第467話 東京6分の1散歩で君の名は?ファイナル『ホーンテッド地蔵』東武スカイツリーライン・東向島・吉原 [心霊諜報部&フシアンナ物語2(ツー)]
『別に最初は仕事としての間柄だと思っていた』
代々、我が家が富詩(ふし)家に使える家系と言うのは知っていた。
イマドキお嬢様に仕える執事とか使用人なんて日本じゃ絶滅危惧種だろうよと当時は思ってましたよ^^;
漫画の世界じゃあるまいしw
伊豆大島で育ち、いつかは島を出て普通に就職して~って言うのが自然なといいますか、小さいながらも当時の私の漠然とした未来像だったのですが・・・
親元を嫌々離され、本家のある会津の大内宿へと行かされた。
そして住み込みでご主人様の家で働くなんていう昔の丁稚奉公みたいなことを本家のじいさまに強制された時は正直家系を怨みましたよ。
NHK朝の連続ドラマ小説の”おしん“かっつーの^^;
私が初めてフシアンナお嬢様と出会ったのは、彼女が小学生に上がった頃でした。
当時私は小学校6年生。
ぶっちゃけます。ええ、ぶっちゃけますとも。
当時のお嬢様はそりゃも~ワガママで体の90㌫が構成されてるんじゃないかってくらいのクソガキでした。
・・・何度ゴツンと拳骨をしたいと思ったことか^^;
そんな感じで彼女の思春期に付き合っていたのである。
ーーーでも
彼女は自分のワガママを貫いて都内へと家出したことで、何かが変わった。
親の庇護が無いことが未成年にとってどんなに大変か。
自分で働いて、お金を得て生きていくことが決して簡単じゃないものかを
一時の都会への憧れが、彼女に『現実』というものを色々と見せてくれたんじゃないかと。
---家出生活のある晩、ボクはこう言われた
『いつもありがとう・・・せばすちゃん』
初めてお礼を言われた。いや、何回かはそりゃ今まであったけれど、
なんか真にお嬢様から感謝の意を言われたのはこれが初めてなんじゃないかと思ったんです。
この執事職という数奇な運命に否応ながらも携わることになって、一番欲していた言葉だった、・・・のかもしれませんね^^
正直嬉しかった。すごく嬉しかった。
あと・・・
この時から仕える意識とは『別の』何かが私に芽生えていたのかもしれませんね ーーーーーー
リンダ副部長が『行って見たいデース☆』と、駅前の地図を指差した所へと向うことになった。
最初は5月にオープンした東京スカイツリーだとばかり思っていたのですがーーー
旧・業平橋駅(現・東京スカイツリー駅)を華麗にスルーして降り立った駅は、東向島駅だったのです^^;
東向島駅から歩くこと20分ほどでしょうか?
私たちはその目的地に辿り着いたのです。
『はうんてっど・・・じぞー?』
『ノン!ノン!ホーンテッドJIZOです☆』
直訳すると『おばけ地蔵』ですかねえ^^;
なんの変哲も無いふっつーの町並みの一角にポッツーンとひっそりと構える小さな寺社に辿り着いた私たち。
えっと・・・あのお・・・もしかして・・・
私は、ためらいながらも心の中にあったモヤモヤを声に出して副部長に告げたのでした。
『あの・・・もしかして、おばけ地蔵ってネーミングを見つけたからって・・・
我が部の心霊研究部の題材に見合うかなとか安直な発想だったり・・・・・・・・・・・・・・・しません?』
『えへへw 実はそんな感じだったりデース☆』
正直でよろしい!^^;
『まあ・・・その発想もわからないでもないですが、ここで幽霊が出るとかそういう類のお話でもお地蔵様でもなんでもないですよ? ここの石碑に書かれてる通り。
ただ、むかーし昔。
このお地蔵様が、から傘を被ってた向きがいつのまにか変わってたとかいう不思議な伝承等々でそういう風に呼ばれるようになったってだけみたいですし^^;』
『そう・・・なん・・・デスカ・・・^^; 思わずネーミングに、なにかイワクツキ物件なんじゃないかと思ってここを目指しちゃったデース^^;』
別に心霊研究部というお題目で行動してたのでなければ、ここも立派な史跡なのです。
でもだからといって安直にネーミングで『おばけ〇〇って名前だから=心霊』って勘違いで行くのもどうかなあ・・・^^;
『でも勘違いでもなんでも足を運べたことってのは意義があると思いませんかデース^^』
・・・それは確かに思うかも。
行かなきゃ分からないことは多いし。
ネットで情報を簡単に知れる世の中ではあるけれど、
実際に見聞きし行動した人には絶対、感覚で負ける気がします。
画像や文字だけの情報では分からない何かがそこにはきっと待っていると。
私がしばらく考え込んで居たところへ更にリンダ副部長が続けた。
『勉強にもお散歩にもなって、これこそキル・トゥ・バード・ウィズ・ワン・ストーン(一石二鳥)デーーース^^
行って良かった知って良かった見て良かったデス☆』
---その後は
街中を突っ切り帰路を目指しました。
少し歩けば自分達の町へと直通で行ける路線まで行けるはずでしたので、またのんびりとお散歩です^^
浅草の老舗の刃物屋『かね惣』で、ばっちゃの注文どおりの品を受け取った私は、
本来ならこのまま帰る予定でした。
ですが、雷門へと出た時に思わずUターンして店に戻ってしまったのです。
---な、なななな何でここにお嬢様が!?
