第235話「稲取廃病棟」vol①地元にこんなんあったんだ!? [廃村さーくる]
「今度の週末空いてるかな夕実ちゃん?」
「え!? ・・・デデデ、デートとかですか?わきゃー☆」
「そーいうんじゃないけど・・・。実家に帰ろうかと思ってるんだよね。良かったら一緒にどうかな?」
・・・この時は私、ちょー舞い上がってました!
私と菅原先輩の実家は「静岡県は伊豆半島の南にある『稲取』というところ」なんですけど(金目鯛がよくとれるところで昨今は知られてるかしら?)
里帰りに突然誘われるなんてもしや・・・
「夕実さんをボクにください!」とか、お父様にご報告する覚悟ななななんですか!? わきゃーーーー☆ けけけけ結婚とか婚約とか!? うひゃーーー!
・・・って、勝手に思ってましたよおー。
でも・・・そうじゃありませんでした。
ガチがっかり状態です・・。
「夕実ちゃんが廃村サークルっぽいこと全然してないですよね?って催促してたから、冬でも無難なところがあるから行ってみよ?」
・・・だってー。
私は少し不満げに先輩に返しました。
「里帰りと廃村サークル活動がどうつながるんですかー」と、・・・めちゃめちゃ棒読みな感じで。
そんな気の無い返事をしたにもかかわらず、先輩は気にも留めずに続けました。
「稲取には『稲取廃病棟』って廃墟があるんだよ」
ボク達は朝6時過ぎに東京駅で待ち合わせをした。
「ふあわ・・・おはよーございますー。ちょーねむねむですよー・・・」
東京駅の待ち合わせの定番「銀の鈴」で会おうと言ったにもかかわらず
「どこですかそこ?」って言われてしまったので、もっと簡単に東海道新幹線の改札口で夕実ちゃんと待ち合わせ。
なんとか定刻に7時前の新幹線に二人で乗り込むことができた。
「お腹減ってません? さっきキオスクでお弁当買ってきたんですけどどうですか?わきゃー☆」
新幹線の席に着くなり、コンビニ袋からガサガサとお弁当を取り出す夕実さん。
基本的にあんまり朝食を取らないボクですが、こういう休みの旅路なら、それはそれで嬉しい。
・・・でもなんか不思議だ。
旅先でご当地の駅弁を買うことはさんざんあったけれど、ほぼ地元である東京駅の駅弁を食べるなんてことはなかったかも。
「ほほ~。品川名物、貝づくしですか。・・・まあ~貝が取れたとか言うのはだいぶ昔のお話でしょうが、まあいいでしょう」
「先輩。歴史なんていいんですぅ! 腹が減ったら戦がなんとかーって教科書にのってたでしょ?」
・・・のってたっけか?
「とりあえずかんぱーい♪」と、こっちが色々考えるのを無視してどんどん進めていく夕実ちゃん。
・・・朝からアルコールですか! ・・・嫌いじゃないですけどね☆
「わーーーー!? ちょーおっきいシジミですね!わきゃー☆」
「それはアサリです・・・。パッケージに書いてあるでしょ?」
「先輩にはロマンが欠落してますぅ」
そんなお弁当談義に花を咲かせつつも、乗換駅の熱海駅にボク達は降り立つのでした。
「懐かしいですね」・・・そう、乗り換えのホームで目にした電車を見て夕実ちゃんは呟いた。
ボク達は学生の頃はよくこの「伊豆急行」の列車を利用していたんだ。
中学の頃まではそうでもなかったのだが、高校で友達が出来てくると近隣の町から通う子達とかがいて、そのこ達の町に出向くために利用することが多くなった。
今だに残ってる電車内のボックスシートに何人かで座って、異性の話や先生の悪口なんかで盛り上がってた学生時代が懐かしい。
ほんの2・3年前なんだけどね。
ガタンゴトン・・・
ボクと夕実ちゃんは景色を懐かしみ、その景色にあーだこーだと思い出を重ねて話しながらも、電車はどんどんと進んでいくのでした。
・・・ふと、夕実ちゃんが夢から突然覚めてしまったかのように、真面目顔でボクに問い詰めてきた。
「私・・・、稲取に『稲取廃病棟』なんて廃墟があるなんて知りませんでしたよォ~・・・」
「いや・・・ボクもね、実は廃墟とか廃村に興味を持つまで知らなかったんだよ。・・・地元なのにね」
いつ頃だったろうか? たしか4~5年前に「廃墟ブーム」となり、
その中で「関東近県では有名な廃墟」と名をはせたのが、今回向かっている『稲取廃病棟』なんだが・・・
灯台モトクラシーとでもいいましょうか?
