第506話 八ッ場ダム・吾妻渓谷編☆vol④『廃温泉・笹湯』

『トクン・・・トクン・・・トクン・・・』

　

　私の胸の中で熱くなった血液がぐるぐると駆け巡る。

　喉は一気にカラカラ状態。

　一歩、そしてまた一歩と混浴露天風呂への小径を

　菅原クンの後についていく私がそこに居た。

　

　覚悟を決めた混浴だけれども、だけれども・・・

　アアアァァー！どうしよう・・・

　緊張でおかしくなりそうです＾＾；

　

　ドンッ！

　えっ!?

　私は気づかずにいつの間にか菅原クンの背中にぶつかっていたみたい。

『いたーい＾＾；　えっと・・・どーしたの菅原クン？　急に立ち止まったりして＾＾；』

　彼はくちびるに人差し指をあてながら、もう片方の指先で露天風呂を指し示しながら、私にこっそりと小声で言ってきたのだ。

『先客が居るみたいだよ＾＾』

　八ッ場ダム・吾妻渓谷編☆スタートです。

 

　菅原クンが指し示したのは露天風呂脇にある『下足』でした。

　そこには、ひ～ふ～み～・・・恐らく３足の靴があったのです。

　しかもここまで来てようやく気づきました。

　そういえば話し声が聞こえるーーー。

『どうする？首塚さん＾＾　ボクはそれでもかまわないタイプだけど、靴と聞こえてくる声の感じからして恐らく全員男性のようなキガスルけど』

　えっ!?　ちょ！　まっ！

　ええええーーー!?

　菅原クンにすら今世紀最大にめっちゃめちゃガチで自分の肌を露わにするとかどうしようとか最初はタオルをつけて入浴したほうがいいかなそれともいきなり大胆にとか着替える場所って一緒なのか一緒なら脱いでるところも見られちゃうんじゃないかとか菅原クンより後に入るか先に入るかとかどんな下着着てるか見られちゃったら恥ずかしいとか上から脱いだ方がいいのか下から脱いだ方がいいのか掛け湯したほうがいいのかお肌荒れてたらいやだなあーとか菅原クンのえっちなとこ見ちゃったらどうしようとかそれでも指の間から堂々と見てみたいなとか湯船に入った後横に座ろうか対面で座ろうかどんな話しようかとかなるべく普通に会話しようかとかちょっとえっちいなムードにいってみようかとかここで結ばれちゃったらどうしようとかお父さんにどうやって報告しようか内の家系的にお婿さんで来てくれるのかとか子供は３人くらいがいいなそうそう１姫２太郎ってことで男の子一人の女の子２人がベストなんじゃないかなあとか菅原クンって犬とか猫とかどっちが好きなんだろうとかそもそも青森県まで来てくれるかなあとか

　まるで逆走馬灯のように一気に頭の中を妄想映像が早送り状態だってーのに、他の男の人が居るの!?

　そんなの絶対いやいや嫌ァァーーー！＾＾；

　しかも見知らぬ男の人にまで囲まれて女一人ぼっちだなんて無理ゲーじゃん！

　言葉には出なかったのだけれども、そのむすーっとした顔から読み取ってくれたのでしょう。

『流石に恥ずかしいよね＾＾；時間を置いてまた寄るかーーー、あ、そうそう！この川原湯温泉にはまだまだ共同の温泉施設があるからそっちを周ってみようか＾＾』

　私は返事せずに、こくりと頷いてみせた。

　結局またもやラブラブ大作戦は失敗みたい＾＾；

　けっこ～・・・一大決心だったんだけどなあ・・・・

　いや！まだ大丈夫だ・・・

　

　－－－私たちは聖天様露天風呂を後にして次へと向うことになったのです。

　

　聖天様露天風呂から数分。

　菅原クンが立ち止まって小さな小道を指差した。

『こっちに笹湯って温泉があったはずなんだ＾＾　そこに行ってみようか＾＾』

　笹湯？

　ここに来るまでにめちゃくちゃネットで調べたりしたんだけど（ラブラブ大作戦的シュミレーションで☆）

　そんな温泉あったかしら？？？

　しかもさっきから思ってるんだけど、菅原クンってやっぱりこの川原湯温泉って来たことあるような感じよねえ。

　まあ～でもいいです。

　菅原クンはしょっちゅうどこにでも出かけてる人間だし、知ってても別におかしくはないよね＾＾

　むしろ先導してくれるのがありがたいと思うべきですよ☆

　あわよくば、そこで再びラブラブ大作戦の究極奥義『お色気作戦☆』をうまく発動させればいいわけだしｗ

　

