第769話 燃える石と緑の大地・西表島編☆ファイナル!『最高にして最強のタクシーおじいちゃん』電信屋(デンシンヤー)ほか [廃村さーくる(島旅)]
『私がこの商売を始めた頃は、車が右側通行でしたよ^^』
その言葉に皆の『へえ~!』『わきゃ~!』『うは~!まじっすか!?』と言うボク達の感嘆の声がタクシーの車中にこだました。
どうやらボク達は石垣島最高の生き字引のオジイチャンをゲットしたようである。
西表島~石垣島編ファイナル。
最後はボクこと菅原雄介で語ります^^
なんせボクの大学卒業旅行ですからねw
ではでは第769話スタートです。
『ワキャー!ゴーヤの苦味とチーズのコクと甘味・・・相反するものだけどいったいどんな味なんでしょう?^^;』と、
小首をかしげて悩む夕実ちゃんがソコにいた。
ソコというのは西表島の北部の石垣~西表間を結ぶターミナルである上原港、
そのご近所の飲食店さんだ^^
ボク達は船浮から白浜港に辿り着く早々、
レンタルバイクを返却しに上原港へと帰って来たのである。
ぶっちゃけるとまだまだバイクの契約時間には猶予があったし返却しないで西表島を巡ることは出来た。
羽田空港へのフライトまでもかなり余裕があったし、こんなに早くに石垣島へと戻る必要性も無かった。
でも、ボクのたっての希望で先を急ぐことにしたのです^^
最初は我がまま妹様に『なんだよーそれー^^; もっとゆっくり西表したいっす^^;』と駄々捏ねて捏ねられまくったけれども、
耳元でボソボソボソ・・・っとある目的を伝えたらーーー
『それを先に言え!バカ兄貴ぃ~ん♪』っと超乗り気になってくれやしたw
たっての希望。
ボクの目的。
それは石垣島の片隅にある小さな小さな場所。
そして妹様も納得させる場所でもあった。
『デンサターミナル』
夕実ちゃんが『デンサってどんな意味でしょうか?』って聞いてきたけれど、
デンサ(デンサー)と言うのは石垣というか八重山の『伝唱』の方言であり、
唄い・伝え・語り継がれる地元ならではの教訓歌(デンサー節)からとられたものだそうだ^^
ここのターミナル(待合所)のネーミングの一般公募の中から選ばれたそうです。
さて、船を待つ間にターミナルの席でしばしマッタリなボク達。
本当は時間があったならばお食事でもして行きたかったのですが、
それを諦めてターミナル近辺のスーパーでお土産とお弁当を購入した。
なぜかそのお披露目会が始まった^^;
『お父さんにイリオモテヤマネコの携帯灰皿買ったですう~^^』と、夕実ちゃん。
・・・随分と渋いお土産だね^^;
強面で喫煙者な彼女のお父さんにはまあ似合ってそうなお土産だけれども^^;
ボクはと言うと、ここではお土産を買うことなく、皆のお弁当を購入した。
それがコレ↓
『主婦友弁当』
妹様には『もっと西表チックな飯は無かったんかよ!^^;』って突っ込まれたが、
いいじゃないかこの地元の奥様が作ったようなネーミングのお弁当最高じゃんか☆
(※ 地元の工事現場の作業員のオジサンとかが目の前で一杯このお弁当買ってたよ?)
では文句ばっか言ってる妹様は何買ったんだよ!ってツッコミ入れようと思ったらそれはこの先の旅路を左右するとんでもない
悪行だったのです。
『くっはー! オリオンちょーうまいっす☆』とグビグビ飲んでやがッた!
おいちょっと待てやああ!
