第589話 群馬・シズカ山スキー場跡編vol④『冬山レジャーの栄枯盛衰』 [廃村さーくる]
『ゴンッ!・・・・ゴンッ!・・・ゴゴッ!?』
廃ゴンドラを見上げていたボク達の直ぐ傍の、開かずの大きな大きなシャッターの奥辺りから異音が鳴り響く!?
ーーーまるでゴンドラの機械が再び息を吹き返したように。
ボク達以外に誰も居ないと思っていた我々は思わず見構える。
うん。皆、緊張して身構えてたとばかり思っていたのだけれども、
後ろを振り向いた時には、ボク以外の彼女たちは一目散に
『『『キャアアアアアアアアアアアアアア!』』』と、逃げ出していた・・・・・・・・・・
第589話、スタート・・・です^^;
『こ、この廃スキー場って、廃鉱山の跡に建てられたスキー場なんですかァ???』
先ほどの“白根鉱山跡地”という藪に隠れた石碑を指差して夕実ちゃんがボクに言ってきた。
夕実ちゃん以外の彼女たちもボクの答えを待っているような表情をしている。
ボクはある程度の知識しか無いのだけれど、この土地の幾ばくかの経緯を知る限り彼女たちに語ることにした。
『ここは昔、白根鉱山と呼ばれて硫黄を産出する鉱山だったんだ。
かつては工業原料として掘り出され、隆盛な時もあっただろうけれど、
石油というものが主流になってくると、その石油の副産物として硫黄が硫黄鉱山で採掘するより簡単に採取できることになってしまったんだ。
・・・時代の波。もしくはエネルギー変遷の波だよね^^;
日本にある硫黄鉱山は次々と役割を終えることになるわけ。
結局この白根鉱山も、1974年の春を迎えた頃に廃鉱に到った。
そこから空白の数十年を経て跡地利用にとスキー場が建設された。
何しろ高所であり、シーズンには雪も望める場所であったし、
何より草津温泉というメジャーな温泉の近隣でもあったしね^^
それが“草津シズカ山スキー場”ってわけなんだ。
でもそのスキー場も2000年初頭に、たった数年活動しただけで活動を終えてしまうんだよ。
バブル期を迎えて絶頂期だった1980~1990年代の日本の冬山レジャーも、
バブル崩壊と共に、スキースノボー人口は減少を辿る一途。
その最中に後追いで造られたこのスキー場の運命は、まあ・・
言わずもがなと言うところだとしておこうね^^;』
『なるほど。ここは廃墟の上の廃墟なのねぇ・・・』
ボクの説明に首塚さんが何とも言えない愁いだ顔を見せる。
そして続けるのだ。
『私の住む東北地方もやっぱりスキー場とかバンバン潰れていってるわよ~^^;
人気のあるスキー場も、平日だとリフト待ちとかほとんど無いこともあるし^^;』
かつては何十分もディズニィーランドのアトラクション待ちみたいな隆盛を誇った時代もあったんだよ?と親父に聞かされたもんだ。
でも今や冬山レジャーは衰退の一途を辿っていると言ってほぼ間違いは無いと思う。
それほど、スキー・スノーボードをする人たちは昔に比べると減ったのだと。
(今現在は、スキー・スノボー世代だった人が親となり、少しばかり戻ってきてるらしいけれども、
それでもブームのピークであった頃に比べると人口は三分の一。
スキー場も当時に比べたら二割から三割弱の減少との、レジャー白書等々の報告からあるそうです)
『ちなみに、このシズカ山スキー場の扱いは“休止中”なんだ^^;』と、ゴンドラ跡に進む道すがら、皆に振り返って補足的なことを告げた。
『っちゅーことは、完全な廃墟ってことじゃ無いってこと?お兄ちゃん』
『うん。ここは完全な廃業では無いらしい。都合がつくのなら再開をと思っている場所と言った感じかな。
言わば“仮の廃墟状態”なわけだ。
・・・とは言え、
この日本の冬山レジャーが衰退を辿ってる今のご時世、
このスキー場が再びスキーヤーやスノーボーダーを迎えてくれるのは限りなくゼロ・・・に近いと思うよ^^;』
皆、少し無口になってしまった。
そのかわりにまわりの景色を確かめるようにじっくりと見回していたように見えた。
『うほおー、草ぼーぼーっすねここ^^;』
『ゴンドラ無いですぅ・・・^^;』
ゴンドラが無い変わりにポツンと車が打ち捨てられていた。
特段見るべきものも無い場所だったが、せっかくなので主役の居ない舞台を皆じっくりと見回していた。
---すると、
『ガンッ!・・・ガガンッ! ・・・ンッ・・・ゴン!』と、
ボク達の直ぐ傍の格納庫であったであろう場所から大きな音が鳴り響く!
