ここはノーマルな廃墟じゃアリマセンデスねえ^^;』

 ・・・うん。リンダの感じる通りかもな。

 ここはボク達が今まで訪れた廃墟・廃村とはかなり雰囲気が違う。

『ここは・・・不審火で燃えてしまった廃墟なんだ』

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『不審火?』

 足元に転がっている柱か何かだろうか。首塚さんはボクを見ずにしゃがみ込みながら指先でその焼け焦げた木片を指でなぞりながら問う。

『ボヤだったとも言われてるんだけどね。原因は調べきれ無かったよ』

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『これがボヤねえ~・・・』

 親指と人差し指で煤を軽くコネ、パンパンと払って煤をふーふーと飛ばしながら再び周囲を見渡す首塚さん。

『どうカンガエテモ、小火って感じシマセーンですよ^^; コンクリートや鉄製以外のところはほぼ焼け爛れてるじゃナイデスカ!』

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『だよね^^; ・・・ここは1995年頃に不審火で閉鎖。結局新たに再建されることもなくそのまま今の廃墟に至ったということらしいよ?

 ・・・まあ、小火が無かったとしても、今の不況下やその他の風俗、性関連メディアに淘汰される一方のストリップ劇場だし、

 いずれはなくなっていたのかもしれないけどさ』

 こう皆に説明するのだが、うんうんと頷くだけで誰も声に出して返事をくれなかった。

 ーーー皆、複雑そうな顔で周りをただただ見回している。

『じゃあ・・・とりあえず色々見てみようか』

『『・・・うん』』

 力の無い返事の中に一人の声が無い。

 それは夕実ちゃんでした。

『すいません私・・・ちょっとここ嫌です。ゴメンナサイです。外に・・・いますね』

 いつの間にか室内に背を向けてうつむき加減に話す夕実ちゃんがそこに。

『どうしたの夕実ちゃん?気分が良く無いの?』と、首塚さんが夕実ちゃんの肩にやさしく手をかける。

『そう・・・。無理はしない方がいいかもね。じゃ、ちゃちゃーと行ってくるから夕実ちゃんは外で待ってて^^ 』

 首塚さんの言葉に、うんうんと頷き入り口から出て行く。

 最後に入り口付近から力ない感じで

『わきゃー。皆さん頑張ってください』と手を振った。

『じゃあ行こうか。足場は炭化した木や風化で著しく悪いから気をつけて。そして無理だと思ったらそれ以上行かないように』

 ---ボク達3人は炭でただれた廃墟を進むことにした。

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『夕実ちゃん・・・なんであんなに元気なくなっちゃったんだろう。

 あ、別に菅原君に聞いてるわけじゃないからね。答えなくていいよ』

 首塚さんは、右足で何度も何度も足場を確認しながら地面に向って呟いた。

 ・・・その理由は知っている。でもボクから首塚さんに教えることは出来ないかもだ。

 ボクはただ、あはは^^;と小さく苦笑いだけして返すのでした。

 首塚さんもまた、何事も無かったかのように足場探しをしていた。

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『小さなルームがアリマスね』

 ステージ横には踊り子さんの控え室かなんかだろうか? 洗面所やトイレの類が残る場所もあった。

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 これは、ここでお客さんが飲んだものかな?

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 燃えてしまった廃墟だからだろうか。残っているものはあまりにも少ない。

『私さあ、火事の現場って間近に始めて見たんだ。正直ね、ショック。

 だから夕実ちゃんが気分悪くなっちゃうのも分かるんだよね』

 ・・・ボクはこれが・・・二度目。『あの日』以来だ。

 全てを奪う最悪の事象『火災』

 人も物も全て奪ってしまう。そう、思い出すら・・・。

 ---意外と狭い空間であるにもかかわらず、行く手を焼け焦げてもろくなった足場が時間を奪う。

 それでも一通り一階は見て周れた。

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『ここに階段があるってことは・・・二階もあるのね。・・・行くの?』