実はこの妹様の行為、今後のボクの計画すべてが
台無しでありご破産だったのだ^^;
ボクとしては『石垣島に戻ったならレンタルバイクを借りて目的地に向う』計画だったのに、
全部パーだよっ!^^;
『お前・・・この後レンタルバイクで石垣島巡りのつもりだったのに・・・^^;』と伝えると
『それを先に伝えないお兄ちゃんが世界で一番悪い!』と気にも留めないお返事^^;
確かに不覚・・・
ボクの計画は出だし早々頓挫したのである・・・。
結局出会えなかったイリオモテヤマネコさん。
このターミナルの脇にある案内板にはデカデカとその写真が載っかっていた。
ワイルドだけれど愛くるしいその姿にーーー
『わきゃー♪ いつかホンモノ見てみたいですう~^^』と誓う夕実ちゃん。
『なんか近所に歩いてそーな感じっすねw』と野生の猫を全否定な琴音^^;
スレた感じの妹様は憎憎しいコメントですな^^;
夕実ちゃんはやっぱり素直で良い子だよ^^
さて定刻通りに石垣島への高速船が到着。
いざ乗り込みます^^
西表島のほんの一部しか訪れることが出来なかったけれど、色々と濃かった旅路、何かそう思いました。
誰も手を振り返してくれる人はいないのだけれども、
ボク達は『ありがとー!』と手を振りデッキ席から西表島を見送った^^
ま、
そんな乙女回路(乙女チック)な物思いに耽るのは港を出るまでの数分なんですけどね。
後はーーー
高速船の織り成す波飛沫がロマンチックもぶち壊すくらいワイルドですw
これはこれで好物ですけどね☆
---さあここでランチタイムです。
石垣島まで就航約40分。近いようで結構遠いのです。
その時間を利用してご飯としました^^
最初は主婦友弁当をバカにしていた妹様だったけれどーーー
『うは!? スパムが入ってるっす!^^』と喜んでモグモグ☆
『がはー! こっちはチャンプルだったっすか^^; あなどれにゃい~!』とハフハフ掻き込む妹様。
『こ、これは・・・鳥皮・・・? カラッと揚げて甘く煮付けてご飯にベストマッチィィ!
安くて手頃な値段でしかも八重山っぽい食材ばかり・・・
さすが主婦友弁当や~ん♪』と、
あっさり評価を手の平返ししやがりました^^;
駅弁みたいに大それたパッケージでもない。
高級地元食材なんて入ってないよ?
地元のただのお弁当です。
でもね?
それが良いと思いませんか?
素朴でありながら地元民のお昼ご飯、ボクには素敵に思えたのです^^
---さてと、
ボク達は無事に定刻どおりに石垣島離島ターミナルへと帰って来た。
レンタルバイクが無理ならやっぱりバスかタクシーしかないよなあ・・・
でもタクシーだと割高だし・・・と、とりあえずバスの時刻表とにらめっこをする。
するとーーー
目的地までのバス出発時間は1時間後。
と言うかそもそも
目的地までバスが無い^^;
どうやらバスだと最寄のバス停で下車してから3~40分は歩くようだ。
往復考えても1時間以上。
最寄のバス停までだってここから30分だ^^;
都合よくバスが来ればいいが・・・恐らく大きく見積もっても、
全行程2時間半は見ないといけなかった・・・。
帰りのフライトまでを考えると間に合わない可能性もあるし(なんせ離島ターミナルに戻ってきたら、そこから空港行きのバスに乗らなければならないし)
そんな無茶はできない^^;
『どうするよお兄ちゃん^^;』と琴音が心配そうに声を掛けてくるが
全部お前のせいだよ妹よw
そこに『わきゃ!三人ならワリカンでタクシー使えばまだ安く済むと思いますです~^^』と夕実ちゃんが最終手段を持ちかけてきた。
うーん・・・確かにワリカンならね(それでもバスと徒歩にくらべたら高くつくだろうね)
というかそもそも目的地までのタクシー往復がどれくらいの金額なのかも分からない。
っつーことで早速、今回の戦犯である琴音に目的地までの往復はいくら?って聞いてこさせることにしたのだ。
『大体7000円くらいだって^^』と御用聞きした妹様がスタスタと帰って来た。
皆で割ればそこまで高くは無いか^^
ならば『タクシーでいい?』と皆に聞くと『『ラジャー(了解)』』と帰って来たので、タクシーに乗って行く事に決定です^^
ボクは一応念のためにターミナル内のATMで追加の軍資金を泣く泣く下ろしてからタクシーに声を掛けることにした。
『お客さん、どちらまで行かれます?』と聞かれたボク達。
『ハイ、デンシンヤーまでお願いしたいんですが^^』とボクが答えるとーーー
『ほお~、珍しいとこ行きますね^^ お客さんはそういうのお好きで?』と言うものだから
『はい^^ 石垣の川平とか綺麗なとこも好きですが戦跡遺構なんかも結構趣味なんですよ。だから今回是非ともデンシンヤーに寄ってみたくって。アハハ^^』と返したのだ。
『わきゃ?デンシンヤー???』と目的地も名前も良く分かってない夕実ちゃんはハテナマークを頭上に一杯浮かべているがそれは置いておこう。
『私も何度かデンシンヤーの入り口までお客様を送ったことありますが実際に目にしたことは無いのですよ^^ ではでは参りましょうね^^』と運転手さんは言い、タクシーをターミナルから滑らせるのだった。
見たところオジイチャンの運転手さん。
これが偶然にも素敵な出会い。巡り合せだったことにボク達は後で知ることになったーーー
『プシュ!』と後部座席の方からプルタブを開ける音がタクシー内に響き渡る。
嫌な予感がして前の座席からボクが振り向いたら
妹様が缶チューハイを開けて飲み始めていた^^;
『おまえなあ・・・^^;』と睨みつけると
『だってー、もう運転とか気にしなくていいんしょ?マジでさ^^
開放感!開放感っすよ♪』っと悪びれるのだ^^;
いや、確かにもう運転も気にしなくていいし、タクシーまかせではあるけどさあ・・・もうちっと大人しくできませんかね^^;
すると妹様、
缶チューハイとは別に購入したんだろうか?
