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第650話 埼玉秩父・鹿の湯編☆vol②『小川に朽ち行くランプの宿』秩父七湯 [廃村さーくる]

※読まれる方達へのお断わりです。

 この先、心を痛める風景が画像や文章などで羅列することになります。

 勿論、記事を書く側としてもなるべく配慮をしていますが・・・

 物語の特性上、やも無しの表現もございます。

 それでもよろしければ・・・お付き合いの程を

 第650話。スタートいたします。

第650話・琴音・ランプの宿2.jpg

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 ボクは一歩一歩と歩を進めるたびに、その有様に驚愕した。

 何に驚愕したって?

 

 ---実はここに訪れるのは『二度目』だった。

 

 夕実ちゃんや琴音には初歴訪を装ってはいたが、

 その一回目に訪れた時からは見るも無残な姿に驚いてしまったからなのだ。

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『わきゃ・・・・・・』

『・・・・・・・・・』

 ボクの後ろからこの景色を見つめる彼女たちからは、声と言う声が無かった。

 唖然というか呆然。

 今まで彼女たちを連れ出し、いくつもの朽ちた廃墟を見て周った。

 だからこそ彼女らにはいくらか廃墟・廃屋には免疫力はついているとも思うんだ。

 でも、彼女たちの顔は・・・強張っていた。

 

 ---暫くの後

 琴音がネックウォーマーから口元を出して声を掛けて来た。

『お兄ちゃん。・・・ここは、廃墟と言うより瓦礫じゃ・・・ね?』と。

 

『うん。そうかもな。これは持論なんだけれど

 “廃墟”ってのは“辛うじてでも立っている建物”って思ってるんだ^^;

 だからこそここは・・・優しく言って“廃墟の成れの果て”。

 むごい言い方すれば・・・お前の言ったとおり・・・“瓦礫”・・・だとボクも思う』

 琴音は我の強い性格もあってか、口を噤むのも踏ん張って我慢して声を掛けて来たのだが、

 夕実ちゃんは無言のままだった。

 ここに訪れて脳裏に一瞬よぎった、先の震災の瓦礫の山を思う光景。

 彼女もまた、同じ事を思ってしまったのかもしれない。

 もしくは、かつて彼女が母親と実家を炎の向こうに失った過去をフラッシュバックしたのかもと、

 彼女を見て申し訳ない気持ちになった。

 

『このまま帰ってもいいよ?たぶん見るべきものは何も無いと思うし。

 でもゴメン、少しだけ見させてくれないかな^^;』と、ボクは琴音からカメラを受け取り、彼女たちに少し時間を頂いて見て周ろうと思った。

 むしろ危険度はかなりのものだし居てくれた方がいいと。

 ---すると、

『周りから覗き込む程度には付き合うよお兄ちゃん^^;』

『私も・・・一人でここで待ってるのも怖い・・・ですぅ^^;』と、ある程度のところまでならばという前置きをした上で、ついてくると言い出したのだ。

 ・・・絶賛崩落中の物件。

『ボクがダメだと言ったら絶対守ってくれるなら・・・^^;』という条件で、ボク達はこの廃墟へと近づくことになったんだ。

 

 ---とはいえ、玄関口であったところであろう場所は崩落し、しかもその奥への回り道すら瓦礫で塞がれている状態だ。

 後は母屋と離れの間に流れる小川を越えて、離れの家側から回りこむしか方法が無い。

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 考えた末、結局、小川を渡るルートで行くことにした。

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 丁度、橋渡しになっている木材の上を充分に確かめつつ、離れのある向こう側へと皆で渡った。

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 そこからは、流石に手を地面に這わせなければ登れないほどの丘になっている。

 ここは皆、慣れのおかげか軍手の準備も万端で、嘆きながらもぶつくさ言いながらも(全部、琴音だが)

 土や草木を掴んで登っていった。

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 ようやく丘の上に建つ離れの近くまで到達。

 そこからはゆるい勾配。

 息を切らして登ってきた心臓を幾分か整えてから、離れに近づいた。

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『完全に・・・ぺしゃんこですぅ・・・』

 地面と屋根との僅かな隙間をおっかなびっくりで覗いた夕実ちゃんが、悲しそうにボク達に振り返った。

 