本当に知らなかった。
だいたいネットの情報によれば、稲取の中心街から国道をひたすら進んで一山越えたようなところだ。
そんなとこまで遊びにいかないってばさw
伊豆の外周を周る国道135号線。その途中にあるトモロ岬から名前を取ったのであろう「友路トンネル」の脇道にひっそりとたたずむらしいのだが・・・。
トモロ岬は磯釣りの穴場で知られているので、今度、親父に聞いてみよう。
「廃病棟って知ってる?」って。
ーーーーそうこうしている間に降りる駅に到着しました。
「え? ・・・なんで手前の駅の『片瀬白田』で降りるんですか?」
不思議そうに、そしていささか不満げにボクにつっかかる夕実ちゃん。
「ここで降りて国道沿いに歩いた方がネット検索した結果、一番の近道だと思っただけだよ」
「駅の前は相変わらず発展してませんねー。・・・コンビニすらないです」
本当に何も無い。
多少小奇麗になったかな~という程度だろうが、相変わらずの隣駅。
ボク達もそれほど道に詳しいわけでは無いので、駅前の看板でこれから進もうとする135号線がどこなのかを確認しつつ歩き出すのです。
時刻は午前8時過ぎ。
昇ったばかりの太陽が照らす海原を横目に国道の合流地点まで歩を進めました。
「あの・・・先輩・・・。けっこう車がビュンビュンしてて怖いんですけどォ・・・」
そう、この135号線。人が歩くような歩道なんてものはありません。
路肩を勝手に歩きなさい!ってことです。人には全然優しくない道路です。
ダンプや観光バスがビュンビュン通過します。
「なるべく気をつけて歩こうね」
「気をつけてもちょー怖いんですが! わきゃー!? あのダンプ私たちとかガン無視でギリギリスルーでしたよォォ・・・」
ボク達はガードレールの中と外を交互に行き来しながら目的地である「友路トンネル」へと向かったのです。
「せ、先輩!? こ、ここが『稲取廃病棟』へのポイントとなる友路トンネルですかあ?」
「う~ん・・・、ネットだと友路トンネルの脇道から降る道があって、そこに廃病棟があるらしいんだよ。・・・ん? なんか微妙に降りれそうだから降りてみよう」
そう言って、ボク達は国道脇から海沿いへと降りて行ったのです・・・
獣道みたいな道、いや、崖をおそるおそる下っていくと・・・
・・・ふつーの道に辿り着きました。
「こ、ここに病院が???」
夕実ちゃんが怪しむのも不思議じゃ~ない。ふっつーのアスファルトの道に到着。
・・・あれれ? ここじゃないのか?
・・・一応、あきらめずに道なりに進むことにしました。
「あの・・・先輩。・・・道の先が『無い』んですけど・・・」
・・・そだねー。無いねー☆
かろうじて残されたガードレールを頼りに進んで見ると・・・
完全に藪になった。・・・いや「崖」に阻まれた。
・・・それでもこの先には何かあるはずだ!と「もーやめましょーよー! わきゃー・・・」と言う夕実ちゃんを引っ張って、藪を突貫して歩を進めることにしたのです。
・・・そう大した距離では無いのですが、目の前に大きな大きなものが突然お披露目をするのでした。
「ト、トンネル・・・でしょうか?」
「そうだね。トンネルだ」
目の前に聳え立つトンネル。・・・ただし、それは大きなフェンスに囲まれていたんだ。
「これって、昔に使われてたトンネルなんでしょうかね~」
夕実ちゃんはフェンスをわしッ!と掴みながらも中をまじまじと興味深く上下左右にうかがう。
「そうみたいだね。これは恐らく・・・元々国道だったけれど、伊豆大島近海地震で崩落して閉鎖されたトンネルなんだろうね。・・・って夕実ちゃん?」
ボクのウンチクを語るが前に、本来なら閉まっているであろうはずのフェンス口を潜っていく夕実ちゃんが見えた!