ガサゴソガサゴソとコンビニ袋から缶コーヒーを取り出してタクシーのオジチャンに
『すんませんお酒いただいちゃってます^^ これキモチですから受け取ってくださいっす☆』とオジイチャンにコーヒーを渡したのだ。
『あは~これはどうも!どうも^^ 嬉しいプレゼントですな~♪ さっそく頂かせていただきます^^』と、信号で止まった所でグビグビと飲み干したのです。
ここで夕実ちゃんと目があった。
声には出さなかったが『こいつは世渡り上手だ・・・』と2人して頷いたのだった^^;
(※ リアルなお話ですと、ボクはもうお酒を我慢出来ませんでして・・・ターミナルでお酒を購入w
酔い覚まし的にたまたま缶コーヒーも買ったのです。
でもオジイチャンとお話合いましてですね~
自分だけお酒飲んでるのが申しわけなくって缶コーヒーをおすそ分けしちゃったって話だったりします^^
別に賄賂とか買収とかそーいうんじゃなく楽しいオジイチャンだったのです^^
今回はそのエピソードを琴音に役回りしてもらったってお話であります☆)
『こっちのほうが近道なんですよ^^』と山沿いルートを選択したオジイチャン。
正直、タクシー代が安くなるならとありがたく思った^^
そこから目的地近くの海へと出たのだがーーー
窓越しからもとても綺麗な海だった☆
信号待ちしているときにオジイチャンが向うを指差す。
『あの半島になってるところの中腹に牧場みたいな場所が見えますよね^^ あそこが目的地なんですよ^^』と教えてくれた。
なにぶん地図上とかネットの情報でしかその位置は把握していなかったので、あんなところにあるんだ!と声にする。
それに対して喜ぶオジイチャン。
まるで孫と御爺ちゃんの会話そのもの。
ボクはまるで何も知らない孫のようにオジイチャンに『ねえねえオジイチャン☆』と質問し、それに楽しく受け答える祖父のようなふうわりと温かい空間に満ちた時を過ごすことになった。
『ここが目的地最寄のバス停です^^』
石垣島の西端に突き出る大崎や御神崎まではバス路線は無い。
ボク達は石垣島の周遊道から外れ、一路最西端を目指すことになる。
民家など無い。
みるみるうちに青い空と緑の牧草地を劈く道路へと突入する。
『わきゃー☆ 海も緑も景色最高ですぅ^^』と夕実ちゃんはおおはしゃぎ。
ボクもまたその素敵なロケーションを窓越しに楽しむのだ。
妹様はと言えば・・・どちらかというとオジイチャンに対して彼女の一方通行の酔っ払い談義に勝手に花を咲かせていまして、全然景色には無関心だったけど^^;
そんな一時を過ごしつつも多分ここらへんなんじゃないかという近辺にやってきた。
だけれどもーーー
『あれ?あれあれ? ・・・たしかここいら辺だったような気がするんだけどなあ~^^;』という、
ココに来てとても頼りない言葉を言い出したオジイチャンがそこに居たw
『え!? 大丈夫っすか?^^;』と突っ込む妹様に
『なんせ滅多にここまで来ないもので><;すみません・・・』とミラー越しに謝るオジイチャンがいたのです。
そこからはタクシーのスピードを緩めて皆でデンシンヤーまでの入り口探し開始です(ほんとのお話☆)
そしてようやく見つかった!
『電信屋と書いてデンシンヤー』が^^
どうやらここからは車を止めて歩いていった方がいいみたいだった。
そのくらいそこからデンシンヤーまでは車が通るには狭い道だったのだ。
だから『じゃあ、10分か15分くらいで帰ってきますからここで待っていていただけますか?』とボクは伝えたのだ。
するとーーー
『実は私、地元民でありながら恥ずかしながら間近で見た事が無かったのです。
この入り口までは何度かお客様を御連れしたことはございますが一度も無いのです。
・・・今日は実に良い機会と思いました^^
私も是非そこまで行って自分の目で見てみたい!』と、
タクシーで細道を突っ込んでくれたんです!
正直この申し出にはびっくりした。
ただただびっくりした。
でもオジイチャンが一緒に行きたいってその言葉がとても熱くてね^^
一同『ありがとうございます!是非ともよろしくおねがいします^^』と感謝した。
っつーことで最高にして最強のタクシーオジイチャンといざ!
