第454話『こんなの絶対おかしいよっ!』大津いじめ事件&スクールトランシーバ-2 [スクールトランシーバー]
『触れないわけにはいかない』
基本、皆が『ばかだなーこの人w』って笑ってもらえるような記事を常に書きたいと思ってるし、
どうせ見てもらえるなら『楽しいお話』を語りたいんだよね^^
でもね?どうしても『これはどうなんだろ?』と思う話だけは、その内容が辛い事、悲しいこと、憤るような話だったとしても書きたいことがある。
かといって、ストレートに書くのも苦手なので、あえて物語の一部として見てください^^
過去、スクールトランシーバーというお話を『一話だけ』描きました。(こんな話です→スクールトランシーバー)
内容的には学校内でのいじめ撲滅の為に無償で働く小学生のスパイのお話^^
ここで立ち去るのもよし。
あえて見てくれる方はどうぞ^^
ではでは小学生のスパイの男の子女の子が中学生になってからのお話『スクールトランシーバー2』をどうぞ^^
『ねえ、聞いた?“アノ話”』
『え?ああ~アレでしょ? ・・・ちょっとかわいそうだよね・・・』
ああーめんどくせーと思いながら、机の上に椅子を乗っけて教室の後ろの方にダラダラと腰でめんどくさそうに押し込むオレ。
大したゴミなんて落ちてねーだろ^^;と思うんだが、まあ・・・みんなやってるししょうがない。
掃除の時間ほど億劫な時間は無い。それ程オレってばめんどくさがりっす。
『だってアレでしょ?せんせーとかひどくね?』
『マジありえないよね。私でもそうなったらキッツイよ^^;』
普段ならダラダラ掃除してる男子に文句ばかりいう女子が、水かきみたいなT字型の箒を動かすのを止め、立ち話に夢中になっている。
それは多分・・・滋賀県は大津市で起こった『大津の中学二年生いじめ自殺』のことだろう。
分からないでもない。同じ中学生として連日報道されるセンセーショナルないじめを巡るニュースに同学年として興味を持たない方がおかしいし。
『ブーーーーーブーーーーー』
ポケットの中で外に飛び出したいんじゃないかというくらいに携帯が震え出した。
おそらくペルシャ(コードネームです)からだろう。
オレはボックス型の塵取りがゴミでパンパンになっちゃったというそぶりをわざと女子に見せつつ廊下へと出ることにした。
---着信を見ると『Πέρσιςペルシス』という文字が浮かぶ。
やはり彼女からだ。
教室から出て結構時間経っているにもかかわらず震える着信。
よほど緊急な用件なのか?
『はい、こちら”シャム猫”っつーか何用?仕事?イジメか?』
『うっ・・・・あうう・・・あう・・・ひっく・・・うう・・・こちら・・・ううう・・・ペルシャです・・・ひっく・・・』
電話先の彼女は泣いている。
基本的に泣き上戸だとは思っていたがこれは尋常じゃないと思ったオレは
『ど、どうした!? わけわかんねーけど今行く!事務所でいいんだよな!?』
『はい・・・ひっく・・・ひ・・・ウエーーん』
オレは携帯をしまって教室に戻ると
『ちょっと担任に呼ばれちまったからワリイ!』といって、ちりとりを教室のワックスの掛かった床に滑らせて駆け出したーーーー
---このスクールトランシーバーと呼ばれる校内スパイの事務所は学校近隣にあったりする。
そりゃそうだ。遠くにあったらイジメなんてわからねーよ^^;
『おい、なにかあったのか?』と、事務所のドアを勢い良くバタンと開こうと思ったのだが、もう既に開いていた。
文部科学省が秘密裏にイジメ撲滅の為につくったってのに、末端の事務所は支援も行き届かずクーラーもつけられないってことで、いつも夏場はドア開けっ放しなのはわかってるんだけど・・・
(建前は白書に毎年イジメでの自殺はゼロですって数字を書き込みたいだけの組織)
ーーーふと、窓辺のカーテンに包まって泣いているペルシャを見つけたのだ。
『どうしたんだよ・・・。今日はなんかの指令じゃないのか?』
『特に無いんですけど・・・うう・・・ひっく・・・』
じゃあなんなんだよ?