ここを訪れるマニアがあけたのか、管理局のおじさんが開けっ放しにしたのかは分からないけど。
夕実ちゃんを追ってボクもトンネル内に。
「ダメだよ!! ここは崩落の危険があるから立ち入り禁止にしてあるんだから!」
「え~~でもでも~、せっかく扉が開いてるんだし~、ちょっとくらいならよくありません?」
そう、ちょっとですからとか言いながらもズンズンと進んでいく夕実ちゃん。
「ちょっと待てよ!」と夕実ちゃんに対してふだんは滅多に言わない口調で声を荒げたその瞬間。
「ドスン! ・・・いったーーーいです。わきゃ・・・」とトンネル内を響く夕実ちゃんのこだま。
「だから待ってって言ったのに・・・」
ここはただでさえ崩落寸前の危険区域だ。
ぱっと見は、ふつーでも、天井を見上げると、コンクリートと地肌がまばらにむき出してたりもする。
よくよく地面を見れば天井から落ちてきたであろう、岩の塊がゴロゴロしている。
・・・本当に危険なところだ。
ボクは夕実ちゃんに手を貸し抱え起こす。
「どうしても先に進みたい?」
「なんか気になるじゃないですかー」
・・・しょうがないなあ~この子は。
「どうしても先が見たいなら、もう少し慎重にね。岩盤がゆるくなったトンネルでも構造上「壁際」を歩くのが一番ベストなんだよ? 支えが何も無いど真ん中を堂々と歩くのは危険なんだからね」
「は~い・・・ゴメンナサイです・・・ううう・・・」と、ようやくボクの言うことを聞いてくれた。
「行き止まりですね・・・」
出口であろう部分は完全に土砂で埋没している。
天井部分に穴が開いていて日の光が行き止まりである部分を照らしていた。
「ここを登れば・・・外に出られそうですね」
「いや。止めておこう。だってボク達の目的は『ここ』じゃないだろう?」
「ああ・・・そうです。そうなんです。わきゃー・・・」
「なら、とりあえずここを出ましょう。ゆっくりとね」
そうしてボク達の勘違いで迷い込んだ廃トンネル進入は終了したのです。
「なんか、みょーに古っるーい感じのゴミがワンサカしてますねーここって」
昔の人が捨てたんだろう。こういうのは懐かしいと思うと共に、逆に恥ずかしいとも思えるね。
海岸を見渡せば、ボク達が乗ってきた電車の線路だ。
ひょんなことから旧国道と旧トンネルにであってしまった訳だけれど、目的はまだ先。
ぜーぜー言いながらも元居た135号線まで戻ることにした。
「先輩!ちょー怖いですううううううう!!!!」
そう、ある意味このトンネルを潜り抜けるのが一番過酷だったと言ってもいい。
こんなとこ人なんてふつーは歩かない。
自動車専用道路でも高速道路でも無いけれど、こんなところはふつー人なんて歩かないんだ。
むしろ車の方が驚いてくれて除けてくれたのがありがたかった。
なんとか友路トンネルの反対側の出口に辿り着くボクと夕実ちゃん。
目的の場所であろう脇道はあっさりと見つかった。
「最初から稲取から歩けばよかったんじゃないですか?むふー!」
・・・まあいいじゃないのよw 色々発見できたし。
「じゃあ行くよ?」
「はいです、わきゃ・・・」
最初だけはコンクリの階段。・・・でもその後は獣道のような感じ。
冬枯れの竹を押し分けて進んだそこにあったのは?
次回「稲取廃病棟編vol②」へと続く☆
病院跡地は気持ちのいいものではないですね~
by まめ (2011-02-16 07:16)
やっぱり実家に行ったんですね~!(近くに。。。)
そして、すごい(・_・;)
ほっそい歩道をぐいぐい上がっていくって。。。
しかも廃病院探索の前に、廃トンネル探索もだなんて・・・
続きが楽しみ?怖い?^m^
by リン (2011-02-16 07:19)
この物語のフィクション部分は夕実ちゃんですよね。
ってことはこの廃墟一人で行ったの!?
めちゃ怖いんですけど。廃墟トンネルんとこ、人が見えるんですけど・・・。
by もももんがが (2011-02-16 08:54)
↑同じことを考えてました。リアルはロンリー?
勇気ありますね。オトコらしいわ♪
by デルフィニウム (2011-02-16 09:42)
みえるかも・・・・・・・・・・・(||OдO||)
by デルフィニウム (2011-02-16 09:44)
↑みなさんのコメント見てビビッてます…。
見れない…。
by とうふさん (2011-02-16 10:30)
え!? 写真になんか写ってる???
携帯だから見れねー--っ!
家に帰ってから確認するぞw
・・・本当なの?
by ちょいのり (2011-02-16 12:52)
今回の記事は、ドキドキしながらじっくりと読ませて頂きました。写真とストーリーの融合性がバッチリです!!