 懐疑的な言葉が首塚さんから返って来る。

『うん・・・。行こうかと思ってる』

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 首塚さんとリンダは何も言わずに付いてきてくれた。

 建物で一番頑丈な部類の階段とはいえ、踏み抜けばまっさかさまだ。慎重に上っていく。

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 するとドアが1つだけの踊り場に着いた。

 夜に来ていたら絶対に入りたくない雰囲気をかもしだしている。

『ゴーストがいる感じはまるでナイデスね部長』

『あら?リンダも思った?私もよ^^』

 いや、あっても困るんですけど^^;

 ---恐る恐るお邪魔することにした。

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 そこにはゴミと瓦礫が散乱していた。

 特に何かを感じる部屋でもない。一応一階のステージを見下ろせるスペースがあったので、おそらく舞台裏の照明さんなどの控え室か、事務所として使われていたのかもしれない。

『カレンダー発見シマシタ部長!』

『うむ、ご苦労☆』

 リンダが足元のカレンダーをマジマジと見つめていた。

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『1994年のカレンダーか。これがあるってことは少なくとも1994年までは確実に営業してたのかも。

 警察が先か小火が先かと、何かと色々あった劇場らしいけどね^^;』

『それはドーユー意味デスカ?』

『なんでもここで行われていたショー自体に問題があったらしいよ?

 警察に再三忠告を受けてたようだし』

 詳しくはリンダに言わないことにした。ただ、過激なショーだったなどと言われているようです。

 人が来るにはあまりにも不便な立地。ある程度客を呼び寄せるには何か違ったことをせざるおえなかったと言ったところだろう。

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 階段の上にある壊れた蜂の巣の下を潜り、ボク達は劇場裏の小屋らしき場所に行くことにした。

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 リンダがガラスの無いガランとした窓から発見してくれたのだ。

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『ここは・・・ちょっと行くのキツイよ菅原君^^; 瓦礫と木々で前に進めなそうよ?』

『大丈夫デース部長。この更に裏手に畑がアリマシタです。そこの縁を行けば余裕のよっちゃんいかデース☆』

 リンダ・・・どこでそんな日本語覚えて来るんだよ^^;

 まあでもおかげですんなり小屋らしき場所に行ける事になった(実際は、ここで足場を踏み抜いて瓦礫にずっぽし下半身を埋まれてました^^;正直危なかったです^^;)

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 小屋みたいなところには、3部屋くらいに区切られたスペースが存在していた。

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『ストリップ女優さんの宣伝用のちらしかしらね?』

『そうだろうね^^』

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『コレハ・・・ナンデスカ? エロティック関係で使用スルモノデスカ?』

 いや・・・えっちなことでは使わないと思います^^;

 でもなんだろうこれ?七輪か何かだろうか?

『こっちにもポスターあるわよ』

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『自縛のクイーン???』

 首塚さんはおもいっきり首をかしげ、一生懸命に自縛について悩んでいるようだった。

『これはアレじゃないでショウカ!ジャパニーズ人体アヤトリです☆ こう縛ってこれをこうこう・・・モガモガ』

 身体をくねらせて真剣にゼスチャーしてみせるものだから、思わずリンダのお口を押さえてしまいましたよ^^;

 そういうことは別に説明しなくていいよリンダ^^;

 ---ボク達は更に次の部屋を目指した。

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『なんかさっきの部屋より色々あるね』

 お風呂や洗面所があるということは、従業員か踊り子さんの待機所かなんかだったんだろうか?

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 暫く見て周ったが、結局答えの出そうな物は見当たらなかった。

 ---ボク達は一通り見終えたので夕実ちゃんの元に戻ることにした。

『・・・どうでしたかぁ?』

 ボク達が声を掛ける前に先に、夕実ちゃんが遠目から語りかけてきた。

 近づきながら首塚さんは『何も無いね^^;』と、ハア・・・と首をかしげ両腕を広げるゼスチャーを見せた。

『そう。何も残らないんですよ。火事って・・・。残るのは燃えカスとツライ記憶だけ・・・です』

『そ、そうよね^^; アハハ・・・^^;』

 いつになく真面目に、しかも重苦しくなる雰囲気を滲ませて夕実ちゃんが喋るものだから、首塚さんも少しどうしていいかわからないようでした。

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 ストリップ劇場を背に皆、言葉を続けたがらない。続けようとしなかった。

 それに気づいたのか夕実ちゃん本人がもう一度言葉を口にする。

『あれー?やだな~ですよこの雰囲気~^^ えへへへ~。あ、そうそう菅原先輩?お昼まだでペコペコですぅ!

