第240話「トンネルを歩く女の子」お父さんの証言。繋がる物語?※微修正しました [廃村さーくる]
ああ~ん♪ 今日も今日とて先輩と二人っきりのスイートすいーーーーとタイムでございますよ~んだっ! わきゃー☆
私はいつものように大学構内の備品室を無理矢理改造した「廃村さーくる」と言う、ちっさな同好会の部屋にいそいそと、どたどたと向かっていました。
・・・あ、よだれ出ちゃった☆
えへへ~☆ 乙女がなんてはしたないですぅ~w
待っててね先輩。
じゅるる・・・とよだれを飲み込んで、サークルの部屋のドアに手をかけた時でした。
・・・ん?
・・・おや?
私以外の雌の匂いがするんであります・・・
「ねぇ~ん、菅原く~ん~」
・・・中から聞こえてくるは、女性の声。先輩に「君付け」するのだから、先輩と同期、もしくはそれ以上の年齢?
・・・くうう、それにしても甘ったるい声を出してきいいいいいい!
「だ、ダメだよ! ・・・ここじゃまずいよ・・・」
「誰が来てもいいじゃない。あなたが、ほ・し・い・の」
わきゃああああああーーーーー!!!???
ななななんですか!?
どどどどどど、どういうシチュエーションなん、なん、なんですかーーーーー!? これって!
「ボクには夕実ちゃんもいるし・・・」
「ああ~ここに所属してる唯一の後輩ちゃん? そんなのいいじゃない」
「でもですね・・・」
な、なんだか分からないけど私を気に掛けてる!? 先輩! そんな女の誘惑に負けるなですハイ! フレー♪ フレー♪ ですよ!
「じゃあ~、ここ、いじっちゃうわよ~ん」
「あ、そ、そこはだめです!」
わきゃああああああああーーーーーッッ!!! 先輩のちょー貞操の危機ですぅ!!!
そう思い、私は聞き耳立てていたドアを力いっぱいガララ!と開けたのです!
・・・
・・・
・・・・・・はい!?
小さな小さな改造された備品室に流れるなんともいえない空気。
目の前には備品のPCの前で固まっている菅原先輩と見知らぬ女性。
そして私。
一応・・・想像してたのは、ちょっとえっちーなシチュエーションだったのですが・・・
それもない・・・みたい。
でも先輩とかなり近いのがカチンとくる。
「ど、どうしたの? 夕実ちゃん。 そんなに気合入れて入ってくるなんて」
「あ、え、う~ん・・・と、アナタは誰ですかッ!」
先輩の質問には答えずに、女性の方にキッ!と視線を向け、名を名乗れと私は私はつっかかりました。
「私は心霊研究同好会、略して『しんれいけん』の部長の『首塚塔子』よ。あなたは・・・えっとー・・・夕実ちゃんだっけか? 菅原君からは、なんとな~くあなたのことは聞いてますよ。一応、私ってば先輩にあたるんだけどー、フレンドリー的に『くっぴー先輩』とでも呼んでね☆」
私の質問にさらりと答える女の人。
先輩と同い年ってことは、私の1個上だよね。
なぜか白衣を羽織り、そして年齢的にはどうかという感じの花飾りを頭に付けている。
・・・といいますか、ぜってー『くっぴー先輩』なんて呼ぶもんか、わきゃー! ってかむきー!
「あれれ~。ちょっと敵意むき出しって感じかな? かわいいね♪」
あーーーもーーーなにそのお子様扱い! ちょームカつくんですけど。
これ以上話すことは無いですぅ! 先輩にもなんかなれなれしいし!
