第263話『湯西川編』最終話 何でも言うこと聞いてくれるよねえ? [廃村さーくる]
ワタシはイケナイ言葉を頭の中でグルグルといつのまにか思い浮かべていた。
泥棒猫・・・泥棒猫・・・と。
雪道を前に行く菅原君と夕実ちゃ~んの、ギコチナイながらも仲睦まじい間柄に「嫉妬」していたのかもしれない。
いや、かもしれないじゃなくって嫉妬してるもの。・・・ふう。
菅原君と夕実ちゃ~んが幼馴染だということは、菅原君との会話の中で既にリサーチ済みよ?
本来なら向こうの方が長年知った仲だしー
「泥棒猫」って言葉を思い浮かべるのは少し違うのだけれど、
あの二人は別に「付き合ってはいない」・・・はず。
大学に入学してからの付き合いは夕実ちゃ~んには決して時間的には負けて無いの。ワタシ。
だから・・・泥棒猫って思ってもいいじゃない。・・・いいの!
まあ・・・少し分が悪い感じー・・・だけどさ。
・・・ここらへんで少しイーブンまでもっていこう!
そして夕実ちゃ~んより一歩リードしてみよう!
ワタシは先行く二人の間を割るように、元気に「ねー!ねー!」と声を出して駆け寄った。
「菅原君! 『さっきの場所以外にもかまくらがある』っていってたけどさあ~、ここから結構歩くのかなあ~? ワタシ、ヒールの高い靴履いてきちゃったから、雪道堪えるんだー。あははッ♪」
・・・どうでもいい会話だけれども、これで充分。
夕実ちゃ~んをチラリと見やると、少しホッペをぷーーーと膨らませて不満気。
そりゃそうでしょう。さっきまで二人の世界だったのを一刀両断ですからね☆
「も~やだなあ、首塚さんってばw 青森出身なのに雪道にヒールの靴とか~」
「雪国の達人は、こんのくらいへーきよォ♪ 逆にスパイクみたいになってて大丈夫なくらいだもん。
・・・脚は疲れちゃうけどねー☆」
ワタシは菅原君では無く、夕実ちゃ~んを見ながら言葉を返す。
ちょっとイヤラシイとは思うのだけれど、このくらいしないとダメだ。
「あのつり橋を渡って暫く歩くとあるらしいよ?だから夕実ちゃん、首塚さん、もう少し頑張ってみようか」
「はーいですぅ、わきゃー☆」と、普段より少し大きめなボリュームで答える夕実ちゃ~ん。・・・ちょっとした夕実ちゃ~んの対抗意識みたいなものかしらね。
・・・あれ? あれれれれ?
「--夕実ちゃん、首塚さんーーー」って、言ったよね今。 菅原君て。
・・・言葉のアヤではあるけれど、夕実ちゃ~んの「次」にワタシの名前ですかそうですか。・・・少しショック。
ワタシは気を取り直そうと、二人より早足で先につり橋へと向かい「こっちこっちー♪」と皆に無理矢理元気を振りまくのでした。
「わきゃー! つり橋って言っても、結構頑丈そうですねぇ☆」
「まあ~、雰囲気だけ楽しんでよw」
「もっと、つり橋っていったらですよ? ブランブラ~ンって揺れてわきゃー!な感じなんですけどォ」
いつのまにかまた二人だけの会話になろうとしているじゃない。
・・・イケナイイケナイ。会話の主導権を夕実ちゃ~んに握らせる訳にはいかないよね?