　そんな思惑を私が考えてるのもつゆ知らず。菅原クンはのほほ～んと『ここが笹湯だよ～＾＾』と、

　小さな家屋を指差して、嬉しそうに私に紹介するのでした。

　

　見れば本当に質素な佇まい。

　あ、えーっと素朴な外観でしょうかねｗ

　

　私が『へえ～＾＾』って見回していると、

『こっちこっち＾＾　ここが入り口さ～』とおいでをしたのです。

『あれ!?　えっと・・・閉鎖？しちゃったのかあ・・・＾＾；』

　入り口に貼ってある大きな断り書き。

　読めばもう去年、一年以上前に閉鎖されてしまったみたいですね。。。

『いいお湯だったんだよ？』と、私に申し訳無さそうな苦笑いをする菅原クン。

　別に菅原クンのせいじゃないし、私は平気よ？

　ちょっぴりがっかりはしたけれど、そういうこともあるよね＾＾；と、ここまでの流れから、多少私はゆとりといいますか諦めめいたところを持ち合わせていた。たははー＾＾；

　でも菅原クンは何故か納得しないような感じで、この笹湯の周りをグルグルと探索しはじめたのです。

『あの頃のままだなあ～。懐かしい＾＾』

　薄汚れた窓辺に頬寄せて中を覗き込む菅原クン。

『まだお湯が張ってあるじゃないか＾＾；　ここからは湯気も何も見えないけれど、多分今でも使える温泉なんだろうなあ・・・』

　実質『廃温泉』と化した“笹湯”を覗き込みながら残念そうに何度も何度も呟く菅原君。

　そして満足したんでしょうか。もしくは諦めがついたのかな？

　私に『ゴメンネ、えへへ＾＾；』と、夢中になってて私を少し放っていたことを詫びて、

　そのまま言葉を続ける。

『今はダムよりも高い所に村ごと代替地へと移動してる最中なんだけれど、

　ここの管理者の方も恐らくその新天地へと移動したか、別のことをしてるのかもしれないね＾＾；』

　ここで私はふと思う。それを素直に彼にぶつけてみる。

『えーっと・・・、人や建物はどうにかこうにか移動できたりするけどさあ、

　温泉って流石に移動出来なくない？』

『それも結構色々あるみたいだね。温泉自体はボーリング調査で新天地でも温泉が成り立つような感じみたいだけれど、

　湯分やら泉質は同じようにいくのかどうかは分からないみたい。

　地質と水脈なんて、数メートルの差でガラッと違うこともあるし。

　というか、そもそも実質“新興的温泉”ってのが、温泉街としてお客さんを引き寄せるには魅力が弱いと思わないかい？』

　うーん・・・どうなんだろー。

　確かに古式ゆかしい伝統の～って謳い文句が言えちゃうような昔からある温泉場にくらべたら、

　圧倒的に厳しいとも思った。

『本来ならセットで魅力ある景勝地の吾妻渓谷すらダムに沈んでしまうわけだよ＾＾；

　この後に出来るのは恐らく、ダムと温泉のセットになるだろうね。

　しかも近代的で真新しくってスパみたいな健康ランドみたいな温泉施設なんかだったりするかもしれない。・・・わかんないけどさ＾＾；

　あんまり・・・魅力的では無いよね。

　これは勿論、偏った見方だと自覚はしてる。

　そこに住んでない人間だし、治水やなにやらの問題なんて全然加味してない外野の人間だ。

　でも・・・単純にこの場所の行く末がさあ・・・＾＾；

　一言で言うなら“もったいない”なと、感じたんだあ』

　そう言い切った彼は、こんな変な話しちゃってゴメンネとでも言いたげな顔を私に向けた後、

　笹湯に小さくバイバイと手を振る。

　そして私たちは再び温泉街のメインストリートへと戻ることに。

　そこでふと菅原クンが立ち止まって私に振り返りこう言った。

『温泉は後で寄ることにして、そろそろ首塚さんがどうしても調べたいって言ってたことに付き合うとしようか＾＾

　そう言えば心霊関連で調べたいことがあったんだよね？＾＾』

　ええっ!?