デンシンヤーへ突入です☆
『わきゃー^^; グラングラン揺れるですぅ^^;』
県道だったさっきまでと違ってここからは舗装などされていない。
でこぼこした細道をゆっくりとかっ飛ばす!
途中、
牧草地?
その中に、この場に何か似つかわしくない感じの『石で出来た人工物』を遠目に発見したボクは『アレは何かな?』と呟いた。
それを聞いたのかオジイチャンはタクシーを止めて『見て見ましょう!^^』とオジイチャン含めて降り立った。
残念ながらオジイチャンに遠慮してソコまで近づくのを止めたけれども、非常に面白いものを撮影させてもらったものだと今は思っている^^
さて、ここから再び乗車してその先へ!
進むにつれてドンドンと土ぼこり舞う狭き道へ。
時折『ガサガサ!』と藪草が車体を擦る程だった。
そして海岸線に近づいた所でポッカリと視界が広がった。
今回の目的地『デンシンヤー』の前に、いくらか広がるスペースにボク達はとうとうやってきたのである^^
『ではではさっそく降りましょう!』と言う、どちらかと言うとボク達よりもワクワクなオジイチャンがそこに居たのかもしれない^^
皆、気もそぞろ。
勿論ボクもね^^
打ち明けるとそこまで凄いとこではないのだけれども、ここまでのオジイチャンの熱いハートと冒険的おもてなしに、とてつもなく気分が高揚させられたって部分もあった。
『ああ~なんか下腹部ジュンジュンするっす!』と、卑猥的に感動を表現しやがった妹様にはでこピン三発おみまいしましたけどね^^;
---さ!いざデンシンヤーに参らん!
と、タクシーのドアから思い思いに飛び出したボク達とオジイチャンだったのだが、
『あ!ちょっと草とか車体に付いてると会社にどこに行ってたんだ?って怒られちゃうかもしれないので草とか払っていいですか☆』と、
オジイチャンがタクシーに付いた藪草を払いだしたのである。
・・・
・・・
・・・
もうね?
最高に愛くるしいオジイチャンでしたよ☆
ここまで素敵なタクシードライバーさんに出会ったのは初めてです!
もう茶目っ気もあって最高のオジイチャンだった♪
『電信屋(デンシンヤー)』とは?
日清戦争終結の頃に南方戦線の連絡施設として建設された建物。
戦争と言うのは『情報戦』でもあるのです。
素早い連絡網が人の生死を決める。
本土からいち早く情報を通わせる為に必要だったのです^^
明治29年の本土(鹿児島)~沖縄を皮切りに、
明治30年には、ここ石垣島を経由して領有地だった台湾島まで
『海底電信線』を敷設したのです。
・・・今で言う海底ケーブルみたいなものですよ?
この時代に凄くないですか? ボクはこの話を聞いてビックリしたものです^^
碑文を『ふむふむ・・・うむ』と真剣に見つめるオジイチャン。
そして、
『知ってはいましたが、改めて教えられましたよ』とボク達を見ずにまた『うんうん』と何度も頷くのでした。
さて、いよいよ今回のメイン『デンシンヤー』です。
『うはー!これが戦争遺構って言われなければ廃公共トイレとか思っちゃいそうっすね^^』と、とんでもなく罰当たりなことを妹様が言うもんだから・・・
こめかみをゲンコツでぐりぐりお仕置きしておきましたよ!^^;
トイレはねーだろトイレはw
デンシンヤーの海岸側には防風の為なのかな?
石垣が組まれていました。
(※ 石垣と書きましたが正確には珊瑚塀)
ここにもデンシンヤーの説明版があり、それには正式名称は
『海底電線陸揚室』であると書かれていましたよ^^
さてと、
ここからはボクとオジイチャンよりも妹様が飛びつくことになる。
なぜならばこのデンシンヤー。
モルタルやコンクリに覆われてはいるが
『煉瓦の遺構』なんです^^
『ムヒョー!煉瓦ちゅわあああ~~んんん☆』とヨダレを垂らしながら駆け寄る琴音の後を
ボク達はいささかドン引きしつつもついて行く事に^^;
(夕実ちゃんは当然ポカーンとしています^^;)
『入り口横のこの水が溜まってるとこなんだろねお兄ちゃん^^』
『うーん・・・水がとにかく貴重だし、それを貯めておくところじゃないかと思うが・・・^^;』
と、答えたっつーのに妹はそれを聞かずに別の場所へと興味を示す。
『玄関口、煉瓦ちゃんす!!! うはー!これどこで焼いたんだろ、どんな工場だったんだろ~♪
刻印とか無いかな?無いかな?うっはー☆』とめちゃくちゃ煩いんだがw
まさかここまで煉瓦に彼女が嵌るとはね^^;
群馬の矢納水力発電所に連れて行ったのは間違いだったかなと兄貴として今は後悔している(妹が煉瓦に興味をもったキッカケは矢納水力発電所なのだ)
『この・・・いっぱい壁に空いてる穴は何でしょうかですう・・・』
恐る恐る。でも精一杯ボク達の背後から質問してきた夕実ちゃんがそこに居たんだ。
多分、彼女は皆に気後れしてることに気まずく思ったんだろう。
無理に興味を示したんじゃないかと言うのは明らかだった。
だからボクは優しく答えてあげる。
『いいとこに気づいたね夕実ちゃん^^ これはね?