 はやくどこかでランチしたいなーって感じです、わきゃー☆』

『そ、そうよね~^^; 痩せすぎても美貌に悪いしさ、さ、いこいこ!菅原君が奢ってくれるらしいからw』

『ええっ!?って、ああ、そ、そうだよおごっちゃうよー^^; 今日は皆で焼肉パーティーでもしようかアハハハ~^^』

『・・・』

『・・・』

『・・・』

 ・・・アレ? なんか一気に雰囲気が悪くなったような澱んだ空気が充満してる・・・

『私は手巻き寿司なるモノを食べたことが無いので食べたいデース^^ 夕実サン!色々レクチャーしてクダサーイ^^』

『あ、いいですよー^^ じゃあー先輩っちに材料買い込んで、今日は皆で手巻き寿司パーリィーしましょうですわきゃー☆

 もちろん材料費は菅原先輩もちでです☆』

『お、おーう、ま、まかせてよ^^;』

 一瞬、雰囲気が暗くなりかけたが、どうやらリンダの機転が利いたようだ。

 ---帰り道、夕実ちゃんとリンダが仲良く先頭を歩いてる時に、ちょっと前を歩いていた首塚さんが振り向き様に

『ボフッ!』っと、ボクのお腹を軽くパンチしてきた。

『えっ!?何?』と思った時、耳元で首塚さんは小さく囁いた。

『焼肉焼いても家焼くなってことわざ知ってる?ダメよあの場面で焼き~なんて言っちゃ^^』

 ・・・ああ、そういう事か。

 ボクは気遣いが足りなかったことに気づいた。

 一番夕実ちゃんを知っていて、かつ、気づいて気遣わなければならないボクなのに・・・。昔のことを知らない首塚さんに諭されるなんて・・・。

『御免なさい。そしてリンダにはアリガトウだね』

『そうね^^ まあ~でも奢りでチャラってことに☆ ---えっとあと1つだけ私が言っていい?』

 え?なんだろう。首塚さんの言いたいことって。

『あそこには菅原君が提唱する廃墟の滅びの美学は「私には感じられなかった」ってことかな^^』

 そう言い切って、先頭の二人の間に駆け寄ってく首塚さん。

 ・・・それはボクも感じてた。言ってくれてありがとう。

 ボクが求めてるのはこういうのでは無い。

 事件・事故で廃村廃墟に至ってしまったものには、なぜかノスタルジックなものは感じ取れないと思ってた。

 ぶっちゃけ人口減少や過疎化・ダム建設等々の理由で風化を辿って忘れられていくものとなんらかわらないのだけれど、今回は何かが違う。

 暴言だけれど、老衰と事故死の違いなのかもだ。

 同じ朽ちるでも大分違う。なんかそんな気がした。

『おーい!』

 ボクは先頭の女の子達の輪に突っ込んでいく。

『今日はボクの究極の手巻き寿司でも披露しちゃうかなあ』

『ええ!なにそれ^^』

『先輩がお手手で巻き巻きしてくれるだけでも嬉しいんですけど気になるですわきゃー☆』

『エヴァンゲリオンの使徒で言ったらゼルエルくらい最強のsushiデスか!?』

 ふっふっふ。みんな期待に胸躍らせてるな(リンダ以外は膨らむ胸がさびしそうだが)

『その名もフルーツ手巻き寿司☆これって斬新じゃない? トッピングで練乳^^』

 このあと、スーパーでの買い物で一切材料を選ばせてもらえなかったのは内緒です☆

 ここまで長々と読んでいただきありがとうございました^^

 いずれ『夕実ちゃんの過去話』なんかもどこかでやれたらいいのかなあ~なんて思ってます。

 辛いことは書くかも知れませんが、ボクの物語の根幹は『最後はハッピーエンド』です^^

 


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コメント 17

てんぽく

ちょいのりさんはSMがお好きだったのですね。

えっちなのはいけないと思います!