 もちろんこの状態では見るべきものも無いので、もう離れは充分だ。

 ---ボク達は母屋より少し高台であるこの場所から川向こうの母屋を見下ろして、

 母屋に近づけるであろうルートを模索する。

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 ---すると、崩れた母屋側のバルコニーが、小川の上を渡すように崩れ落ちていたのだ。

 ここからは

『ここで待っててくれないかな^^;』と、彼女たちに止まるように説得し、ボクだけでこの先へと向うことにした。

 流石にこの崩落の有様を見たらついて行こうとは言わなかった。

 むしろ『もう帰ろうよお兄ちゃん・・・』『先輩になにかあったら嫌ですぅ!』と、とことん逆説得を喰らったくらいだ^^;

 ・・・なんとか彼女たちを『5分くらいだからゴメンネ^^;』と、なだめすかして、ボクは枯れ枝つたいにバルコニーまで進んだ。

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 ようやく手すりにしがみつく。

 ここからはコレを頼りに向こう側へ行こう。

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 ここでふと気づく。

 バルコニーで見えなかったのだが、小川を挟んで建てられた母屋と離れの瓦礫が

 山からか細く流れてきている小川へと雪崩れ込み、

 小川を埋め尽くしていた。

 ここからは丈夫そうな瓦礫の上を伝って向こう側へとなんなく行けることになったのです。

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 母屋の入り口側からでは分からなかったのだが、その母屋の奥の方は”かろうじて“柱に支えられて生き延びていた。

 とは言え崩落寸前。

 上を気にしながらも見て周る。

 何か・・・ここが『かつて何の為に存在していたか』の痕跡を探す為に。

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 トタンの部分や白木の部位、家屋のつなぎ目に、ここは増築を重ねたのかな?と思いつつ、

 ネコの様に足音立てず、

 息を殺して更に更に周りをめぐる。

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 結局、崩落の凄まじさに痕跡という痕跡を見つけることは出来なかった。

 あるのは腐錆びた瓦礫のジャングルと、そこに霜降りるツララだけだった。

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 --ーふと、

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 屋根が朽ち果てたとはいえ、屋内にしては『不思議』な感じの、石の階段を見つける。

 ここはどうやら母屋のお勝手口から延びてるであろう階段なんだろうか。

 

 残してきた彼女たちとの約束時間をとうに過ぎていたことに気づき、ボクは急いで。

 いや、落とし穴でも足先で探るように慎重に彼女たちの元へと戻ることにしたーーー。

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 彼女たちと再び合流し、この廃墟というか瓦礫前まで戻ってきた。

 そこまで来て、彼女たちはまるで息を止めて我慢していたかのように、プハー!と深呼吸をし

 そして、ボクに色々と質問をしてきた。

 

『ここって、なんなのさ?お兄ちゃん。普通の家屋じゃないんでしょ?マジでさあ^^;』

『うん。ここは民家じゃない。

 実は“鹿の湯”と言う、かつて秩父七湯に数えられた温泉旅館だったんだ』

『温泉旅館の・・・成れの果て・・・だったですかぁ・・・』

 

 ・・・何も彼女たちに告げずにここに連れまわしてしまったことを詫びてから、ボクは今一度、この温泉旅館のことについて話し始めるのでした。

『ここはね、さっきも言ったけれど秩父七湯と言う、江戸時代ごろから秩父にはこの温泉アリ!と謳われた温泉のひとつだったんだよ^^

 昭和に入ってからも、この近隣の山である“熊倉山”を目指すハイカーや登山客に利用された憩いの宿屋だったんだ。

 かつては茅葺の屋根に部屋数は10程度のこじんまりした旅館だったそうだ。

 そこには各部屋に、ぼんやりと揺らぐランプが灯されていて

 ーーー暗がりの寒山にボーっと浮かぶそれはまるで情緒的な温かい感じのお宿で愛されていたらしいよ^^

 別名“ランプのお宿”と言われ、ハイカーなどを問わず地元民から色々な旅行者に親しまれてきた旅館だったんだって^^

 ・・・が、平成を迎えた頃にオーナーであるおばあちゃんが亡くなられたことで、そのまま廃業に至った。

 つまり“廃温泉旅館”なんだ』

 ボクが説明したこの鹿の湯のおおまかな話を聞きながら、

 彼女たちは向こうに見える廃墟を無言でぼんやりと見つめていた。

 しばらくして琴音から口をボクに向ける。

『平成の時代に廃業ってことは20年弱かあ。私とほぼ同い年ってことっすね。

 お兄ちゃんと私の実家はもっともっと古いんだけど、この有様を見て私ってば建物って不思議に感じるよ』

 ・・・一瞬、琴音が何をここと自分の実家を見比べて不思議に思ったのか考えあぐねたが、すぐに分かった。

 琴音が更に言葉を続ける。

『建物ってやっぱり生き物だよね^^ つくづくそう思うっす』

 