太平洋戦争時に受けた銃弾の跡なんだよ^^
何しろ敵さんから見ても重要施設だよ。標的になったのは言うまでも無いよね^^』
抉れたコンクリ。むき出しの見えないはずの煉瓦。
いかにここが鉛の雨に晒されたのかが分かる痕跡だったとも思う。
---さて内部も少しばかり見てみよう。
(※ 少しばかりと書いたのは、実は近年、内部に入るのは立ち入り禁止になったからである。
保全するにもしがらみが色々とあってうまくいってないそうで・・・。
崩落の危険性も多大にあるので市として一応警告しているのです。
ということで入り口付近から目一杯ギリギリ覗いた画像をここでご披露したいと思います)
『結構雑な感じの目地っすね。煉瓦の積み方も結構不規則っす^^;』
琴音が言うように、かなり粗雑な煉瓦の積み方だった。
でも見た目なんかは戦時に必要の無いもの。
お洒落なんかじゃ命は守れない。
無骨だろうが速やかに建て、堅牢ならば充分だったのだ。
今で言うキッチンだろうか?
それとも別の意図あるものなのだろうか?
説明版には特に何も説明が無かった。
『たぶん、これってトイレとかじゃね?マジで^^』
琴音が言うように多分トイレだろうな。
当然ウンコもしたくなると思うし必要不可欠ですからねw
外はコンクリに覆われているが内装は煉瓦がそのまま剥き出し。
焼過煉瓦・・・では無さそう。
黒々とした煉瓦があったり、煤けている感じなのは、
恐らく一度中まで爆撃で焼かれたんじゃないでしょうか。
(※ ところどころオーブ、カメラのレンズ部に着いた誇りの所為で丸い人魂っぽいのが写ってるのはご了承ください。
撮影に夢中でレンズの管理まで到らなかったです^^;)
ところどころ無理矢理木枠で修復してあるところも。
内観はほんと公衆トイレと変わらない規模ですので直ぐに見終えた(妹様はまだまだ足りない感じだったが^^;)
ここからは裏手をぐるりと周って外観を堪能です。
『どの面を見ても銃痕だらけですなあ^^;』とオジイチャン。
ほんとにそうだった。四方八方、大小の穴だらけなのだ。
建物の横手に当たる部分にも水を貯めておく様なところがあった。
これまた裏手にも同じようなものがあったのだがーーー
『でもこっちは水が無いよねお兄ちゃん^^』と言いながら、琴音がその中に顔を突っ込んで中を覗きこむ。
『そこは丁度、さっき見たトイレの裏側だと思うぞ?妹よ^^;』と告げると
『それを先に言えよバカ兄ちゃん^^;』となじられた^^;
フハハハ、あえて言わなかったのだよ妹様よw
ざまーみろw
でもまあ~ここからウンコ汲み取ってたんだろね☆
ぐるりと一通り一周したところで錆びたコンクリの埋め込み梯子を見つける。
『いかがですか? あそこから上に登ってみては^^』とオジイチャンが言ってきたけど、流石にソレは・・・と断っておきました。
(登ってみたかったけどな!自重です^^;)
なんだかんだで大分ここに長居していたと思います。
オジイチャンもまた、
『来て良かった。ほんとうに良かった。そう思いますよ^^』と楽しまれていたようで(ずっと一緒に見てまわったんだよ^^)
ボク達一同としても喜んでもらえて嬉しかったなあ^^
---さあ、時間も時間です。
再びタクシーに乗り込んで、一路、石垣ターミナルへと帰る事に。
ここで現金な妹様がタクシーの料金メーターを見ながら呟いたのだ。
『わあ~なんだかんだで結構料金いってるっすねw たしかに辺鄙な場所っすもんね^^』と。
見ると料金は7000円くらいだった。
ワリカンだしそれはいいじゃないか。お金のこととかあっけらかんに言うのも実にハズカシイからと妹様に小声で『しー!^^;』と諭したところ、
オジイチャンは貸切の札をパタリと倒して料金メーターを隠し、ボク達に振り返って小声で言ったのだ。
唇の前に人差し指を立てて
『ナイショですよ^^ ここからの帰り道はもう御代は取りませんから^^ いいもの見させてもらった御礼です☆』と。
思わず『え?いいんですか???』と聞いちゃったじゃないか。
『ええ。だからシー!です^^』とまた茶目っ気たっぷりにするものだから、皆、笑いながらも
『『『ありがとうございます!』』』と感謝した。
その後の車中でのオジイチャンとの会話は更に楽しく、
そして教わることばかりだった。
