矢納水力発電所跡編vol⑤『再生可能エネルギーの王者』 [廃村さーくる]
『お兄ちゃん? 何かなこの溝は?』
水路跡?のようなかび臭い地下からようやく地上に生還したボクを誰も讃えてはくれませんでした。
ふつー『地下はどうでしたか?わきゃー☆』とか『怪我は無い?』『ダイジョーブでしたかー?』とか心配してくれるものだろう^^;
そもそも君達が地下に行ってきてくださいね☆って言ったんだろうがあ・・・
みんなそれぞれ思い思いに水力発電所跡をうろうろ探索して、ようやくボクに気づいたのは妹の琴音でしたーーー
妹から頂いたありがたい言葉は労わりの言葉ではなく、ただの質問でした・・・
『うーん・・・なにかなこの溝?』
よくよく見渡すと縦横無尽にこの発電所跡に溝がウネウネと走っているのだ。
水の通り道としては浅いし、機械が嵌っていた部分と考えた方がいいのかな?
さんざ考えたあげく、結局答えは出なかった。
『じゃあ、そろそろ入り口付近にあった階段を覗いてみることにしようか皆』
『はーい』
入り口から右手の階段は、パッと見しっかりした造りのように見えた。
元々家屋など建築物では階段は頑丈な部類だけれど、なにせ半世紀以上も野ざらし。
しかも鉄製でもなく木製。
階段を一歩一歩確かめつつ上に上がることにした。
ようやく辿り着いた小部屋。天板は剥がれ落ち、床も安定しない。
歩を進めるたびにギリギリと音をたてるものだから、これ以上は危険と判断し、ゆっくりと忍者のように元に戻ることにした。
階段脇の窓から発電所跡の内部を見下ろせるくらいしか特に印象の無い部屋だったと付け加えておこう。
『じゃあ・・・次は左手の小部屋ですう^^』
小部屋入り口近辺にどうどうと木製の何かが置かれているのだが、これも一体なんであったのかよくわからなかった。
『ただの棚なんじゃないかしら?』
おそらく首塚さんが言うとおりだとは思うのだけれど、どうも確証がもてない。
この棚らしきものの奥に細い通路があり、ボク達はそこを通ってもう一つの小部屋へと向うことにした。
『エット・・・スガワラサン?』
『何?リンダ』
『床が半分デンジャラスデス☆』
確かに半分床が抜け落ちてるなあw
『大丈夫。ゆっくり床が残ってるところを歩けば・・バリバリバリ!』
見事にここで悪いお手本を皆にまざまざと晒してしまったわけで(実話です。浅くてよかった^^;)
みんな大丈夫?と声を掛けてくれるのだが・・・その目は半分笑っていたのは一生忘れないからな!
『菅原君。なんか外を回ればフツーに奥まで行けるみたいよ?』
それを最初に言ってくださいよ首塚さん^^;
結局ボク達は外からぐるっと周って奥の小部屋に辿り着くことができた。
『わきゃ・・・、こ、こここここれは・・・やめておいたほうがよさそうな感じですよね^^;』
ううう・・・夕実ちゃんのご指摘どおり、こちらは階段というよりも『はしご』だ。
同じ野ざらしでも強度的にはこちらのほうがヤバイというのが誰の目にも分かる・・・
『ハイ、お兄ちゃん。カ~メ~ラ☆ いい写真期待してるよ~♪』
そっと琴音がボクの首にカメラを掛ける。・・・普段よりやたら優しく。
ああ行けばいいんでしょ!行けばw
渋々はしごに手を掛けると、ところどころボロッとするんですけど^^;
やっぱやめにしない?と後ろを振り返ると
『フレー!フレー!SU☆GA☆WA☆RA! 頑張れ!頑張れ!SU☆GA☆WA☆RA!』の大声援(いや中声援くらい)
ええい!ナムサンっ!いざ行かん!
