第571話 稲取・はさみ石編vol①『石と意志と意思とっ!』稲取廃病棟・旧135号線・トモロ岬・はさみ石 [廃村さーくる]
『・・・せ、先輩の吐息が・・・近い・・・ですぅ!?』
・・・寝てる・・・のかな?
・・・寝てる・・・よね?
私の鼻先にスースーとほんのり熱のこもった寝息が当たる。
その距離、わずか数センチ。
私は突然のシチュエーションに声をあげようと思ったのでしたが、
口に手を当ててそれを思いとどまった。
・・・もし、手を口に宛がうのがもう少し遅かったなら・・・
恐らくたぶん・・・私の声で起こしてしまうところだった。
・・・フフフ
ちょっと口端からこぼれているよだれが子供っぽい^^
可愛らしいとも思えた。
先輩の寝顔とか、こんな間近で見れるのははじめてかも。
普段は見れないシチュエーションを私は楽しむ。
フフフ♪
---私は先輩の寝顔を見ながら今日のことを思い出していた。
嬉しかった♪
楽しかった!
第571話スタートですぅ☆
『久しぶりに行って見る?夕実ちゃん^^』
6月におこなわれる伊豆稲取の『どんつき祭り』
えっと・・・ちょっとえっちい感じの御神輿とか出る奇祭なのですが^^;
今年は菅原先輩の実家の方々が一部を取り仕切ることになって、
前段階ではあるのですが猫の手も借りたいとのことで、先輩がある休日に呼び戻されることになったですう^^;
私は里帰りと言う名目で、先輩に一緒について行ったのです^^
『うへえ・・・^^; どうやらこれから休日のたんびに実家に帰らないといけないみたいだよ夕実ちゃん^^;』
『おつかれさまですぅ^^;』
そう言いつつ部会が行われた公民館から出てきた先輩に私は缶ビールを手渡す。
『お!いいね~☆アリガトウ^^ ・・・せっかく里帰りしたってのに、あーだこーだの長々とした話ばっかでヘトヘトだよ^^;
癒しなんてまるで無いもんねw』
先輩はプシュッとプルタブを傾けて、一気に喉へとそれを押し込み、
ぷはー!と満足そうに唸った後に私にボソリと呟いた。
『海見ながら飲みたいね^^ そうだ!久しぶりにアソコに行ってみない^^』
アソコがどこかは直ぐに分かった。
そこは私の思い出の場所。
先輩は別段、特別な場所とも思っていなそうだけれど、
私にとっては大切な場所だった。
『流石にお酒飲んでから行くのはヤバイから、明日、東京に帰る前に寄ろうか^^』
次の日のお昼過ぎに駅前で合流しようとの約束をして、私たちはバイバイをし、それぞれの家路へと帰った。
『こんな石、駅に飾ってありましたっけ?わきゃー・・・^^;』
次の日のお昼。早めに駅に着いて駅構内をブラブラしていた。
そこに学生時代まで利用していたはずの駅舎内に見慣れぬパワーストーンなるものを見つけて、さすさすしていたら先輩に声を掛けられたのですぅ。
『ボク達が過ごしてた頃にくらべて、だいぶ変わったよね^^ こんなの無かったもん。
でもどれどれ?へー、ふーん。なんでも厄災から身を守るご利益があるらしいし、摩っておこうよ夕実ちゃん^^』
結局2人でこの赤石を一生懸命にさすさすさすさすですぅw
『あら?可愛らしいカップルさんね~』と、通りすがりの観光客さんらしき老夫婦さんに呟かれたのは、私としてはちょっと嬉しかったです^^(先輩は照れて、さすさすやめちゃいましたが^^;)
『帰りの踊り子号の時間までそう時間が無いし、今日はタクシー使っちゃいますかw』と、菅原先輩がタクシーでの移動を提案してきた。
私は別に先輩と一緒に行動できるならばなんだって構わないです。
『そうですね^^』と頷いて、2人してタクシーに乗り込んだのです。
『夕実ちゃんとここに来るのは久しぶりだね^^』
国道135号線の友路トンネルの入り口を見据えつつ、背中越しに私に語りかける菅原先輩。
---そう、
ここは先輩と出会って、そして私を救ってくれてから何度も通った場所だった。
中学の頃から高校生になるまで、ことあるごとに出向いてた。
私と先輩と、そしてたまに琴音っちとで。
先輩と同じく通う高校『稲取高校』は、
ここからそれ程遠くない場所だったので、放課後にたまに出向いていたのです。
東京に出てきてからは行かなくなっていたのですが、
先輩の廃村サークルに無理矢理・・・押しかけて、初めて廃墟らしい廃墟に連れて行ってもらったのが、
ここからすぐ近くの稲取廃病棟跡だったりですぅ。
・・・かって知ったる場所に何故連れてくのよ^^;とはちょこっと思いましたけどね。当時はw
とはいえ昔は『廃墟が目的じゃ無かったんです』
ぶっちゃけ廃墟なんて興味ありませんでした。
私たちの目的は、いつも『それよりも先』だったのですからーーー
トンネル脇の藪に囲まれた、かろうじて道なんじゃないかな?と思うスペースへと身を乗り出す。
するとすぐそこには---
木々に囲まれた廃屋がお出ましするのですぅ。
ここが後に伊豆では屈指とその知名度を知ることになった、稲取廃病棟跡の玄関口。
キモイなあ・・・と思っていたけれど、当時はただの『通過点』くらいにしか思っていなかったですぅ。
私たちはその脇を通り、先を急ぐ。
名前も分からない白い花々が咲いた小道を進むと、森に囲まれた病棟跡の本体へと導かれるのです。
ここで私は廃村サークルの“はしくれ”として、先輩に聞いてみた。
『先輩? 今日は病棟跡に寄らないの?』
『うん。今日はいいんじゃないかな~^^』
嬉しい!