ここでワタシは作戦を変更する。
「ワタシが菅原君とマンツーマンで喋る」のではなく、「夕実ちゃ~んとワタシが会話して、夕実ちゃ~んを菅原君から遠ざける作戦」へと。
ワタシも菅原君と喋れなくなってしまうけれど、目の前で楽しそうに会話をする二人を見るよりはマシ。
ああ・・・ワタシってこんなに嫉妬深かったのかな・・・
少し自分が嫌になってしまったけれど、まあいいや。
う~んそうだ、少しエッチな会話であわあわさせちゃおう。
この子には、この手の話をすれば、頭がいっぱいいっぱいで他のことまで気が回らなくなるのはもう充分分かってるし♪
それから暫く、赤面する夕実ちゃ~んとのマンツーマン。
「もーーー! やめてくださいよォーそんなの恥ずかしいですわきゃー☆」
彼女の反応がとても面白く、そして話も楽しい。
・・・別に「彼女が嫌い」じゃないの。本当に。
それ以上に「彼が好き」だから、こうしてるだけ。
いつのまにかイジワルに夢中になってたワタシだったのだけれど、
「さあ。ここだよ。みんな橋の上から下を見てみてよ」と言う菅原君の言葉に、彼女と共に橋の欄干に身を預けて下を見回してみたのでした。
「わきゃ? ななななんでしょうかアレ? ・・・ミニかまくら???」
川の土手、川の中州といういたる所に
『小さな小さなかまくら』がズラリと並んでいた。
「ええ~っと、さっきのかまくらよりは、ここのミニかまくらの方が有名なのかな? これは夜になると火が灯されて、とても幻想的だそうだよ」
わあーーーーーーー!
きゃあーーーーーーー!!
夕実ちゃ~んじゃないけれど、そのくらいに叫んで感動してみたい気がした。
「小さくて可愛くてたくさんで最高ですわきゃあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
隣で素直にめいっぱい喜ぶ彼女がとても羨ましい。
そして素直じゃない自分が少し悲しい・・・。
川べりの近くにはもうひとつかまくらの会場があっった。
「ここも夜になると火が灯されてキレイなんだろうね」
菅原君の言葉に二人で頷く。
「夜まで待ってみる?菅原君」
「そーーーですよー! 夜のかまくら見たい見たいですよ!」
「いや、時間的にキツイかな。ボク達は泊りがけの準備してこなかったしさ。
またの機会があったら、夜のライトアップにお目にかかりたいよね」
・・・いつか夜に来てみよう。
勿論、そのときは「誰か」と一緒に。
「わーーーきゃああーーー!!! ちょちょちょちょっと見てくださいよ!」
しばらくぼんやりと景色を眺めていた私たちを夕実ちゃ~んの大きな声が現実に引き戻す。
「ちょっとどうしたのよォ~?」
彼女は私たちに、とっておきの宝物でも見せるかのように、自分の服に乗っかった雪を指差して見せるのでした。
「あ、雪の結晶ね!」
「そうですそうですよォ! こうやって見てみると雪の一粒一粒ってみんな違う形してるんですね!
なんかとってもキレイですわきゃー☆」
・・・ああ、そういうの忘れてたキモチかも。なぜだか彼女の純粋な感動が少し身にしみる。
「ちょっとこれ見てたら雪印のチーズ思い出しちゃいましたw うう・・・そーいえばおなかぺこぺこなんですけど先輩ぃぃ・・・わきゃ・・・」
確かに私たちは電車内で飲んだ缶チューハイくらいしか今日はクチにしてなかった。
携帯電話を取り出すと、そこに写る時刻は既にお昼を過ぎていた。
「丁度いい頃合かもね。じゃあ、みんなでお昼ご飯食べにいこっか?」
『『さんせー☆』』
途中にある平家の落人集落を再現した『平家の里』を軽くまわってから、私たちはここ湯西川のメインストリート?と言える場所までおりてきました。
飲食店は結構な数があって、その中からどの店を選ぶのか悩んでいたのですが、夕実ちゃ~んが・・・
「この泥棒ヒゲの雪だるまさんの店がいいです!!! わきゃー☆」と言ったことで、そこに決定です。
・・・泥棒ヒゲの「泥棒」って言葉にワタシは少しドキっとしてしまった・・・。
「なにはなくともまずビールよね!」
『『異議な~し☆』』
