第535話 長瀞・天神山城跡編☆vol④『本当の廃城でもあるし偽の廃城でもある寂しいお城』 [廃村さーくる]
『そこは・・・危ないです・・・』と、
私が無闇に繰り出す足先を制して朝子ちゃんが忠告してくれる。
おかげで荒廃した床を踏み抜くこともなく、この天神山城跡を歩くことが出来たです。
その様子に菅原先輩も感心している感じですう。
『ボクでも見誤ることあるのに、さすが地元っ子だなあ~朝子ちゃん^^ この廃墟に来たことあるのかい?』
『ううん。・・・初めて』
その言葉に、ええっ!?と驚く菅原先輩。
私も驚いたのです。
---ふと、
一番後ろから慎重に付いてきている首塚先輩を見た私。
なんだか、驚いたと言うよりも
うんうんと頷いていたのが不思議な印象だったのです。
『じゃあ、ここまで来たからには天守閣も行ってみようか^^』という菅原先輩の合図に、私たちはボロボロの階段に歩みを進めていったのですーーーー
『うわあ・・・ここも枯れ葉三昧ね^^;』
首塚先輩が苦々しい感じで呟く。
この感じだと・・・2階となる天守閣も雨ざらしなんだろうなあ~と想像が付きましたです。
『あらら・・・なんか・・・うーん・・・何も無いわね^^; あるのは畳だけのなんでもない空間ってとこかしら』
廃墟の遺物に期待してはいけないと、今までの旅で言われていたのですが、
首塚先輩が嘆いた通り、ちょっと私もガッカリ気分ですう^^;
そこにあるのは城っぽくもない廃墟だと思いました。
まるでアパートの廃墟を見たのかのように・・・
その様子を見てか、苦笑いで私たちに注釈を入れてきた菅原先輩。
『うーん・・・、やっぱりみんなちょっと気がぬけちゃったかもだね^^;
うん、ここはさっき言ったように”元々あった城跡にコンクリート槽で作りかえられた模造の城”だった訳なんだ。
見たとおり、味気も風情も無い模造だよ。
天神山城って名前は、実は日本各地に点在してたりするんだ。
こんな雰囲気に騙されてしまいそうだけれども、
ここ長瀞の天神山城ってのは、室町幕府時代に藤田氏という人が築いたという列記とした歴史をもっていたりするんだよ。
その後は主を幾重にも変えたらしいんだけれど、いつ、主の居ない城になったのかは分からないところのようなんだ^^』
そんな歴史のあるところになんでまたこんな城っぽいものを発てたんですかね^^;
私がいぶかしげな表情をしてたのを汲み取ってか、菅原先輩が、うんうんと言わずもがな、ボクに言わせてよとばかりに更に続ける。
『観光目的・・・これしかないかな。この近辺には人を呼べるものが無かった。
レジャー目的として本丸跡に城跡復元みたいに造っては見たものの、経営母体が採算合わずにさっさと撤退。
そのまま30数年を風化に任せてしまったといった感じなんだと思うよ。まあ、調べきってないし憶測だけれど、流れ的には間違いは無いとおもう』
『寂しい・・・お城なんです・・・ね』
朝子ちゃんがポツリと呟いた。
その言葉に皆、うん・・・と返した。
ある意味、日本でもっとも浮かばれない城跡と言ってもいいんじゃないかと私は思ってしまいました。
人の利欲で再現され、人の理屈でまた滅び行くだなんて・・・
『本当の廃城でもあるし、偽の廃城でもあるのね・・・』
首塚先輩が言ったこの言葉が、ここを一番表しているように思った。
その後は見るべきものが無いと言うことで、自然に天守閣からの眺めでも見ようじゃないかという流れになって、お外に出てみました^^
『おもいっきり・・・手すりですね』
朝子ちゃんがボソリと呟く。
うーん・・・ただのベランダですう・・・^^;
『あれ? なんか向こうに建物が見えるよ!?』
首塚先輩が指差した方向を一斉に向く私たち
・・・本当だ。なんか屋根みたいなのが見える。
私たちは、この寂しい城跡にひとまずバイバイをし、そこへと向うことにしたのです。
今まで登ってきた道とは別に、先ほど天守閣から見えていた建物の屋根らしき方角に道っぽいものが伸びていました。
『は・・・し、ですね・・・』
なぜか菅原先輩よりも先行く朝子ちゃんが私たちを振り返りながら橋の存在をしらせてくれるのですう。
その先に、先ほど見たと思う屋根の建物がポツリと建っていましたです。
『あれはなんなのかな?』という首塚先輩の問いに、菅原先輩は『たぶん、トイレかなにかだと思うよ^^』とあっさり答えた。
・・・本当にトイレでした^^; 厠ではなく本当にトイレット^^;
『なんでトイレだと思ったの?』