普段の先輩なら絶対に寄るはず。
寝ても冷めても廃墟廃屋ぅ~人間だと思ってたから。
彼が例え意図していなくても、この先にある私との思い出の場所を最優先に考えてくれてるんじゃないかと私は喜んだ。
・・・のもつかの間。
『やっぱ久しぶりだし、チラッと見ておこうかなあ~w』と、私を置いてけ堀でカメラを構えて練り歩く先輩がそこに居た^^;
『中には行かないから^^ 外だけだから安心して☆』と、外観を舐める様に探る先輩^^;
まあいいでしょ。血が騒ぐのも仕方が無いですしね^^;
それも含めて彼が好きなんですし私。
満足した先輩に引き連れられ倒れた枯れ竹を潜り抜け、小道を下っていく私。
世間に忘れ去られたコンクリの道を進むと、やがて
崖へと突き当たる。
私たちは当たり前のように右手への道無き道へと向うのでした。
ここは『旧・135号線』
昭和53年の伊豆大島近海地震(M7.0)による地盤の崩落で失うことになった国道であるのですぅ。
ここ、静岡県は伊豆半島・東伊豆町に甚大な被害をもたらした最悪な自然災害。
特異な事に、近隣の天城山中に構える鉱山の廃液処理施設がこの影響により決壊し、猛毒のシアン化ナトリウムの排水が河川に流れ込んで海水汚染を起こした、
世間的には知られていないけれども、日本でも屈指の自然と人工の複合災害だったとも言われていますです。
その結果的に捨てられてしまった旧国道を私たちは草木を手で掻い潜りながら、
そして思い出しながら進む。
途中、視界が開けるですぅ。
景色は多少違えど、何度も訪れた思い出のままの世界。
私たちの場所(私だけがそう思ってるだけなのかもしれませんが・・・)は、ここからすぐそこです^^
『懐かしいね^^』と、先輩が旧国道から横道に逸れたのを確認して、私もそれについていく。
小道へと進むとすぐそこは『崖』
そこにかけられる一本のロープ。
(一応、複数本ありますがお話の都合上一本でw)
私と彼は、そのロープに体重を委ねつつ、ゆっくりと足場を確認しつつ無言で降りていく。
この先にある『思い出の場所』
本来なら地元の観光案内の看板にも載ってる立派な『名所』
---でも、実は気軽な観光目的では
決して辿り着けない至難な場所でもあったりするのですぅ。
・・・おかしいな?
子供の頃は、全然へっちゃらで下っていたはずの崖なのに、
高校生の頃は先輩と2人きりになれるからと、学生服のスカートが汚れても、まくれあがっても平気と下っていたふつーの崖だったのに!
今はとても怖くて急な崖。
『そこに脚をかけて休もう。・・・落ち着いていこうね』
先輩に促がされつつ、途中途中、しっかりした足場に体重を寄り掛けてストップ&ゴーの繰り返し。
・・・昔はこんなに時間掛からなかったはずなのに・・・
・・・昔はこんなに怖くなかったのに・・・
---やがて
釣り人のためか保安林の職員さんの為に設置されたのか分からないロープの終点と共に、しっかりとした岩の足場まで降り立った私たち。
『久しぶりだね。はさみ石。あとちょっとだね^^』と、先輩は遠くに見えた岩を指差した。
私は目の前に広がる景色に、とても懐かしい匂いを思い出したのですーーーー
次回に続く☆
ここまで読んでくださりありがとうございました^^
しばらくブログから離れてしまいましたが、そこはご了承・ご理解を^^
ではでは次回で伊豆・稲取の魅力を
そして冒頭での夕実ちゃんがどんな状況になっているのかの答え合わせは次回と言うことで^^
訪問・お返事等々は随時行かせていただきますですw
はさみ石ってこんな険しい所の先にあったんですか!