ワタシの号令にみんな頷き、お店のおばちゃんにビールを3っつ注文。
まずは旅の労をねぎらって、みんなで『『かんぱ~い☆』』
「やややややっぱりー、こういうところに来たなら『ご当地メニュー』ですよね? ですよね? わきゃー☆」
うん、それは賛成かな。
そう言って彼女がはしゃぎながら「これなんかどうでしょーか?」と指差したメニューは、このお店にある中で一番高い定食でした。
「2100円かあ・・・まあでも、名物っぽいのが全部揃ってるねえ。・・・でもキツイw」
悩む菅原君。
「食べたいです。ちょー食べたいです。ここまできて600円のラーメンじゃ寂しいですよー~わきゃー☆」
「勿論、菅原君のゴチよね? だってここまで女子大生を連れまわしたんだからさー。世の中のオジサマ達なら喜んで払うわよぅ☆」
少しイジワルしてあげよう♪
「ごごごごごごごゴチ!? むりっしょ? だってみんなので6000円越えるぜ?」
・・・しょうがない、もっとイジワルしてやろう♪
「夕実ちゃ~ん? 菅原君の大学にあるPCの中に、えっちな動画ファイルがあるのは知ってるよね?」
「は、はいです・・・わきゃ・・・」
赤くなってカワイイ♪ ・・・ま、菅原君のほうがもっと「ちょちょちょちょ!」と言って顔真っ赤だけどさーw
「それでね、実はご丁寧に隠しファイルでもっとえっちーな動画をワタシは発見しちゃったの」
ガタタッ!とテーブルを乱暴に動かして立ち上がる菅原君。
「う、うあわ・・・・・・で、で、そそれはどんなのですかわきゃー」
赤くなりながらも興味身心な彼女。
「それはね~『安心の人妻ブランド・・・・・・ふがふが
すごい形相で菅原君にお口を両手でふさがれるワタシ。
「はい、みんな好きなもの頼んでー☆」
こうしてみんなで仲良く「平家定食」なるものを食べることとなったのです。
勿論、菅原君のゴチでね☆
「わきゃーーー! ちょーたくさんです☆」
「これは山菜そばね」
「お、岩魚だね。骨まで食べれるよコレ!川魚だけどそんなにクセが無いね」
「これは何の刺身ですかぁ?先輩」
「これは鹿刺しだね。ちょっと独特な臭みがあるけれど、ルイベ(半凍り)なら結構いけるよ」
ここまでほとんど寝ないで来たにもかかわらず、お酒に食事に盛り上がる私たち☆
しばらく時の経つのを忘れて、それぞれの会話に花をさかせていました。
「名残惜しいけれど、帰りの電車は結構少ないからね。そろそろ帰ろうか」
お酒が入ってた勢いで私と夕実ちゃ~んは
「えーーーーやだーーー! ここに泊まっていきたいんですけどおー☆」と一緒にだだをこねたのだけれど、あっさり却下。
私たちは帰りのバスに乗り込みました。
再び戻ってきた湯西川駅。
トンネル内のホームの先に見える鉄橋に降り積もる雪の向こうから、ガタンゴトンと帰りの電車がやってきました。
「なんか・・・ちょっぴり帰りたくないですよね。わきゃー・・・」
とっても寂しそうに私に顔を向ける彼女。
旅の終わり頃はそういうものなんだけど、やっぱりそう思うよね。
うんうんと頷いてから
「そうだ、今度は女の子二人でここに来ようか☆」
思わずとっさに出てしまった。
「はいですぅ! そう考えるとちょっとキモチが楽になりますよお。今度はえっちーな先輩抜きでのんびりしたいですわきゃー☆」
苦笑いの菅原君。
・・・まあ、とっさに出た言葉ではあるけれど、夕実ちゃ~んと二人でってのもいいかも。
菅原君を抜きにしたら、この子とは絶対友達になれる自信はある。・・・この子はそういう子。
ガタンゴトン・・・・
ガタンゴトン・・・・
電車の揺れのリズムが心地よい。
ガタンゴトン・・・
ガタンゴトン・・・
少しだけ、彼女を知った旅だったのかも。
でも・・・ライバルはライバル☆
長々とここまで読んでくださった方ありがとうございます☆
うん。
恋のライバルじゃなかったら、親友になれそうなコもいたよ~
でもわたし
身を引いちゃうタイプだから、結局疎遠になるんですわ~
好きな人も彼女もね。
by ふぢた (2011-04-04 10:43)
三角ですね~
メーテル先輩 手強い相手ほど燃えるタイプかしら?