不思議そうに聞く首塚先輩。
『別にここまでは前調べしていなかったけど、今までの経験上、規模的にレジャー廃墟って考えたら多分、倉庫かトイレくらいだろうなあ~って思ってね^^』
廃墟に慣れるのも考え物ですね^^;
まあ・・・損でもないけどですうw
じゃ、見るもの見たと思うし疑問も晴れたと思っててっきりこれから帰るのかと思いきやです、
『こっち・・・こっち・・・』と、その先へと行こうとする朝子ちゃん。
そしてそれを止めない菅原先輩がいた。
『え?こっちにまだ何かあるの?』
私の疑問に首塚先輩が乗っかってくれた。
『朝子ちゃんにはちょっと驚きだけど、まだまだあるよ^^
ここの本命はむしろこの先かもしれないね^^』
なんだかすごくウキウキしてる先輩がいる・・・^^;
はて?なにがあるのですかあ・・・^^;
橋を過ぎ、幾分歩いたところで多少開けた場所に出た。
そこに、昔レジャー施設だったんだなあ~という名残りを見つけたです。
『こんな山奥にクズ籠・・・。やっぱり昔はここを行き来してた人が居たんだって実感するわね^^;』
『このコーラの年代はよくわからないけど、ビールの缶は1990年代のヤツだね。でも・・・そこまでこの天神山城って観光でやってたのか少し疑問かも』
古びた缶を見つめながら納得行かないような表情の先輩。
後から廃墟に持ち込まれることは多いことだと、先輩と旅していて覚えたことです。
でも、それでも20年以上は経っている代物だってことなんですね^^;
途中には施設の廃材みたいなのも横たわってましたです。
『なにあれ?やぐらかしら?』
『なんだろね?監視所かなんかのあとかな???』
ここでもう廃墟めぐりも終わりかな~なんて思ってたら、まだまだ先へ行こうとする先輩+朝子ちゃん?
仕方無しについていく・・・
ここでふと不思議に思うことがあったのです。
藪を抜けた後に広がるキレイな半月状の広い道っぽいのが続いてることに。
『なんかこの道っていいますか道かどうかわからないんですが、山を削ったようなとこのような気がしますですう^^』
『うん、たぶんこれはと言うか、これこそ本当の昔の名残りなんだと思うよ^^
自然に出来た感じはしないよね。
多分これは竪堀の名残りかも^^』
・・・竪堀?
『簡易な堀みたいなものかな。すごく簡単に説明しちゃうけど^^;
敵の侵攻を一時でも妨ぐためのものだと。自陣の城周りに壁を作るよりも掘り下げて壁を作ったほうが手間もかからないしね。
大きくない城跡には特に多くある感じかな』
(他にも色々あるのですが、簡略させてください)
コンクリートの成れの果て以外で、ようやく城跡だったんだなあと思えるものに遭遇?したのかもですう。
昭和に別物を立てて、結果として過去すらおざなりにされてしまったような先ほどの建物にくらべて、私はちょっぴりこの場所があったことにホッとしちゃいましたです^^
---すると、
竪堀横の眼下に小さな建物の屋根が再び見えてきたのです。
どう考えても昭和です。もしくは平成です。
『お、なんだろ。せっかくだし寄ってみよう^^』
嬉しそうに小さな崖を滑り降りていく菅原先輩。
恐る恐るズズズーっとすべって付いていく私たち。
ちょっと先輩に追いつこうと近づいた時にーーー
『ちょっと待った!来ちゃダメだ!』と、怒気をはらんだ声で制されたーーー
うううー・・・先輩に強い口調で言われたの久しぶりですう・・・^^;
『えっと・・・どうしたの?菅原君』
首塚先輩が躊躇しながらも窺う。
も、もしかして・・・何か見てはいけないもの・・・を!?
『いや、コレがいっぱいあるから・・・^^;』と、先輩は周りに生い茂る草木をぐいっとツマミ寄せて私たちに見せたのです。
『すごい・・・棘・・・』
朝子ちゃんがソレをマジマジと見つめてる。
ううう・・・無闇に先輩の方に突っ込んで行ったら、刺さりまくりでしたです^^;
『簡単に藪につっこんじゃダメだよね^^; おかげでちょっと血だらけだw』
いやいやいや・・・笑ってる場合じゃないけど、ありがとうございます^^;
『とりあえず、藪を進む時は草木の根元を踏み込んで倒しながら進んでいくのがモアベターだ^^』
そう言って、藪に囲まれている小さな小さな小屋まで、先輩が棘のある草を踏み倒してくれたです。
私たちはその後をなにごともなく行けた訳ですーーー
そして、そのなんでもなさそうな小屋で私たちが見たものはーーー
次回に続きます・・・
おはようございます。
自然のバリケードが・・・最後足元には残雪?