伊豆は釣りも随分したけどポイントに到着するまで大変なんですよね。。。
続きに期待!
by 風太郎 (2013-05-20 08:24)
来月は 伊豆で試合があって 前泊します。
by サンダーソニア (2013-05-20 08:28)
またまた一気に読んでしまいました。
鬱蒼とした木々の間に残る木造の病院跡。ドキッとします。
by orange (2013-05-20 08:37)
伊豆稲取・・・はるか昔に訪れたことが・・・・でも
既に忘却の彼方・・・・(@@;)))
しかしマムシがでしょうな斜面・・・怖~(@@)
by 獏 (2013-05-20 08:52)
秩父の会社の新入社員だった1982年の夏、
社員旅行で稲取のホテルに宿泊しました。
北海道から出てきて初めての伊豆、海水が暖かい
のに驚いた覚えがあります。
by johncomeback (2013-05-20 10:24)
現状のロ-プがなければ、たどり着けない様な険しい場所なんですね。
もし何か遭った時は、携帯とか繋がるんですか~
想像しただけでもブルブルしちゃいます。
by ちゃめこ (2013-05-20 12:38)
行くのも大変、帰るのも大変な場所ですね・・・。
地元の人しか分からなさそうな道だし(汗)
ついでに高所恐怖症なので、がけ下りるとか無理ですわw
by しきみ (2013-05-20 13:25)
伊豆稲取・・・何度か行ったことがありますがこんな観光名所があるとは全く知りませんでした(@_@)
今度この場所探してみよう(^O^)
by ニッキー (2013-05-20 16:21)
稲取は時々行きますが私は草パラ葉行きませんなぜならニョロさんが出てくるからです。
by 馬爺 (2013-05-20 18:09)
ちょいのりさん、
久々でしたが、楽しみでお待ちしていました。
伊豆の稲取は、もう、だいぶ廃れてしまったけれど、大事な中伊豆の拠点ですね。
伊豆に、もっと、元気になって欲しいです。
by kiyo (2013-05-20 20:52)
まさかのロープ…リポDの世界ですな…(・_・;)
by 下総弾正くま (2013-05-20 21:18)
おぉ、いよいよクライマックスにむかって行きそうな予感。。。
次回の展開が楽しみです^^♪
by 銀狼 (2013-05-20 22:29)
こういうとこって、草で見えないけどくぼみが
あって、突然落っこっちゃいそうな感じがします。
昔、近所にあった空き地がそうだったんですよね^^;
by みずき (2013-05-20 23:41)
おはようございます。
導入終わり・・・楽しみです、
by YUTAじい (2013-05-21 07:05)
廃屋もさることながら、廃道もなかなかの雰囲気があって良いものですね。
by 駅員3 (2013-05-21 07:43)
稲取金目食べたくなりました~!!写真有ったらUPお願いします~(^O^)v
by macinu (2013-05-21 10:33)
すごい道のりですねぇ・・・
思い出の場所にたどり着くのも大変そうですが、
愛のためならなんのその、ですね。
by まめ (2013-05-21 11:45)
病棟の廃墟って、なんだかうすきみ悪いですね。
by ひでほ (2013-05-21 13:05)
ロープ途中でぷっつりいっちゃうんじゃないかと
冷や冷やしながら見ていました(^^;
凄い廃墟も残っているものですね。
by 美美 (2013-05-21 17:13)
2周年のお祝いのコメントありがとうございました。
3年目もエロッキーの巻登場させたいと思います!!
by みぃにゃん (2013-05-22 00:17)
こいうオモヒデの場所って
おいら無いから うらやましいな〜
ゆうみっちが健気でかわいいな〜
by ねこじたん (2013-05-22 07:24)
ここを暗闇に歩ける勇気は持ち合わせていない。
さてさて・・。
by マーブルチョコ (2013-05-22 23:14)
地元の物語っすね!!
昭和53年の地震・・・
すっかり記憶から消えてました^^;
by DEBDYLAN (2013-05-22 23:19)
ご訪問&コメントありがとうございます^^
凄いところに行かれたのですね..(^^;)
by alba0101 (2013-05-23 14:58)
初めまして、コメント有り難うございました。
メチャ面白い内容なんですね。伊豆が舞台になっていると私の知らない部分が多々あって興味津々です。
地震も怖いですが最近では原発の影響が一○湖周辺まで及んでいた事ですかね。。。
by JR浜松 (2013-05-25 16:58)
地震で、そんな大きな事故があったなんて、知りませんでしたよ...。
by sakamono (2013-05-26 13:10)