『私がこの仕事を始めた頃は車は右側通行だったんですよ^^』
沖縄占領下、勿論、八重山諸島も同じだった。
アメリカに倣って左側通行が右へと替えられた。
日本に本土復帰(1972年)した後もわけあってダラダラと右側通行が続いたのだが・・・
それが1978年7月30日に本来の日本の交通規範である『車は左通行』へと戻った。
オジイチャンはその時代からこの仕事をしてたそうである。
『とは言っても一時期別のお仕事してましたけどねw』と笑うオジイチャン。
それでも凄い生き字引の人と出会ってしまったんだよね^^
皆『わきゃー!すごいすごいですオジイチャン♪』『ウハー!マジっすか!?びびったっすよ^^;』と喜び驚き、そしてオジイチャンのお話に聞き入ったのだ。
石垣島は昔こんな感じだったんだよ?とか
ほらほらあそこを見てください^^ 昔はああじゃなかったんです^^と、オジイチャンが出題する町並みと過去の答え合わせに皆一喜一憂した楽しい車中だった。
時には最新情報も?
『なんでも近々、この石垣島にも沖縄本島の“美ら海水族館”みたいなのが出来るらしいです^^』だって^^
『わあ~出来たら絶対もう一度来たいですう~☆』とはしゃぐ夕実ちゃん。
ボクもそんなの出来るなら何度も来たいかも^^
というか沖縄本島も好きだが、どちらかというと八重山好きなのである。
オジイチャンの最新?の情報も好きではあったがやっぱりボクには今昔。
特に、
石垣市内を通る日本の国道最西端390号線から海沿いにかけては『昔は海でした^^』っておっしゃってたのが一番印象的だったなあ。
『石垣の市役所も離島ターミナルがあるところも昔は海でした^^
大きな船を入れる為に港の底を削った残土で埋め立てたのがこの道路の向うから海に広がる土地なんですよ^^
だから市所有の土地がいまだに多いんです^^』
こんな素敵なガイドさんいるのか?って驚きっぱなしだった。
自分が大好きな分野にとことん詳しいオジイチャン。
ボク達はオジイチャンが饒舌に語ってくれるソレを楽しみまくったのである。
---そんな楽しいひと時も終わりを告げる。
ボク達は離島ターミナルに着いてしまった。
『いやあ~今日はお客様と出会えて楽しかったです^^ 実際に目にしてみるものですね。勉強になりました^^』と降車寸前に言われた。
これにはさすがの妹様も恐縮。
『そ、そんなことないですよ!むしろ私が大変感謝感謝っす^^;』
勿論ボクと夕実ちゃんも同じ気持ちだ。
最後に皆でワリカンでタクシーの支払いをしなければと言うことで、
ボクが財布の中身を『ひ~ふ~み~・・・』と野口英世さん(1000円)を数えていたらーーー
ひょい!と、
ボクの財布の中に大事にしまっておいた(温存しておいた)
福沢諭吉さん(高額一万円札)を
琴音が『お釣りはいらないです☆』とつまんでオジイチャンに勝手に渡しやがったΣ(°д°;)ガビーン
『いや・・・いやいや多いですよ。受け取れません^^;』と断るオジイチャンに、
琴音はオジイチャンの手の間にボクの諭吉さんを挟ませてギュッと力強く握手しながら、
『ありがとうございます^^』と言う言葉と眼力(めじから)で押し切ったのだった。
『なんてもったいない。ありがとうございます^^ 次に来る時は是非とも呼んで下さい!これ、私の名刺です。電話はここです^^』と名刺を頂く妹様。
最後には皆で何度も何度もお辞儀とありがとうをしてサヨナラをした。
ボクの卒業旅行はオジイチャンに偶然出会えたことで、思っていた以上に楽しい旅路となったのである。
で・・・
『それでですね妹様、そろそろワリカンの方おば・・・』
『チッチッチ。野暮なことは言わないのでありますお兄様☆』
『あ、はい・・・^^;』
・・・どうやらボクの全ゴチになってしまったみたい。
さようなら。ボクの諭吉ィ~^^;
その後は少しだけ猶予があったので、
石垣市立図書館で『宇多良炭鉱の調べ物』をしました。
職員さんに『西表島の炭鉱について調べたいのですが』と伺うと、
『それならばこことここの棚の書籍などがよろしいですよ^^ 三木さんって方の本が特に詳しいと思います。是非とも閲覧していってください^^』と、
実にさらりとスピーディーに紹介された。
・・・結構ボクと同じように西表の探鉱史を調べる方がいるのだろうか?