そう思った私は、このくっぴー先輩なる人物から菅原先輩に話題を振り替えた。
「いったい、今の今まで何してたんですか!」
「う~んっとね・・・、首塚君が『廃村さーくるなんて辞めて、心霊研究同好会に来てよ~ん』って、誘われてたってとこ・・・かな^^;」
「こ、こここここ、い、いじっちゃうわよ~ん・・・って聞こえたんですけど!せ、セクハラとかされてません!?」
・・・ちょっと先輩の色々なところを恥ずかしながら見て、私は真っ赤になりながら問い詰める。
「あら、かわいい☆」
アンタの言葉なんて聴きたくない!いやらしい感じで私を見据える首塚先輩。
「いやね、前回「稲取廃病棟」に行ったでしょ? そのときの画像フォルダーをゴミ箱にドロップアウトされそうになったから、あわてちゃっただけだよ。ほんとイジワルなんだよ、首塚君ってばさ~」
・・・な~んだ。・・・よかったあ。
あんなことやこんなことと勝手に妄想していた自分がはずかしーです。わきゃー・・・
「ま、いいわ。・・・ちょっと心霊研として気になったから今日はここに来たの。
菅原君って、稲取廃病棟に先々週に行ってきたのよね?」
「はい。そうだけどなにか?」
「私たち心霊マニアとしても、結構『聖地』みたいな~わけよ。そこってばさ。画像くらいは見せてくれるよね? 別にアナタを心霊研に勧誘なんてしないからさぁ~」
・・・菅原先輩は「廃墟=心霊スポット」って考えを嫌っている。
それは私も知っているんです。
・・・だから、絶対絶対お断わりすると思ってました。
「画像くらいなら・・・」
な・ん・で・断らない!
首塚先輩が私のいつもの定位置である、くるくる回る椅子にどっぷりと腰掛けて、白衣の下からすらーっと伸びる黒ストッキングの脚を先輩に見せ付けるように脚を組みかえる。
その動きに、ちら~っと目線を泳がせる菅原先輩を私は見た。
そんな誘惑に負けるなんて先輩オス過ぎですぅ・・・。
私のそんな落胆を無視するかのように、首塚先輩が促がす通りに先輩は、稲取廃病棟の画像をマウスでカチャカチャと進めていったのでした・・・。
「ここの旧国道のトンネル入り口で、割りと「女性っぽい霊」が見えるってコメントをもらったんですが・・・」
「んん? このトンネルの入り口に見える横向きの女性? う~ん・・・これは特に何も感じないわね。これは霊的なものじゃないと思う。壁のシミね。もし霊的なものだとしても、悪意はかんじないわ」
・・・私は結構、この廃トンネルの入り口付近の写真に女性っぽい画像が写ってるのを先輩に指摘されてドギマギしてたんですが!
「せ、先輩? この・・・首塚先輩って、霊がどうのこうのって見えたり分かっちゃったりする・・・んですか?」
小声というより、むしろ首塚先輩に聞こえるくらいのボリュームで菅原先輩に話しかける。
それをまったく気にしない首塚先輩。
「心霊研究同好会の部長だけあって、かなり確かだよ。家柄も霊媒師の家系らしいし」
・・・ふーん、そなんだ。
相変わらずそんな私たちの言葉を気にしない首塚先輩。
それどころか、せかすようにドンドンとクリックを促がすのです。
画像が廃病棟に差し掛かったときに、それは起こりました。
「ん? むむむむ・・・。この廃病棟に入ったところまでの画像はそれほど何も感じなかったけど・・・
・・・この部屋だけは特別ね。・・・むしろ気持ちが悪いくらいよ・・・」
そう言って、その画像の前で黙り込んでしまった首塚先輩。
「夕実ちゃん、この画像になにか感じる? もしくは何か見える?」
先輩が私にこの画像から何か感じ取れるのか促がす。
・・・ん~、他の部屋はワラ敷きのベットで恐怖を感じたのだけれど、この部屋の画像に写ってるベットはワラも無い。むき出しです。
ベットの骨組みと荒れた部屋。ただそれだけ。
注意深く見ても、壁のシミも別段、無理矢理、人にすら見えない。
「何も感じないの? ・・・じゃあ~、ここんところを拡大してみてよ」
そう促がされて骨組みのベットの白い部分を徐々に拡大していく・・・
・・・
・・・
・・・ええっ!?