いよいよ佳境にですね。
雪が積もり始めました。
by YUTAじい (2013-02-06 06:47)
コーラ60円ってw
時代を感じさせますねぇ。
by まめ (2013-02-06 07:19)
観光名所だったのかな?
20年位前まで現役ってか。。
空き缶 懐かしい産物ですね(^^ゞ
by DON (2013-02-06 08:34)
トイレがこわかったです。(ビビリw
コーラ60円っていつの話ですか!!!?
by 今造ROWINGTEAM (2013-02-06 09:31)
ちょいのりさん、
暖かいお言葉をありがとうございました。
それにしても、謎が謎を呼ぶ展開と、
不思議な少女の「朝子」ちゃんですね。
by kiyo (2013-02-06 09:51)
年期がはいった空き缶ですね。60円って・・・。
あのトイレは使えそうですがかなり勇気が必要でしょうね。
by みぃにゃん (2013-02-06 09:54)
トイレのポットン落ちていく先の中はのぞかなかったのかな・・・それとも写真をとるのも、語るのもはばかられる何かが・・・!?
by 駅員3 (2013-02-06 10:21)
モアベター、小森のおばちゃまを思い出しました。
by johncomeback (2013-02-06 10:27)
なぜ 急に ここに現れたのかが問題ですね。
by サンダーソニア (2013-02-06 10:27)
ひえぇ・・・怖いよ~(汗)
朝子ちゃんも何だか怖いし・・・(@@;)
続きはどうなるのかっ・・・!!
しかし60円のコーラ 覚えています(爆)
by 獏 (2013-02-06 10:28)
コーラお試し価格¥60って^^;
そっかぁ、観光目的で作ったお城なのにあっさり廃墟と化されちゃった場所だったんですねぇ(>_<)
そういえばバブルがはじけた頃はそういう話がたくさんあったような・・・(-_-)
by ニッキー (2013-02-06 13:44)
こういう場所って結構ありますよね~
以前にクワガタ採りに熱中してた頃に山奥で昭和の遺構に出くわしました。。。
怖いけど面白かったなぁ (^^
by 風太郎 (2013-02-06 15:39)
朝子ちゃんも何だか怖いねぇ~
小屋では何を見たんだろう???
by miwa (2013-02-06 17:39)
この後に何が起こったのかなにを見たのか?
どんな展開になって行くのか待ち遠しいです。
by 馬爺 (2013-02-06 18:15)
北海道でも某地に観光目的で
お城のような建物や巨大仏像を作っているところが
あるんですが、あまり繁栄する事もなく・・・
いつかこのような光景にならないように願うばかりです。。。
by 銀狼 (2013-02-06 18:55)
この「今ならお試し価格¥60」コーラ、つい最近どっかのサイトか本で見たような気が…(たぶんオブローディング系だったと思う)^^;
それよりもあの天守、戦国時代のホンモノを再現したんですかね(・・?)
なんだかいかにも“城”っぽいものをテキトーに建てた気がしてならない…(・_・;)
by 下総弾正くま (2013-02-06 21:42)
次回は怖い話?
夜だとトイレ行けなくなりそうだからw
by DEBDYLAN (2013-02-06 23:02)
なんだか,次回は見ちゃいけないような気がする・・・
私はこういうものに弱いんですよね.霊感があるのかも.
もし,次回の記事が見てはいけないものだったら,教えてくださいね.
by 唐津っ子 (2013-02-06 23:12)
あ~続きが気になりますよぉ!
っていうか、屑籠のなかのポカリだけ
妙にきれいな気がします^^
by みずき (2013-02-06 23:20)
人工的に作って、ある日廃墟に。。。
その際資料など置き去りのものも。。。
なんかいろいろ考えさせられますね。
by リン (2013-02-07 05:29)
え!何を見たの~?気になりすぎます~。
by macinu (2013-02-07 06:35)
昔の空き缶☆
そういうのがそのまま残ってるんですね!
次の展開がまたまた気になります~!!
by haku (2013-02-07 07:43)
久しぶりです
ご来訪あしあとコメント有り難うございます^^
by さーやん (2013-02-07 08:27)
親指の傷は仕事で?
by サンダーソニア (2013-02-07 09:07)
懐かしいぼっとん便所^^;
これから先は何か恐いものが出てくるのかにゃ(・_・;)
by 美美 (2013-02-07 20:34)
やっぱりサークルだけあって、いろんな知識を持ってるんだなぁ、と、
竪堀のトコの説明を読んで思いました^^;。
by sakamono (2013-02-11 18:01)