ま、確かにめんどくさーい掃除を回避できたのでちょっとありがたいとは思ったけどw
『大津の事件って酷くないですか・・・ゥエーン・・・』
そう言って彼女は包まってたカーテンからゆっくりと抜け出して、事務所のPC横に積まれている資料を色々とつまみ出し、
そしてボクに『コレ・・・』と突き出した。
【大津・いじめ自殺】 全ての教師、男子生徒へのいじめ「認識せず」…自殺直後に調査
大津市で中学2年生の男子生徒が自殺した問題で、自殺の直後に学校がすべての教師を対象に調査した
ところ、男子生徒へのいじめを「認識していた」と答えた教師は1人もいなかったことがわかりました。
『あんなにアンケートで生徒が答えてるのに、先生は誰一人いじめがあったって知らないって言うのおかしくないですか!』
確かにな。他クラス・他学年の生徒ですら知ってるって言われているのにコレはおかしい。
『こっちもみてくださいよ!』
なかば、オレに怒りをぶつけるかのようにペルシャは資料をオレの胸に突きつける。
【大津・いじめ自殺】 市教育長 「アンケート結果はスーと追って見た程度だったから、『自殺練習』とか見落としてた」
学校側は全校生徒に対し行った2回目のアンケート調査を隠していただけでなく、自殺した
生徒の遺族にアンケート結果を提示する際も、マスコミの口外しないという確約書を
交わしていた。2回目のアンケート結果の報告書は市教委に提出されていたが、沢村憲次
市教育長はのらりくらりでこう答えた。
「A4の資料で3~4枚あったのをスーと順を追って見た程度だった。新しい事実は発見できませんと
いう報告だったので、うちとしてはその通りと受け止めた。全部見れば見れたはずだったが、
私は確認しておりません。見落としていました」
『人が1人死んでるんですよ?それをですよ・・・スーって目で軽く追っただけで、生徒が一生懸命書いてくれた訴えを見落としてたとかおかしいですよ!!!』
これは・・・拳が震えた。
その言い訳に、そして人として。
更にペルシャは許さないと言わんばかりに机にドン!と資料を叩きつける。
「最初に黙とうすべきだ」8か月ぶりの保護者会
男子生徒(当時13歳)が通っていた大津市立中学校は12日夜、緊急保護者会を開いた。
出席した約700人の保護者から質問が相次ぎ、会は約3時間に及んだ。
会は非公開で午後7時から始まり、亡くなった男子生徒の父親も出席した。
出席者によると、校長らは一連の経緯などを報告。質疑応答に移ろうとした時、
2年女子生徒の父親が「最初に黙とうすべきではないのか」と声を上げる場面があった。
学校側は謝罪、全員が起立して黙とうした。
亡くなった男子生徒の父親はマイクを握り、「こういう騒動になって申し訳なく思っております。
なぜこういうことになったのか、真相が知りたかっただけです」などと声を詰まらせながら話した。
『 先生達ひどすぎませんか!言い訳ばっかりですよ、うう・・・』
その他にも彼女は次々と今回の資料を連ねてボクに突きつける。
そしてマスコミやネット、裏から回ってくる情報とは違うものを最後にボクに見せた。
怒りをオレに突きつけ過ぎて少し疲れたのか発散できたのか分からないが、いくらか冷静さを取り戻して。
『これは・・・少々年度の古い資料なんですけど・・・』と、数枚のプリントアウトされた紙を見せた。
『これは何?』
『平成20年度の文部科学省のサイトのPDFファイルです。
特にいじめなどの調査報告が載ってる部分です・・・』
その中身はーーー
いじめがここ数年減少傾向とか、いじめで自殺した児童生徒は何人だったとか、そんな内容でした。
『私が見てもらいたいのはコッチです!』と、机の上の一枚を拾い上げ、怒りに任せてオレの顔に突きつける。
『なになに?えっと・・・いじめ発見のきっかけ?』
『そうそこです!』
『本人からの訴えが24.6パーセント。そして次に多いのがアンケート調査などの学校の取り組みによる発見が24.4パーセント。
次が学級担任が発見。これが19.8パーセントです』
なるほど。学校報告前提だからこれが全てじゃないし、全部が全部鵜呑みに出来ないけれど、こういう報告もあるんだな。
ほーほーと少し感心していると、彼女は急に大声で泣き出しながらオレに掴みかかってきた。
『このいじめられてた生徒さんは“先生に泣きながら訴えた”って報告があるんですよ!
それをですよ、そんなことなかったとか言ってるって聞きます!
そしてアンケートもそう。
生徒さんが一生懸命書いたのに先生・校長・学校・教育委員会はないがしろにしてるじゃないですか!
私たちは普段、校内でイジメの状況をスパイしてたりします。
誰にも訴えられないで孤独に悩み、そして最悪死を選んでいく子もいる中で、
この子は大人に助けてって訴えた。
ボクを助けてくださいって言ったんですよ!
子供が助けてって言ってるんですよ?
誰も助けてくれなかったんですよ?