作戦がカワイイ♪
by ねこじたん (2011-04-04 12:31)
首塚ちゃん、可愛いです...♪
素直になりきれない所も、そんな自分にちょっと嫌気がさしてるのも魅力的です...♪
ちょいのりさん、キャラを魅せるのが上手いですよね...♪
by レイン (2011-04-04 14:16)
タスポ無くても買えるんですね^^
by 吟遊詩人41 (2011-04-04 21:26)
なにはなくともまずビール!
まったく意義な~~し!!! ^^v
オー!マイキー に、釘付けですwww
by haku (2011-04-04 22:12)
田舎そば。
おふくろの実家が芝川で、
ソコでガキの頃だべたそば思い出しちゃいました^^。
ぼそぼそなんだけど美味かったんだよなぁ。
by DEBDYLAN (2011-04-04 23:10)
「この泥棒猫めっ」ってドラマでしか聞かない言葉で日常性がないと、わたしも思っていたのですが
つい最近、ファミレスの隣の席でソレを発している女性の生声を聞きました。
何だか修羅場だったみたいだけど、使うときあるじゃん!しかも関西でっと感動しました。
次に生で聞いてみたいのは「この雌豚めっ!」です。
by わた (2011-04-05 00:50)
お昼から2千円越えとは、贅沢也w
さすがに量も多いし美味しそうですね。
by まめ (2011-04-05 06:54)
・・・やっぱり?!
菅原君もてもてだね~!
いや~そうでないと、2人のカップルらしき人たちの旅についていかないよね~^m^
私、ツンデレ首塚さんをちょっと応援!
(ちょいのりさんは素直な夕実が好きかな~?)
by リン (2011-04-05 07:04)
ふぢたさん、恋のライバルなんてほとんどなかったなあ~オイラ。
でもそのくせちょっぴりヤキモチ焼きだったりします^^;
by ちょいのり (2011-04-06 01:22)
ねこじたんさん、まあ~あんまりドロドロ展開は書きたくないってのもありますね^^
何れ、違うシリーズを書くことがあったら昼ドラっぽいのも書いてみたいですねw
by ちょいのり (2011-04-06 01:25)
レインさん、この子も夕実ちゃんも自分の分身です^^
多分、自分だったらこうじゃないかなあ~って感じで書いたんですよ^^
小説のテクニックと言われる「キャラの掘り下げ」ってのをちょっとやってみたかったので、今回は心情部分が多かったかも。
by ちょいのり (2011-04-06 01:28)
吟遊詩人41さん、いや~ここに写ってるたばこの自販機は故障というか廃棄されたやつだったと思いますよお~^^
買えたらレアだったのですがねw
by ちょいのり (2011-04-06 01:30)
hakuさん、やっぱ一発目はビールですよね!
オーマイキー!は結構好きだったんで、このポスターは写真におさめんといかんなー!って感じでパチリとしてきました^^
双子のキャラとかちょー好きでしたw
by ちょいのり (2011-04-06 01:33)
DEBDYLANさん、そういうのいいじゃないですか~^^
オイラも最近、昔のことを思い出してばかりで、歳くってきたのかな・・・とか思ってるのですよ。うへぇーw
by ちょいのり (2011-04-06 01:35)
わたさん、確かに使わない言葉だよねコレw
逆に笑ってしまいそうですもの^^;
雄豚め!とかなら、そのうちこのシリーズで使わせていただきますw
予約ということで^^
by ちょいのり (2011-04-06 01:38)
まめさん、今回の旅はこの2100円のお食事以外はたいしてお金使ってないんです^^
行きの電車賃も車掌さんとボクの手違いで、数百円でしたし。
by ちょいのり (2011-04-06 01:40)
リンさん、オイラは両方好きよ^^
夕実ちゃんは「憧れ」の部分。
首塚先輩は「ボクの内面」と言うか恐らくボクの性格に一番近いんだと思ってます^^
自分、結構好きなナルちゃんだしねーw
by ちょいのり (2011-04-06 01:44)