しかもその音は少しづつボクらの方へと近づいて来ている!?
『ん・・・何の音だろう』と思わず身構えた。
シャッターの奥から聞こえてくるその異音に、ごくりと唾を飲み込んで音の在り処を注視した。
そして『心配しないで。でも冷静にいこう^^』と、皆に声を掛けようと振り向いた先には誰も居なかった。あれ?
『でたあああああああああああああああ!』
『わきゃあああああああああああああああ!』
彼女たちは悲鳴を上げて一目散に逃げ出していた^^;
・・・いやいや何も出てないし何もいないから^^;
というか、心霊研究部の首塚・リンダもこの手の音くらいで逃げ出してどないすんねんw
ボクはシャッター越しの異音がなんなのかをある程度考察してから彼女たちの元へと合流したのである。
(実際のボクはビビッて逃げ出してますw ひいいー!とか情けな~い悲鳴をあげながら。めんぼくねー^^;)
『ダイジョウブデスカ!スガワラサン!』
『リンダ!何か御清めのグッズとか無いのかしら!』
リンダと首塚さんは、まるでボクが悪霊でも見てしまったかのように慌てふためいて心配をしてくれる^^;
『いや・・・別に大丈夫だってば^^;』
『いやダメよ!リンダさっさと何か出しなさい!塩でもなんでもいいから』
『あ、ありましたデース^^』と、リンダは自分のポーチをごそごそと漁って、いかにも洋風魔術的な小さな小瓶を取り出した。
飾り細工をあしらった、パッと見、中々それっぽい雰囲気のガラスの小瓶だ。
『それは聖水か何かかなw いやいいよもったいないよ~^^』
心配してくれるのはありがたいのだが、そんなまやかしまがいの代物でどうこうなるわけ無いだろうにと、ボクは少し小馬鹿にしていた。
『この聖なるローションを塗れば効果テキメンデース☆』
ローションかよw
聖水じゃねーのかよ。サラッとしてねーのかよw
『ちなみにようやく量産体制が整ったデース☆開発には苦労させられましたデス^^;』
『ちなみに我が部の活動資金源よ^^ ホームページから通販のみで販売開始したんだけれど、これが結構好評でねえーーー』
いったいどんな物好きなんだそれは^^;
心霊研究部って全然活動してないと思ってたら、裏でこんなことしてたのか^^;
『それ私ほしいっす^^ おいくら万円っすか?』と琴音が興味ありありで買おうとする。コラコラー!
『4本セットで5000円よ^^ばら売りはしてないの^^でも琴音ちゃんだったらサンプル品でよければ一本あげるわよ^^』
たけーなおい!しかもどんだけあこぎな商売やねん^^;
とは思っていたのだけれど、
いつの間にやらすっかり先ほどの異音のことなんて皆忘れていた。まあ・・・それはそれでありがたい^^;
(ちなみに聖なるローションの話は二回目だったりします。覚えてるかな?)