---ボクは恐る恐る二階へと続くはしごを登って行く事にした・・・
上った先は小さな小さな小部屋。
床にはぽっかり開いた天井からだろう。枯れ葉が絨毯のようにしきつめられていた。
---どうやらプレートにも書いてあったように、ここは『倉庫』のようだ。
・・・が、特にめぼしいものは何も無い。あったのはいつ抜け落ちるかわからないボクの恐怖心だけでした^^;
ただ、煉瓦作りの水力発電所の建物とこの入り口近辺の木造の建物は明らかに別物。
もしかしたら後からこの倉庫などの小部屋は付け足されたように作られたのではないだろうかと感じた。
---では早々に戻りますか。怖くて急げないけれど^^;
一通り内部探索を終えたボク達は、一旦外に出て、外周をぐるりと回ってみることにした。
『煉瓦造りに苔って何か似合いますよね。わきゃー☆』
そう言われると、確かにそんな気もする。
大正時代に作られたからかこの水力発電所。煉瓦造りというのも中々洒落ている。
別の言葉で言い換えるならばモダンなんでしょうかね。
そんなこんなで裏手まで到達。
見れば見るほど、見上げれば見上げるほど、廃墟としてはイカシテいる。ナウい?古いかw
今までの廃墟とはまた違った趣に思い耽っていると、夕実ちゃんのすっとんきょうな声が見事なまでにぶち壊してくれました^^;
『あっちにトンネルっぽいのがあるですう!』
あ、ほんとだ。
なんだろアソコ。
『ちょっとここまで来たら行ってみたい感じよね!^^』
首塚さんがそう言わなくてもボクはそこに興味を感じたと思う。
穴があったら行ってみるのが男の子です☆
『じゃあ~いってみよう!れっつパーリィ!』
『『『『・・・・・・』』』』
どうやらあんまり変なこと言うもんじゃないね^^;
しら~っとした視線を背中に受けつつも、そのトンネルの向こうを目指すことにしたーーー
すると、すぐ行き止まり。
手すりの向こうに広がるのは、先ほど橋の欄干から見下ろした神流川。
あるのはまたもや訳の分からない物体が二点。
『何コレお兄ちゃん?』(本日二度目の何コレお兄ちゃん)
『ゴメン!全然わからないw』
『つかえねー』
妹につかえねーとか言われる兄貴っていったい・・・^^;
とりあえず家に帰ったら調べてみるからと、その場はお茶を濁すことにした。
潜ったトンネルの上は、実はかろうじて道だったところが残っていて、ボク達はそこからこの矢納水力発電所跡を後にする。
再び橋の袂まで戻ってきたところで、夕実ちゃんが声をかけてきたんだ。
『先輩先輩!今、反原子力発電の運動がさかんに起こってますよね?』
おや?夕実ちゃんには珍しく社会派なネタをふってきたな。
少し驚き。
『そうだね。いくら便利でも安全面でこれほど最悪なものはないのかもしれない。
実際、今年の改訂版の地図帳じゃ、福島第一原子力発電所事故の影響で、
日本の地図に立ち入り禁止区域の表示が載ってしまうなんて誰が想像したか^^;
反対運動も仕方の無いことだと思うよ』
『代替エネルギーって話も出ていますです。もっとクリーンで安全なエネルギーで原子力にかわることは出来ないんですかね。
この水力発電所みたいな』
そう話を続ける彼女のまなざしはとても真剣だ。
それを聞いていた首塚さん・リンダ・琴音も無言ではあるが真面目にボク達を見つめる。
『代替エネルギーか・・・。
水力発電ってのはね?再生可能エネルギーの王者と呼ばれてるんだ。
まあ、簡単に言うと、火力とか原子力ってのは資源を使い切ったら終ってしまうエネルギーなんだけれど、
太陽熱や風力、そして水力ってのは半永久的に繰り返して使えるエネルギーなんだよ。
その中でも安定して、かつエネルギー量が賄えるのが水力発電なんだ^^』
『じゃあー水力発電をいっぱいいっぱい作りましょうですう! そうすれば原子力もいらないし、怖い目にあわなくて済むです!
みんなシアワセじゃないですか^^』
『・・・そう思いたいところだけれど、そううまくも行かないのが現実なんだよ夕実ちゃん^^;
発電量は圧倒的に火力・原子力のほうが大きい。
じゃあ、それを全部水力でまかなおうとするのも無理なんだ。
水力発電所を造れるところはもうほとんど限られていて少ないから。
それでも無理矢理やっちゃえばいい。こんなに放射能汚染に苦しむのならと思うところだけれど、
ダムだらけの山々は、それはそれで環境を破壊するんだよ^^;』
『うまくいかないんですね・・・』
がっかりさせてしまったかも。でもウソをついて後でガッカリさせるよりはいいと思った。
『ミナサン!今日はいい機会デス! 帰りのタイム、代替エネルギーが何か無いのか考えながら歩いてみるのもイインジャないデスかね^^』
『いいわねそれ^^ こんな私たちでも色々考えてみましょうよ』
リンダのふとした提案に首塚さんが乗ってくる。
『じゃーこれなんてどうかな? 無職の人を日本中から集めて自転車漕いでもらって電気を作るw 勿論見合った報酬はあり。ただし国からね^^』
琴音もノリノリだ。
きっとみつかるはず。糸口は必ずあるはず。
安全と言えるチカラがこの地球と人にあることを^^