　べ、別にこの八ッ場ダムや吾妻渓谷に心霊関連で調べたいことなんて無いんだけど！

　ただ単純に菅原クンと２人きりで出かけたいってだけで嘘をついただけなのに＾＾；

　－－－ここで私は再び嘘をつく。

　足りない知識を総動員して川原湯温泉街やら八ッ場ダムに関連したような、いかにもな話を即興で創り上げるのでした。

『なんかね、夜な夜なこの近辺に、こつーん・・・こつーん・・・って怪音？が響くみたいなんだって。だからソレって何？みたいなあ～ってとこ＾＾；』

『じゃあこの土地の人に聞き込みとかしてみようか＾＾』

　いやいやいやいいです結構ですばれちゃいますから＾＾；

　嘘は躊躇したらいけません。重ねる嘘なら大胆に。

　ばれちゃいそうなら別の話題でうやむやに！

『えっと、えへへ～そういえば菅原君が行きたいって言ってた場所ってどこなのかなあ！

　そこに行きましょ！

　ね？ね？ね～♪』

　大きな声で無理矢理話題変換。

　彼の背中をぐいぐいと押して先へと促がす私。

『ええっと・・・じゃあ・・・それでいいならいいんだけどお＾＾；』

　腑に落ちない様子の彼だけど関係ねーｗ

『じゃあ～こっちかな＾＾　ここからだいぶ歩くけど覚悟してね☆』

『大丈夫だよ～ん＾＾　帰りに温泉で疲れを癒しますからねっ☆』と、笑顔で答えた私。

　

　－－－まさかこんなに歩かされるとは・・・

　この時の私には思うだにしなかったのですーーー。

　

ここまで読んでくださりありがとうございました＾＾

結局にゅーよくシーンねーのかよ

物語の都合上もあるけど、実際のとこ、先客がいる混浴露天風呂に後から『どうもー＾＾　いいお湯ですかね～☆』ってフランクな感じで入れなかったっす＾＾；

　ビビッて取りやめちゃったのは内緒だよ～ん＾＾；

混浴って知ってる間柄ならともかく、まったくの他人様だと入りずらいとこもあるわよね。

だよねーｗ　実は今回アルコールも飲んでなかったりする旅路だったりするんだ（飲んでれば多少大胆になれるんだが）

マジで!?

恐らくめちゃくちゃ歩くであろうと想定してたからな。酒なんか飲んでたら途中で死んでまうよｗ（実際にめっちゃ歩いてます。一駅手前から下車して山道経由しつつ次の川原湯温泉を通り過ぎて別の山へと歩いてさらにＵターンしてたりするからあ＾＾；）

　ま、そんな感じの自分の旅路と物語の交錯したお話です。

　物語りもここで折り返し。

　果たして首塚さんのラブラブ大作戦は？

　八ッ場ダムって今どうなの？

　そして菅原クンが行きたいところってどこなの？

　それが分かるのは次回です＾＾

　また次の記事でお会いいたしましょうず☆

 

タグ：川原湯温泉 笹湯 聖天様温泉 廃温泉 代替地

コメント 30

なんかこんなタイトル絵描いちゃったら、妹にけなされそう・・・＾＾；
by ちょいのり (2012-11-17 03:30) 

『エロ兄貴』って言われるキガスル＾＾；
by ちょいのり (2012-11-17 03:31) 

何度か来た川原湯温泉。

ダムに沈んでしまうなんてもったいない！ってキモチが少しでも伝わっていただけたなら本望です。

by ちょいのり (2012-11-17 03:34) 

次回は『廃』から『新』への物語だったりします＾＾

それがなんなのかは～

次回のお楽しみに＾＾

by ちょいのり (2012-11-17 03:36) 

エロ兄貴～～～(-_-)ﾆﾔﾘ
by 下総弾正くま (2012-11-17 05:19) 

う～む　首塚さんの野望は
　徐々に後退しているのかっ（＾w＾）☆
　　エロ兄貴の陰謀はっ（＾m＾）♫

by rtfk (2012-11-17 06:23) 

早く　エロ兄貴の本領発揮の混浴シーン見たいです☆
あ、ご無沙汰してま～す　＾＾；
by haku (2012-11-17 07:02) 