ようやく落ち着いたところで、先ほどの異音と首塚・リンダが感じ取ったであろう何かの答えあわせをすることにした。
『さっきの異音は、おそらく風に揺られた鉄塔の音がケーブルを伝わって聞こえてきたんだと思うんだ。
ゴンドラは残ってなかったけれど、ケーブルは未だにあの施設に引き込まれたままだったしね^^
ほら?ボク達がそこに居ようが居まいが耳をすませると音がたまに鳴ってるのが聞こえるだろ?』
それでもなんか納得の行かない女子チーム^^;
もう幽霊でいいよ!w はいはい幽霊幽霊^^;
『あと、首塚さんは“新しい感じのしない心霊的なもの”を感じ取ったようなこと言ってたよね。
まあ~ボクはおばけとか信じていないんだけど、
ここはかつて鉱山跡だったと説明したじゃない?
この鉱山は硫黄鉱山だったわけだけれど、やはり昔は火山性ガスや落盤事故などで命を失っている方も結構いるんだ。
だから、もしかして首塚さんやリンダが何かを感じ取ったと言うならば、恐らくそれを感じたんじゃないかと思うよ^^』
『ああ~なるほどね^^ このスキー場が活動していた時の霊的なものじゃなく、そのもっと前に存在していた鉱山の何かを気取ったのね私』
『ちなみに、この石碑の近くから少し登ったところに慰霊の社や祠があったりするんだ。この石碑共々まわりと比べると小奇麗な感じがするし、ここだけは手入れをされてるみたいだね^^』
ボク達は祠に行きはしなかったのだけれども、その小高い丘に向って皆で手を合わせたのだった。
『でさ、お兄ちゃんこれからどうすんのさ?ここが鉱山跡だってことは分かったけど、鉱山の跡っぽいもの探しに行くってこと?』
『ん?うんん。本当は行きたいところだけど時間的に見送ろうと思ってる^^
ペアリフト脇から山中へと道が続いていて、その先に色々とあるらしいんだけど、また今度かな^^』
その言葉に皆なぜかホッとしたような顔をする女子チーム^^;
そりゃそうか。あんな山の遠くを見ていたら心が折れても仕方が無いとも思うしね。
今度は単独で行ってみようとボクは思った。
『とはいえ、せっかくだし最後ついでにペアリフトくらいは見てこよう^^』
そう言ってボクは彼女たちを先導してリフト跡へと向った(いや、すぐそこなんだけどねw)
『うおお!こっちはちゃんと残ってるっす^^』
『でも休止中とは言え、寂しい感じがするわね^^;』
『もう誰も座ってくれないし動くことも無いキガスルデース・・・』
『せっかくだしみんなで座って記念撮影しちゃいましょーですう^^』
お、いいかもね^^
ボク達は地面に降りているリフトの安全を確かめてから、総勢5人の箱乗り状態で記念撮影をしたんだ。
ここまで読んでくださりありがとうございました^^
次回は蛇足も蛇足『おまけ編☆』です。
書きたいことはもう今回で全部書いたつもりだし^^
おぉ!一番海苔☆☆(^w^)☆
廃リフトはGWに行った三瓶山でも見たなぁ☆
スキーはちょっとだけ スノボは全然ダメな
オッサンです。。。。。。(@@;))
by 獏 (2013-07-18 15:06)
おお~これはだいぶ手入れしないと厳しい状況ですね。^^;
by ソニックマイヅル (2013-07-18 15:45)
これは、機械関係は総取替しないと営業再開は無理そうですねぇ(-_-)
スキー・スノボ人口、かなり減ってますよね(*_*)
平日だとほとんど並ばずにリフトに乗れちゃうので帰りは筋肉痛で全身が悲鳴を上げてます^^;
by ニッキー (2013-07-18 16:14)
私をスキーに連れて行って・・・あの頃は凄かった!!