『そうだな。本当にそう思うよ。人が勝手に建てた無機物の集合体なんだけど、

 人が住むことで血が通う生き物だとボクは思ってるよ^^

 掃除しなくったってメンテナンスしなくったってさあ、人が居るだけで建物ってのは不思議と長らえるんだよ。

 建物にとって、人ってのは“血”なんだと。

 建物にとって、人こそ“血流”なんだと思うね^^』

 皆、なんとなく、うんうんそうだよなあ~と頷く。

 頷いたところで、ここで申しわけない感じで彼女たちに告げる。

『今回は少し心に詰まってしまうような場所に勝手に連れ出して申しわけない^^;

 その見返りといっちゃ~なんだけど、

 この後はさっそくお待ちかねの“日帰り温泉”へ皆でいこうか^^

『『賛成!!!』』

 かくしてボク達は、ここまでの道中にあった『谷津川館』と言う、

 これまた古き歴史のある温泉旅館へと向うことになったのである。

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 ・・・が!

『おい!こら!お兄ちゃああああああああん!

 日帰り入浴時間オープンまであと二時間もあるんですけどマジでっ!』

 

 現在時刻・・・9時半。日帰り入浴施設オープン時間までまだまだ2時間も前だったのである^^;

 ・・・一応、『2時間そこいらへんをブラブラして暇つぶししようかw

 テヘペロ(。>ω・。)』って感じでゴメンナサイしたのですが、

 余計に怒られてしまいました(そりゃそうかw)

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 結局『来週の休みに、この埋め合わせとして“スノボー”に連れてけ(旅費+リフト代込み込み^^;)』と言う、彼女たちの要求を飲まざるをえなくなってしまうことに・・・

 まあ・・・しょうがないか^^;

 ほぼ騙すように連れてきちゃったようなもんだしねw

 その見返り・罪滅ぼしは想定よりも非常に大きくなっちゃいましたが^^;

 

 ---さて、ボク達はこのまま地元に素直に帰ったかといいますとーーーー

 そうじゃない☆

 次回『寂しげな弾薬庫跡編』へと。

 そして今回の『災難』へと続いちゃったりします^^

 

※ここまで長々と読んでくださりアリガトウございました^^

 ロケハン兼ねて久しぶりにスノボーでもしてこようかと?思ってますw

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nice!(103)  コメント(25) 
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コメント 25

ナビパ

人工物の朽ち果てて行く悲しみってあります。
何かさみしさを覚えます。
by ナビパ (2014-02-07 06:06) 

獏

どんな粗末な建物でも人が住んでいると
不思議と生気があって持ちこたえるものですが
無人になると建物の魂も抜けてゆくのか
あっという間に朽ち果てるような気がします。。。

by 獏 (2014-02-07 06:29) 

YUTAじい

おはようございます。
かなり危険な状態ですね・・・大冒険お疲れ様、怪我無くて良かったですが。
by YUTAじい (2014-02-07 06:40) 

YUTAじい

追伸
メール送信・・・エラーに?
by YUTAじい (2014-02-07 06:49) 

johncomeback

秩父七湯、知りませんでした。
僕が秩父に居た頃は、ギリギリ営業していたのかな?
あの頃は温泉に興味なかったからなぁ、住んでいたアパートの
隣も温泉宿だったけど、一度も行かなかったなあ(笑)
by johncomeback (2014-02-07 07:39) 

まめ

ここまで見事にぺっちゃんこな廃墟跡は見たこと無いですね。
スノボですか?二日後の筋肉痛になりませんようにw
by まめ (2014-02-07 08:03) 

ソニックマイヅル

おはようございます。廃墟を見ますと生活されていた当時はどんな感じだったのかを想像します。^^;
by ソニックマイヅル (2014-02-07 08:52) 