いや、恐らく職員のお姉さんが凄いんじゃないかなあと思う。
お姉さんはんぱねーなw
---夕刻。
ボク達は石垣空港まで帰って来た。
フライトを待つ時間を利用してお約束の~
アルコールタイムである♪
『おつかれ~^^』とお互いのジョッキをチンチンと合わせてから飲んだそれは最高でしたね^^
あとは刺し盛りなど数品を。
妹様は『せっかくだし美味しい石垣牛が食いたいっす』とほざいてましたが、
『ワリカン・・・』とぼそりと呟いたら『刺身もいいよね!おほほほほ』と誤魔化してましたが^^;
定刻どおりに羽田に無事に着。
とても有意義な二日間だったと思う。
彼女等はすっかり眠りこけていたけれど、どうなんだろうか?
楽しんでくれたのかな?^^
さあ、いよいよボクも4月から社会人だ。
ワクワクと不安。色々混在しているが頑張ってみたいと思います。
好きで選んだこの職業。夢に向って走ってみたい。
ーーー西表島旅行記これにて終了。
ここまで長々と読んでいただきありがとうございます^^
いかがだったでしょうか西表島旅行編は^^
ボクとしては非常に色の濃い旅路だったと思います。
自然アリ、隠れた歴史アリ、煉瓦あり、
そして最後に素敵な出会いもあった^^
ちなみに『おつりはいらないっす』ってお話は本当ですw
随分と太っ腹になったもんだねオイラw
だってよ~、最高のオジイチャンだったんだもの^^
さて・・・次回は・・・忙しくてあんまり遠出もしてないので短い記事を繫げますw
ボクの住んでいる町のお隣の町『八潮市』までお散歩したお話となるでしょうか。
そこにかつて存在した『3つの煉瓦工場』のうち2つの痕跡を探った旅路です(旅って言うか歩いていけるんだけどねw)
ではではまた次回お会いいたしましょうず^^
・・・次回記事まで待ってられないとか言う奇特な方はコチラでもいかがでしょうか?→サブブログ
結構ガチな話ですがw
なんかすごいタクシーのうんちゃんを捕まえましたね!
旅の出会いって素敵ですね。
ちょいのりさん、いつも優しいコメントを本当にありがとうございます。
たくさん思い出して、たくさん偲んで、そして時には笑いたいと思います。
by isoshijimi (2015-04-21 04:39)
デンシンヤーの由来歴史佇まいに涙しました☆
しかしマニアックな場所よくご存知で(^w^)♬
嗚呼 獏も今年こそ一人旅しよう♬
by 獏 (2015-04-21 04:39)
おはようございます。
奥深さ・・・触れ合いの道中記ですね、素晴らしい!
心打ちます・・・。
by YUTAじい (2015-04-21 06:47)
通勤電車の中で一気読みしちゃった(嬉)
おじいちゃんとの素敵な出会いあり、
銃弾跡が痛々しい戦争遺構ありと、
なかなかそそられる旅…
充実感バリバリでしたよ!
by 唐津っ子 (2015-04-21 07:03)
戦争は過酷ですね、人間性が失われると死んだ親父が言っていました。
by katakiyo (2015-04-21 08:56)
おはようございます。
旅はやはり地元の雰囲気を楽しむのがイイですね。タクシーの運ちゃんといい、主婦友弁当もイイっすね♪
私は1975年に沖縄に、新婚旅行で♪まだクルマは右側通行だったんだ・・・憶えて無いけど。(^_^ゞ
by 路渡カッパ (2015-04-21 10:15)
銃弾痕が生々しくです。
なかなか濃い日程でしたね。
主婦友弁当はお酒のつまみにもイケそうです。
GOODなタクシードライバーで旅がより楽しいものになって諭吉さん払っても元は取れてるでしょう。
by コンブ (2015-04-21 10:55)
「ちょいのり劇場」を楽しませてもらいました。
現実はドラマよりもドラマチックに
展開しますよね。
by NO14Ruggerman (2015-04-21 10:56)
どうやったら一泊二日でこれだけ濃い旅ができるのでしょうか、う~む!