今度、おっぱいパブに連れて行ってくださいwww
by てんぽく (2012-01-26 21:24) 

サンダーソニア

火事は怖いですよねぇ。
私が自宅にいなかったら
隣からもらい火で ってことがありました。
by サンダーソニア (2012-01-26 21:47) 

下総弾正くま

警察の目を忍んで建てたものだけに、防火管理の面も問題があったんでしょうね…(・_・;)

…で、フルーツ手巻き寿司の写真は…(-_-)ニヤリ
by 下総弾正くま (2012-01-26 21:54) 

唐津っ子

廃墟といってもいろいろですね.
私も火事で焼け残った建屋はあまり・・・.

気分を変えるために,次回は,ちょいのりシェフ特製
の手巻きずしネタを希望します(笑)
by 唐津っ子 (2012-01-26 21:58) 

銀狼

仕事で火事後の建物に入った事がありますが、
確かに気分のいいモノではなかったですねぇ。。。
フルーツ手巻き寿司、意外と美味そうかも^^;
by 銀狼 (2012-01-26 22:54) 

リン

フルーツ巻き・・・思わず吟さん思い出した^m^
さて、いろいろ考えながら見ていました。
最後はハッピーエンドで・・・嬉しいです。
私はもやもやしたまま終わるものが嫌いなので。。。
また、登場人物の過去が・・・続きが楽しみです!
by リン (2012-01-27 05:41) 

kiyo

ちょいのりさん、
久々の廃墟サークルの続きは、心に煤がしみるような気がしました。
ちょっと、辛いですね。
夕実ちゃんは、過去に辛い経験したんでしょうね。

そして、「フルーツ手巻き寿司」???
いよいよ、手に職を活かして、B級、いや、C級グルメに挑戦ですか?
流行れば、引く手あまたですよね。

by kiyo (2012-01-27 10:51) 

まめ

火事はねぇ・・・・・・・・怖いです
# なんとか復活しつつあります~
by まめ (2012-01-27 12:21) 

サンダーソニア

3%は確かに弱いです^^;
by サンダーソニア (2012-01-27 12:30) 

レイリー

火事で閉鎖ですか。。。
何故にこんな所で開業したのか不思議ですね。。。
たしかにこういう廃墟はチョッとそそられませんね (^^;
by レイリー (2012-01-27 13:09) 

ホイップ・クレイ

何とも切ない哀愁が漂いつつ…
焼け跡には、寂しさまで感じてしまいますね。

この季節!!まさに ”火の用心”ですね。 ★


by ホイップ・クレイ (2012-01-27 13:17) 

めぐ

なんだか 写真見ていると怖くなってきて・・・

こわいな~ 変なもの写ってないかな~
と、ビクビクしていたら


きゃぁぁぁぁぁぁ~

お姉さんが こっち見てる~ 
自分で自分を縛るおねえさんがぁぁぁぁぁ  
これも一種の自縛霊?


くだらなくて、すいません m(_ _)m


by めぐ (2012-01-27 17:20) 

駅員3

ほんと、廃墟にしてはちょっと雰囲気が違います。
普通の廃墟と時間の流れ方がちがって、時空がゆがんでいるみたい。
ゆがませているのは「悲しみ」・「怨念」・・・・でしょうか!?
by 駅員3 (2012-01-27 17:43) 

miwa

夕実ちゃんの過去が気になるなぁ~
火事で廃墟なんて・・・ちょっと淋しいね(^_^;)
by miwa (2012-01-27 18:02) 

大林 森

こ!これはここ最近の中でも怖いー!Σ( ̄ロ ̄lll) !アバババッバ!すごいですねえ・・・。
私だったら怖くて近寄れないですー!おみそれしました!
by 大林 森 (2012-01-27 20:25) 

DEBDYLAN

なんか訳あり過ぎそうで不気味だなぁ・・・
ストリップはアメリカでなら見たコトあるぜよw

by DEBDYLAN (2012-01-27 21:33) 

tomomame

自縛のクイーン…。
たまに通りがかりに火災のあったらしい建物が
そのままにされているの、見かけるけど
雰囲気がアレなので処分(?)して欲しいなと
ちょっと思うのでした…。
by tomomame (2012-01-31 20:22) 

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