ねこじたん

スノボ おいらもいきたい〜
つれてって〜
by ねこじたん (2014-02-07 08:56) 

みぃにゃん

完全に瓦礫ですね。なぜこのまま放置されてるのか気になるところです
by みぃにゃん (2014-02-07 09:47) 

サンダーソニア

山奥だと片すのも大変なのでしょうね。
by サンダーソニア (2014-02-07 11:46) 

kiyo

ちょいのりさん、
江戸の頃の名湯も、時代の波に勝てなかったのでしょうね。
2000年を前後を境にして、全国の多くの老舗が廃業・倒産に至っているケースが多いです。
昭和の時代を生き延びて、しかし、平成の途中で脱落してしまうケースが多かった。
それだけ、バブル崩壊から連なる世間の不況が厳しかったのでしょうね。

もう少しだけ、平穏な世の中であったらば、もっと長く続いたかもしれませんね。
と、思うお店も多いハズですが、この秩父の名湯もそんな1軒なのかもしれません。

by kiyo (2014-02-07 12:13) 

koh925

廃温泉旅館に残る・・雪!
一層、寒々と感じますね、昔は温泉で暖かかったでしょうね
by koh925 (2014-02-07 16:17) 

馬爺

秩父だけではないですよ伊豆にもこんな所が沢山ありますね、かって黄金風呂で有名な船原温泉も今は見るも無残に廃墟化しております。
其れとか別荘地などもやはりこんな状態ですね。
今後はどんどんこんな現象が続くんでしょうね。
by 馬爺 (2014-02-07 17:28) 

足立sunny

鹿の湯、でしたか。
20年前に秩父観音霊場めぐりをして、たしかこのへんの温泉旅館に泊まったのですが、そのときは、まだパンフレットにあったような・・・。
受け継ぐというのは、難しいですね。

by 足立sunny (2014-02-07 19:41) 

下総弾正くま

建物も、道路や鉄道も、人の手が入らなくなると途端に朽ちていきますね…(・_・;)

ある一線を越えると、やっぱり心苦しいものがあります…(・_・;)
by 下総弾正くま (2014-02-07 22:42) 

ニッキー

江戸時代から栄えてた温泉旅館も経営される方がいなくなるとこんな寂しい姿に(>_<)
人がいるってだけでこんなにも違うんですね(*_*)
by ニッキー (2014-02-07 22:45) 

みずき

20年くらいでこんなになっちゃうんですね。
都心と山中との違いでしょうかね。
by みずき (2014-02-07 23:22) 

orange

移動中に拝見しましたが、もう一度^^
大変な廃屋ですね。自然の力。ジワジワ人が入り込んでも、その人の温かさが消えた途端に...また自然が押し寄せてくる。
災害現場かと思うほどの荒れ果てようですね。
足元にお気をつけください。
by orange (2014-02-07 23:42) 

唐津っ子

人が住んでいないとこんなになるものかと驚きました.
秩父には秘湯があるって聞いてましたが,コレはもう秘湯じゃない・・・

スノボですか?
私はウインタースポーツ全般が苦手というかやってないので・・・
バブルの頃,アフタースキーには憧れたけど(汗)
by 唐津っ子 (2014-02-07 23:49) 

いそいそ

住む人がない廃墟を自然が取り返そうとしているように見えます、やっぱり自然の力にはかなわないですね。
by いそいそ (2014-02-08 10:36) 

駅員3

ええっ、まだ続きが・・・しかも弾薬庫!!
これは楽しみ(^^)
by 駅員3 (2014-02-08 13:22) 

sachi

多くの人に愛された旅館ですか・・・。

住んでいなくても月に一度くらいは風通しをしないと家がダメになる・・・と言われますが、
その結果がこうなるのですね・・・。
跡継ぐ人がいたらどんなに良かったことか・・・

by sachi (2014-02-08 20:36) 

DEBDYLAN

スノボやるんだ!?
僕はウインタースポーツとは無縁っす^^;

by DEBDYLAN (2014-02-09 01:18) 

sakamono

人が住まないと家は荒れる、と言いますね。
この先、ココはどうなるのかなぁ。
気の遠くなるような時間が経って、土に還っていくのでしょうか。
by sakamono (2014-02-09 12:52) 

NO NAME

昔行きました
by NO NAME (2014-09-02 20:20) 

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