私は近所の坂で滑って遊んでいましたが・・・
昔、仕事で行っていた白馬のリゾート施設も廃墟になっていたしなぁ。
所で鱧食べに行きません?
by suzuran6 (2013-07-18 16:31)
うなぎ!?いいですね~(なぜか食いつくボクw
by ちょいのり (2013-07-18 16:48)
もったいないような施設ですね。
by サンダーソニア (2013-07-18 17:52)
全くスキーをしない人б(^^; 丁度全盛期の頃に学生
だったはずなんですけどねぇ。
# 猫きちさんとこで見ましたけど、資料にする程度
# であれば小学校の写真、機会があれば撮って
# 送りますよ~
by まめ (2013-07-18 20:22)
スキーも今では大分廃れてきたのかな~
私が若い時は冬はスキーが一番のステータスでしたね、今はスノボーなんですね。
by 馬爺 (2013-07-18 20:33)
錆錆ですねぇ>_<
手入れするだけで相当な資金が必要になりそうな具合だからこのまま放置・・・なのでしょうね。
by sachi (2013-07-18 20:42)
ゴツンゴツンゴゴ!と鳴ったときは
ちょっとビビッてしまいました^^;
このままほんとの廃墟になってしまうんでしょうね。
ちょっと悲しいですね。
by 美美 (2013-07-18 20:44)
この状況だと、再開できたとしても機械類はほとんど入れ替えでしょうねぇ…(・_・;)
手入れしなきゃ、こういうのはすぐダメになっちゃうし…(・_・;)
by 下総弾正くま (2013-07-18 21:44)
確かに私もスキー未経験者だし,この歳でいまさらスキーなんてって思っているけど,この前スキー初体験だった娘はまた行きたいって言ってたので,企画次第じゃないのかな?
by 唐津っ子 (2013-07-18 22:29)
スキー・スノボブームが廃れてきた影響は
我が北海道に大きな影を落としております。
観光で食いつないでいかねばならない土地なのですが、
飛行機に乗ってまでしてスキーを・・・
という方がすっかり減ってしまいました(涙)
by 銀狼 (2013-07-18 23:10)
もしかしてリフトに直接つないで車をおろしたり
してる仕組みだったんでしょうかね。
見晴らしのいいところにあるだけに、そのままに
してるのってもったいないかもです。
by みずき (2013-07-18 23:15)
ええっ、鉱山跡には行かないんですかぁ!?
それは残念だ(^^)
この季節、「廃」をめぐるには、昆虫さんと植物さんに阻まれて大変ですね。
by 駅員3 (2013-07-18 23:39)
夏場の維持もたいへんなんでしょうね。
それに夏場にそこを何に使うか…広い面積が半年しか活用できなければ、やはり地域としてはたいへんですね。それもブームが去ってしまっては。
なので探険地が増えて…
by orange (2013-07-19 02:00)
幽霊が出なくて良かったです(汗)
しかしそこは、鉱山で災害にあって亡くられた方々がいる場所だったんですね!
そんな所にレジャ-施設を造っても、縁起が悪いのでは、と、思ってしまいますがね。
by ちゃめこ (2013-07-19 13:34)
秩父市民だった頃はバブル全盛で「私をスキーに連れて行って」状態でした。有名スキー場のリフトは1時間
待ちが当たり前だったなあ。
by johncomeback (2013-07-19 14:00)
海水で芋を洗う猿の島・・・・
次回の記事にほんの少し・・・☆(@w@;)
by 獏 (2013-07-19 17:06)
こんにちは。
バブルの頃は、舎弟パジェロで毎週末、「苗場」へ行ってました。(廃車)
もう二度と無い時代・・・寂しいです。
by YUTAじい (2013-07-19 17:23)
おはようございます。
あらら。休止中なんですね。でも再開しそうなスキー場って感じでもないですね。
by Ryokies (2013-07-20 10:05)
スキー・スノボー世代だった人が親となり、ってところ、面白いですね。そんなふうに流行も代替わりしてくのが^^;。霊的な何かが起こるコトを期待していました^^;。
by sakamono (2013-07-20 15:54)
おもしろ~い。
この先、どうなるんだろう、
どうなるんだろう、と
ひっぱるチカラがものすごい。
タイムリーなところに、
タイムリーな写真とイラストがあるのが
嬉しい。
それにしても、お化けが出てくるんだ、と
思っていましたが、
まんまとハズされちゃいました(笑)
ああ、早く続きを読まなきゃ。
by 猫きち (2013-07-21 17:46)