な、な、なんと先客…ってオチは予想だにしないハプニング
なんとカナピー
先輩が行こうとしているところにも興味津々!!
続き、早く読ませて～
by 駅員3 (2012-11-17 08:06) 

うふ・・続きが楽しみ＾＾
by viviane (2012-11-17 09:54) 

エロ兄貴！！　(ﾟ∀ﾟ)ﾆﾔﾆﾔ
by たかれろ (2012-11-17 18:25) 

あらら、残念でしたね。
混浴はさすがに勇気でんわw
by まめ (2012-11-17 19:55) 

思い切って先客の心配がいらない貸切風呂に行くしかないでしょう！
by ちゃめこ (2012-11-17 20:50) 

お風呂セットとかホースとか、そのまんまなんですね。
なんか、半分くらい透けてる人がいそうでちょっと
怖い感じもします＾＾；
by みずき (2012-11-17 23:08) 

ここはやっぱり家族風呂しかないですね．
ねぇエロ兄貴(笑)
（流行ってそうなので私も使ってみました）
by 唐津っ子 (2012-11-18 00:12) 

あぁぁぁぁ・・・orz
ナンチャッテ＾＾；
八ツ場ダムも前原さんが大臣になった時は
大騒ぎになったのですが、その後どのような状況に
なっているのか見てみたいですね。。。
by 銀狼 (2012-11-18 00:12) 

書くのを失念してました(汗)
カミさんの誕生日お祝いコメント有難うございました(嬉)
by 唐津っ子 (2012-11-18 00:23) 

こんにちは。
こないだは「おもいっきしダイレクト」がツボに入って、それしかコメントに書かないでしまい、なんか失礼しましたｗ

露天風呂の下足置き場とか笹湯の建物、良い感じに雰囲気ありますね。
そして笹湯閉鎖断り書きの字が上手いです。
by ジル (2012-11-18 00:50) 

逆走馬灯これは今年の流行語大賞をあげたいです～！はやらせよ～っと！
by macinu (2012-11-18 05:59) 

おはようございます。
次の展開・・・楽しみにして良いのかな・・・。
by YUTAじい (2012-11-18 07:51) 

混浴は未体験だけど、
先客が女性ばかりなら知らない人たちでも入っちゃうかも。
見られる恥ずかしさより見たい欲望の方が･･･w

by DEBDYLAN (2012-11-18 08:40) 

バスタオル姿の前が気になりますぅ～(^^ゞ

中学生の時に鬼怒川沿いの露天風呂で素敵な女性が
入って来て・・・・
その後、しばらく出れませんでした（爆
by DON (2012-11-18 10:52) 

えぇ、ワクワク待ってた入浴シーンが・・・^^;
でも、確かに知らない人が先に入ってる温泉に、一人で「お邪魔しま~す」はちょっと・・・(>_<)
よし、次の温泉だ！ｗ
by ニッキー (2012-11-18 11:03) 

何度か混浴の温泉に入ったことがあります。
水着ならいいけど、バスタオルは心もとない感じでした（笑）
by はーく (2012-11-18 11:41) 

おおっ！
ここでも計画失敗！
やっぱり色仕掛けは。。。
ってこれ以上もっともっと歩くの？！
どうなるの？！
by リン (2012-11-18 20:02) 

アルコール無し？？？

クリープを入れないコーヒーみたいな(-_-)ﾆﾔﾘ
by 吟遊詩人４１ (2012-11-18 21:00) 

てっきり混浴シーンがあると思ったのに･･･
ラブラブ大作戦が幻になりそうな気がしてきた～
by miwa (2012-11-19 12:18) 

進展するかしないかｗｗ気を持たせますねww
by サンダーソニア (2012-11-19 16:04) 

先客がいて残念でしたね～
後から入ってこられるのも困るけど（＾＾；
次がまたまた楽しみですｗｗｗ
by 美美 (2012-11-19 17:00) 

混浴シーンはカットばかりですね。(^_-)-☆
早く本番ＯＫを出しましょう。
皆さん待ってます。（サザエさん調で）　
by 馬爺 (2012-11-19 22:21) 

コクリと頷くとか　きゃわいいと思いますけど
男子的には　どうなんでしょうね〜？

by ねこじたん (2012-11-19 23:25)