先輩と私は、短い声を上げ、そして絶句する。
「これは・・・目と・・・口ね。バラバラだけど・・・。そして「強烈な悪意の目」だわ・・・」
思わず吐き出しそうになってしまった。
鋭い眼光。その目は怒りに満ちているような気がする。
「首塚さん・・・。これは・・・あんまりよくない・・・のかな?ボクは、あんまり霊とか気にするタイプじゃないんだけど・・・、この目に見える画像は見ててツライ気がするんだ」
菅原先輩が恐る恐る尋ねる。
「良くはないねー。お祓いしたほうがいいかも☆ ま、でも今んとこ平気そうならご先祖様のご加護があるってことなのかもね。
・・・・う~ん、あとね、気になるのは・・・この子「女の子」だね」
(※これは実際に、自分に近しい霊感が強い人に幾人か見てもらったのですが、みんながみんな「女の子」と指摘したんです)
「なんかこの廃病棟に謂れとか事件に女の子がかかわってるとか・・・ないの?」
「・・・え!? ・・・ああ~・・・なんとなくは・・・あります」
なぜか先輩の歯切れが悪い。
・・・実はこの病棟と女の子ってキーワードって最初から知っていたの?
「ボクも確信がもてないんで・・・一番地元のことを知ってる親父にでも電話してみますよ」
そういって携帯を取り上げピポパと電話をする先輩。
とぅるるるる・・・・とぅるるるる・・・・ガチャ
「お、なんだめずらしいな。おまえが電話してくるなんて。・・・で今日はなんのようだ?」
「いや・・・最近、稲取のトモロトンネルの近くにある廃病棟に行ってきたんだけど・・・」
「なに? トモロの近くの?」
静まり返ってるからだろうか、先輩の受話器越しにお父様との会話が漏れ聞こえる。
「うん・・・」
「お前も物好きだなw なんか出たか?」
「いや・・・別に・・・。でさ、この病棟ってなんか噂とか、いわれとか、事件?・・・なんてのはあったりする?」
「いや、別にないな~。・・・ああ~でもあれだ、そういやアレがあったな」
「アレって・・・何?」
「トンネルの中を歩く女の子の幽霊」
そのキーワードに電話越しに聞いていた首塚先輩と私はいつのまにか手を取り合って震えていた。
・・・ただし、首塚先輩は何故か嬉しそうなんですけどー
「旧国道の廃トンネルにも寄ったんだけどさ、やっぱりそこって『女の子の幽霊』とかって出るんだ」
「ああん? 旧国道のトンネルまで行ってきたのか? いや違う違う、そこじゃない。
今の135号線のトンネルだ。
その病院のすぐ横だし、廃トンネルにも近いな。
夜にトンネルを車で通ると昔からトンネルを歩く女の子の幽霊を見ることがあるって話。ま、オレは見たことねーけんどなw」
「ありがとう。参考になったよ。じゃ、また近いうちに帰るから」
そういって先輩は携帯の通話を切った。
「女の子が何かかかわってるのかしらね? トンネルの中で何かあったのか、病棟でなにかがあったのかは分からないけど。でもこれって・・・偶然じゃないわね」
首塚先輩はそう言って黙り込んでしまった。
「ボクは霊的なものはよくわからないけど、廃病棟の女の子の霊も、トンネルの女の子も・・・同じなのかもね。距離にして50㍍も離れてないし・・・。・・・知る由も無いけどさ」
偶然に繋がったような気がする女の子の霊のお話。
彼女は何を伝えようとしているんでしょうかね?
ただ今はそっとしてあげるべきなのかもしれません。
(※父親との電話のやり取りは本当のことです^^ ・・・まあ~これ以外にもあったんですが、それはまたいつか。
コメント欄は今日は閉じさせていただきます)