そうしてボク達は、ああでもないこうでもないと議論しあいながらこの矢納水力発電所跡を後にしたのです。
※ここまで読んでいただきありがとうございました^^
実はもうちょっとだけ続きます。
『帰り道編』でまたお会いいたしましょう^^
電気を極力使わないようにするのって、便利になれると
難しいものですよね。
by まめ (2012-03-27 06:35)
ひとりひとりが考えることで何かが変わるんじゃないかなとも思ったりします。
by リン (2012-03-27 07:39)
よくよく考えなくても、家中家電ばっかりですもんねぇ。
使わないようにしてても、結局必要に駆られて使うようになるからな。
確かに最後の最後で殴りたくなりましたよ(苦笑)
大人なので我慢しましたけど♪
by しきみ (2012-03-27 08:48)
危ない個所が多いい廃墟でしたね。
by サンダーソニア (2012-03-27 09:23)
個人よりもっと節電するべきなのは、テレビは12時までネオンは控える、ビルや観光施設等ライトアップ等は控えたり幾らでも節電対象は有りますね。
by 馬爺 (2012-03-27 11:53)
大絶賛迷走中の八〇場ダムも発電を含めた多目的ダムなんですが、エネルギー問題で名があがらないのは…(・_・;)
風力発電は回ってても発電してないことがあるんで要注意だっ(←道の駅「能生」)Σ(゜Д゜;
by 下総弾正くま (2012-03-27 16:34)
確か県の産業遺産かなにかに指定されていたと思いますが、この荒れようは……
by 駅員3 (2012-03-27 18:59)
やはり野ざらしになると風化が進みますね。。。
ちょっと勿体無い感じもします。
電気問題は難しいですね。
原子力も安全でないばかりかウランもそんなにあるもんじゃないし、使用済みになった廃棄物は更に問題だし。
これを機会に色々と変えていければいいのですが、利権欲しさに原発を動かしたい金の亡者が多すぎます。
ウチの太陽光発電も溜めて自給自足できるといいんだけどなぁ。。。
by レイリー (2012-03-27 22:19)
まさに安全第一の現場ですね^^;
by たかれろ (2012-03-27 22:33)
ぼろぼろになっても存在し続ける
緑十字の標語に笑っちゃいました^^
by みずき (2012-03-27 22:50)
ちょいのりさん、
誤字書き直しました。
発電を増やせないならば、省電力・節電ですよね。
ただ、個人の努力で可能なのは、全電力消費のかなり限定されていたと思います。
企業が、全体の2/3以上占めていたと思います。
公害対策の時のように、企業努力で、節水、節電しかないでしょうね。
そして、それは、そのままでは経済の停滞とリンクしてしまう。
そこを、技術革新で、省電力・節水・節電でも発展できる新しい社会モデルをつくる。
それしかないでしょうね。
by kiyo (2012-03-27 23:01)
矢納水力発電所跡、調べたら埼玉県にあるんですね。
「矢納水力発電所跡」でググると、ちょいのりさんのブログがトップで出ますよ!(笑)
撮影で使いたいっす〜☆
by MI_GR_ (2012-03-28 00:00)
まだ東日本大震災が起こる前に,
道路を歩く人の振動だけで発電する画期的な
発明が報道されていたのを覚えておられますか?
あんなのを街中に・・・ってちょっと短絡すぎかな(笑)
by 唐津っ子 (2012-03-28 00:07)
我々は、とにかくエネルギーの節約を
考えなければならないでしょうし、
御上の方は如何に「利権」が絡まないような
仕組みを作れるのか考えて欲しいものですね。
by 銀狼 (2012-03-28 00:48)
危ない思いをして どうしようもない人がいるなら
安全な生活ができるがいいと思うんだけど
足りなくなると 今は大変だ
けど ちょっとずつなんとかなるんじゃなかと…
by ねこじたん (2012-03-28 01:43)
去年の夏はエアコン我慢してのPC作業・・。フリーズはするし、夜になっても温度下がらないし本当につらかったです・・。(⊃д⊂)震災にあわれた皆さんの事を思えば耐えられましたが、今年も同じ我慢しないといけないと思うとちょっとせつない・・。(つд`)うぬぬー。われながら身勝手ですねえ・・。反省。(>_<)
by 大林 森 (2012-03-28 06:08)
デンジャラス~ボロボロだねぇ
足元が危険~
安全第一が虚しいなぁ~
by みうさぎ (2012-03-28 06:43)
このところ、こちらではウグイス、の遅い啼き声
を今も啼いてます~。
by ryuyokaonhachioj (2012-03-28 10:33)
けがはしなかったのね?
by サンダーソニア (2012-03-28 16:57)
水力発電もダムの問題とかあるけど・・・
とりあえず原発いらねぇって思う僕。
なくてもなんとかなると思うんだけど。
ってか、もう頼りにするシロモノじゃないっす。
あんな危ないモノ。
by DEBDYLAN (2012-03-28 21:24)