二枠の悪魔は皐月賞?
by 足立sunny (2015-04-21 13:48)
タクシーの運ちゃん、ステキ過ぎます(>_<)
ちょいのりさんも良いものを引き寄せていますね〜。
充実ある記事、ありがとうございます。^^
by ワンモア (2015-04-21 15:44)
今日はこれから外出です
と言うことで明日もう一度拝見しますよ・・!
by koh925 (2015-04-21 16:49)
なんて素敵なタクシーの運転手さん(^O^)
そういう方との出会いって本当に最高の思い出ですね(^_^)v
by ニッキー (2015-04-21 17:18)
返還前は右側通行でドル立てでしたものね、確か通行手形ではなくパスポートも要りましたね、家内が行きました。
by 馬爺 (2015-04-21 19:25)
自分は某所で貴重なものを見せてもらったことが…(・囚・;)
フェンスの外からしか見られないものを、フェンスの中…というか、実際にそのものの中に入って…(・囚・;)
そういえば「車は左」の標識が溢れてる写真、どこかで見たっけ…(・囚・;)
by 下総弾正くま (2015-04-21 20:48)
良い出会いがありましたね(∩.∩)
私もこういう出会いを求めて旅がしてみたいですw
by 美美 (2015-04-21 21:59)
トレイ(?)が映ってる写真見て「真黒だな・・・」と思いました。
戦火で焼けたのか、集中攻撃などで焼けたのか不明ですけど、戦争なんて嫌だ!というのを再認識です。
by しきみ (2015-04-21 22:18)
こんばんは。主婦友弁当に興味津々です。美味しそうですね。タクシーの運転手さんも素晴らしい対応ですね。^^;
by ソニックマイヅル (2015-04-21 22:27)
あぜ道を走るタクシーに感動しましたw
貴重な歴史も拝見しましたがやっぱりアルコールがw
by テンポイント (2015-04-22 01:23)
水族館ができたら石垣島に必ず行こうと思いました。
沖縄の食べ物が口に合わないと相方は行きたがらない
だろうから、ちょいのりさん、一緒に行きませんか(^▽^)/
by johncomeback (2015-04-22 05:56)
イリオモテヤマネコはなかなか見るのって難しそうですね。以前沖縄のお弁当ってご飯の上にどっさりおかずがのってるのテレビでみたことありますが西表も同じ感じですね。たぷりおかずが嬉しいですね。
by みぃにゃん (2015-04-22 07:29)
一週間も行っていたような・・・とても内容の濃い旅行になりましたね。
・・・沖縄に帰りたくなった・・・
by 駅員3 (2015-04-22 07:46)
おいら、以前沖縄のタクシーに乗った時
方言が判らずただただ愛想笑いでごまかしていた記憶が
by くまら (2015-04-22 09:37)
いつもながら勉強になります。戦争は情報が第一。
当時はアタシのルーツに思いを馳せちゃいました。
タクシーのオジイチャンは勝手に世界チャンプ具志堅の20年後の絵を想像しながら読ませていただきました(^o^)
by 太陽の玉子 (2015-04-22 13:39)
再度、拝見しましたよ
日清戦争当時の遺構、かなり進んでいたんですね
オリオンビールを飲んで踊っていたのが恥ずかしいです(^^
by koh925 (2015-04-22 18:11)
ゴーヤのチーズケーキって@@;)
食べてみたいような怖いような^^;
電信屋、凄いですねぇ
ここから台湾までケーブルを敷いていたんだ
タクシーのお爺ちゃんに炭鉱マニアの図書館のお姉さん、いい出会いがいっぱいでしたね^^
by さる1号 (2015-04-22 21:26)
すごく素敵な出会いでしたね。
こんな運転手さんだったら、島一周
案内してもらっちゃうかもです^^
by みずき (2015-04-22 23:03)
地下鉄の移動中に読み終わらなかった(笑)
よい運転手さんに会えてよかったですね。
なんだか古びた建物に...若干の迫力を感じましたよ。
ちょいさん、なかなか行動派ですね。2日間で...
若い若い!
by orange (2015-04-23 00:31)
こういったモノが石垣島にあったとは知りませんでした。
いいお話でしたねー。旅の、こういう出会いがまた
楽しいですね^^。
by sakamono (2015-04-24 00:19)
可愛いタクシー・ドライバーの爺ちゃんに逢えたんですね!!
そんなのも旅の醍醐味なんだろうな。
僕にはタクシーで飲む度胸ないけど^^;
by DEBDYLAN (2015-04-28 00:57)
通勤途中のスマホで読まなくて良かった・・・
地方のタクシーって、東京とは違いあたると(運転手さん)楽しいですよね。
今回は『大当たり!!』
ちなみに1978年7月30日には、朝のニュース番組で今日から車が左側通行・・・の生中継で、慣れていないバスと乗用車の事故がやってました・・・
by suzuran6 (2015-05-01 20:26)