続きが楽しみですが・・・。
やっぱり、あれですか?
ガッチリ落としちゃったりします?(爆)
by yoshinorhythm (2011-02-16 13:46)
1枚目の病院の写真 明るいんだけど、、、、
鳥肌が止まらない。。。
電車の中の缶チューハイ2本 もしかしてしっかり飲んじゃいました?^^
by aeon (2011-02-16 14:10)
この廃墟、調べたら昔「隔離病棟」だったみたいですね。
http://www.k4.dion.ne.jp/~sinrei/inatorihaikakuribyoutou2.html
しかもガチの心霊廃墟らしいですけど・・・。
本気で一人で 行 っ た ん だ よ ね?
て、怖がらせてすみません^^;
みゅうさんに見てもらったらどうです~?
以前リンさんの写真も言い当ててましたよ・・・。
by もももんがが (2011-02-16 14:25)
会社のPCで見てみたけど最初はわかんなかったなあ~~。
でも廃墟トンネルの入口写真のところの壁のシミがそうみえなくもないねえ。
かみのながい女の人が横向いてるっぽい。
あと見ようによっちゃ、あと何個かあるけど、これはシミでしょw
でもこわいなあ^^;
by ちょいのり (2011-02-16 16:07)
ちょいのりさん こんばんは
まるでだれかさんのブログのようです♪
怖いではありませんか~
この先や如何に・・・ドキドキ
by スマイル (2011-02-16 20:45)
開いているフェンス口の写真に、
ちょろっと見えるかなぐらいですね。
まだまだこれからに期待です♪
by たかれろ (2011-02-16 22:03)
シミだよなあ~~~。
そうだと言ってw
by ちょいのり (2011-02-16 22:47)
なんか夜中に写真整理すんの嫌だなあw
スマイルさん。だれかっぽいって言われてもおいらにゃ誰のことだか分からないよ^^;
意外とおいらってソネブロ内の人知らないんだよねえ。
by ちょいのり (2011-02-16 22:50)
今日は後半記事を更新するかどうかまだきめかねています。
何しろ写真が多くって^^;
アップロードするだけで時間かかるんだもん。
by ちょいのり (2011-02-16 22:51)
たかれろさんが言うように、やっぱりフェンス入口のところかな。
他は今んとこ写ってるようには見えないねえ^^
by ちょいのり (2011-02-16 22:53)
ちなみにネタバレですが
廃墟に到達した頃には酔っ払ってますw
じゃなきゃ一人で無理ですよw
by ちょいのり (2011-02-16 23:15)
廃道っΣ(゜Д゜;
廃隧道っΣ(゜Д゜;
わきゃー☆
by 下総弾正くま (2011-02-16 23:53)
下総弾正くまさんはわりとこういうの好きそうだねえw
by ちょいのり (2011-02-17 00:46)
夜中に見るんじゃなかったです(>_<)
いますね〜アレが!
酔っぱらってないと先へ進めませんね^^
by 吟遊詩人41 (2011-02-17 00:52)
入り口のシミみたいなやつ、、、顔です!
by 吟遊詩人41 (2011-02-17 00:53)
フェンスの入り口ですよ〜
怖い〜
トイレ行けません〜
朝までガマンします・・・
by 吟遊詩人41 (2011-02-17 00:55)
このフィクションのために、
ひとりでこんな怖いところに行かれたんですか?!
あの、あの、ロケハン取材凄すぎですけど。
後編に期待です。
by lancian (2011-02-17 01:04)
吟遊詩人41さん、そんなにこわがらないでよォ~う。
オイラも怖くなっちゃうじゃないw
あ~でも今家に帰ってきてあらためて見てみると、髪の長い女の人の横顔がうっすらとみえるよなあ~。
でもあんまり危険なものを感じない気がしますよ。
こっち見てないし^^
by ちょいのり (2011-02-17 01:11)
見てますよ!
by 吟遊詩人41 (2011-02-17 01:16)
ビビって予約投稿を間違って出しちゃってました^^;
一番乗りありがとうございます〜
by 吟遊詩人41 (2011-02-17 01:18)
吟遊詩人41さん、あれってやっぱり間違いですかw
んお? なんでこの時間に一番乗りだか不思議に思ってましたですよw
コメントが6連続で投稿されてるかもしれないので削除しておいてください^^;
by ちょいのり (2011-02-17 01:33)
みなさんのコメントが怖すぎる…
by ねこじたん (2011-02-17 04:02)