なんとかしてくれるかもと、チカラのある大人に頼んだんですよ。
それがこんなだなんて・・・うう・・・
こんなのぜったいおかしいです!』
彼女の嗚咽が狭い事務所にこだまする。
オレは・・・加害者と言われる子供達が絶対悪いと言うスタンスだったのだが、
ペルシャの言うことももっともだ。
これは見つけられなかったイジメじゃない。
しかも被害者の子供から生前シグナルがあったのだ。
また、同級生や親族も(未確定だけれど自殺した子のお姉さんも相談してたそうだし)報告していたと聞いている。
大人たちが防げたかもしれない事案なんだと。
『大人が守らないでどうするんですか・・・うう・・・』
ペルシャがか細い声で空に訴える。
彼女もまた、過去に大人が助けてくれない境遇にいたことがあったのをオレは知っている。
そんな集まりが実はスクールトランシーバーという学校内スパイなのだからーーー。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
今回はやはり子供目線から少し考えてみたいところがあるんですよ。
そうすると見えてくる見えてくる大人への不信感!
もちろん、直接関わったとされる加害者の生徒数名(3人と言われてはいますが、それもどうなのか。後、数名いるともとられてますね)には、腹立たしいことこの上ないよ!
でもだ、
それを取り巻く環境もまた極悪な気がしてならないよなあ・・・
子供を助けられない大人は大人じゃないわね
ああ、ガキだ。
第233話『スクールトランシーバー』学校スパイ大作戦! [スクールトランシーバー]
他のクラスの女の子。
本来ならボクの『管轄外』だ。
でも・・・ほっておけなかった・・・
自分が配属されたクラスのイジメを秘密裏に調査し、しかるべく機関に報告、その後有識者(・・・といっても人手が足りなくて先生方OBだけど)による会議を経て、
許可が出次第、イジメに対処するのがボク達「スクールトランシーバー」の仕事だ。
簡単に言うと「小学生スパイ」であり「必殺仕事人(殺さないけど☆)」みたいなもんだ。
報酬は無い!
・・・御菓子くらいなら出るけど。じじくさい、かりんとうとか饅頭とかだけどね・・・^^;
「学校裏サイト」やら「いじめツイッター」など、ネットを介した、より陰湿なイジメが蔓延る最近。
それを食い止めるべく、ボク達「スクールトランシーバー」が秘密裏に各クラス男女一人づつ配属されてるんだよね。
そんなある日の放課後・・・
下駄箱の前でポツンとたたずむ他のクラスの女の子を見かけた。
彼女は自分の下足入れを暫く見つめ、そして何かを我慢するような無理な作り笑いを浮かべ、
自分の靴を取り出して地面に放り、その靴を履いて歩き出した。
かたっぽは靴下のまま・・・。
そう。その女の子の下駄箱にあったのは片方の靴しか無かったんだ。
ほんとうなら、そこで「靴が無い! 無い!」と叫ぶと思うんだ。
でも彼女はさびしそうに笑ってた。
・・・多分、これが最初じゃないんだろうね・・・
ああ~・・・またかと、諦めの笑顔だったのかも・・・。
「クスクス・・・」とボクの背後の棚に隠れるように、女の子数人が居るのを確認した。
おそらくこいつ等なんだろう。
ボクは殴ってやろうかと思ったのだけれど、まだ「確定」ではない。暴力はボク達「スクールトランシーバー」にはご法度だし。
握った拳をガンッ!と下駄箱に叩きつけ、その女の子たちを見やると「クスクス・・・」という笑いは一瞬途絶えた。
・・・でもすぐに何事も無かったかのように、棚の向こう側でヒソヒソト笑いを再開していた。
一応、クラスの相棒の女の子「ペルシャ」にメールで報告をしつつも、彼女をボクは追うことにしたんだ。
普段、人の足元なんてそれほど気にしないもんだよ。
それが不思議なくらい、すれ違う人が彼女の足元を覗き見る。
その視線が彼女に無情なまでに突き刺さる。
ランドセルの輪ッかをギュッとつかみ、そして誰とも目線を合わせないように下を向きながら歩く彼女。
黙々と・・・黙々と・・・
暫くすると大通りから外れ、すれ違う人も少ないだろう人一人すれ違うのもやっとなくらいの細い路地へと彼女は入っていった。
路地と言うよりも家と家のすきま程度の小道。
ボクは遠巻きに後をつけていく。
ふと、彼女はピタリと脚を止め、ブロック塀に背中を預けたかと思うと、ズルズルとその場にしゃがみ込んだんだ。
ーーーーーー泣いてる。
・・・泣いてるよ。
・・・ここまで我慢してたんだ彼女は。
その姿を見たボクは『管轄外』の彼女を救ってやろうと決意したんだ。
ーーーーーfin
このお話は、以前、小学校の女の子がイジメを苦にして若い命を散らしてしまったことに対しての記事
第158話「学校に小学生のスパイを送り込もうと思ったんだ」を元に思いついたストーリーです。
学校に小学生のスパイを送ってまでイジメ阻止!ってのもどうかとは思うんだけど、イジメとか減るかもしれないって考えたらアリなんじゃないかなって常々思ってるんだよね~。
いじめを苦にした自殺のニュースなんて聞きたくねーもん。