島に居た頃とはだいぶ雰囲気が(特に髪型)変わったとはいえ、長年付き添った私は絶対に彼女の顔形背格好など忘れようが無い。
思えば随分と成長されたものだ。
ついこの前までは子供だとばかり思っていたが、もう既に魅力的な大人の女性になりつつあると最近は思っていたし。
胸なんて特にこう・・・ああいかんいかん!
そういう目で見てはw
んん・・・隣に居る外国人女性は・・・ダレなんだろう?
どういう付き合いなんだろう?
無理矢理東京の大学に送り出して早や4ヶ月。確かにメールや電話などで彼女の近況を知ることは出来た。
『元気にやってるよ~^^』とか『この前はこんなことがあったよ~^^』と。
でもここで男心の嫉妬心とでも言うのでしょうか?
彼女が私に教えない何かがあったりするんじゃないか。
・・・男友達とか。
私は思わず遠目から彼女たちを追ってしまっていたのであるーーーーー
浅草駅から出発する電車にこっそりと乗り込む私。
てっきり東京スカイツリーにでも行くのでは無いかとばかり思っていたのだが、
彼女たちが降り立った駅は東向島というとても下町情緒な感じの(悪く言えば何も無い)ところだった。
・・・ははは、オレってば何ストーカーしてんだ^^;
でもここなら・・・合コンとかで待ち合わせとかじゃなさそうだと、妙な安堵感を抱いたってのは誰にも内緒にしておきたい^^;
では何故こんな駅で降り立ったのかと興味を持ち、再び電信柱の影となり彼女たちの行動を追ったのである。
ーーー数十分後
おばけ地蔵なる小さな寺社に祭られている一角へと彼女たちが入って談笑しているのが見えた。
ほお~なるほど。どうやら彼女たちは史跡巡りをしていたみたいだ。
そういうのにまったく興味が無かったお嬢様だと思っていたが、それもまた良い事なんじゃないかと^^
でも自分の知らないお嬢様がそこにいたことに、ちょっと寂しさも感じたり^^;
ここで私は近づきすぎたことに気づく。
この一角は塀に囲まれていて中が見えにくいので入り口付近まで彼女たちに寄っていたのです。
ふいにこちらへと向ってくる彼女たちに私は思わず走り出してあらぬ方向へと駆け出していた。
---おかげでいつのまにか『迷子』と化していた^^;
そして彼女らを見失うことにも・・・。
ここで私は諦めることにした。ストーカーそのものな行為をしていた自分に罪悪感を感じ、これでいいんじゃないかと帰り道を探すことにしたのだ。
---迷うこと数十分
急に周りの町並みとは雰囲気が異なる一角に私は出たのです。
『吉原・・・吉原・・・吉原!?』
ああ・・・ここがかの有名な昔は遊郭であり、今は風俗街と呼ばれる場所だったのか。
私は基本的に風俗というものにはてんで疎いのだけれど、通りの雰囲気が他よりは違うことはすぐに分かった。
・・・が、何故か少しイメージと違っていたとも言っておきましょう。
私の執事職にも先輩などがいて、この手の風俗やらエロ話などを豪快にひけらかす方がいたりもしたんです。
控え室にての男執事達の談笑、コミュニケーションの一環です。
『常に執事は紳士たれ!』とは言われていますがそれはそれです。
男が集まれば、こういう話に花が咲くのも無理ではなかろうかというところでご勘弁を^^;
そこで色々と聞かされるわけであります。先輩さんたちにね。
思春期時代を執事職に奪われた私は興味ないフリをしつつも耳がダンボですw
先輩たちのお話を興味深く聞いていたわけです。
『吉原はすごいぞー!タクシーで直接お店に行かないと、途中で客の奪い合いに巻き込まれて辿り着けないからな。アッハッハ^^』
『周りは普通の家並みなのに夜はここだけ煌びやかで不思議な世界だ』などなど。
・・・でも先輩たちに昔聞かされた感じとは少し違っていた。
どちらかというとネオンは一歩隔てた通りとは異質の華やかさではあったのだけれども、
・・・閑散としていたのである。
不況のせいなのか、風俗自体が衰退しているのかは良く分からないのだけれども、
昂揚した男性たちが蠢く通りとはかけ離れた感がある場所になっていたと思います。
それでもせっかく来たのですし、しばらくこの吉原と言う場所を眺めていたのです(電柱の影でこっそりとw)
するとーーー
『あわわ・・・こ、ここがあのゆーめーなエッチなところなんですね^^;』
『ジャパニーズの男性のドリームな場所と聞きましたデス☆』
あわわ・・・なんでこんなとこに来ちゃうのですか彼女たち^^;
よりにもよって^^;
『アメリカは意外と風俗とかキビシイんデース^^ ジャパニーズはスゴイですよこんな通りがあるなんてw』
『いや・・・いらないと思います^^;』
ドンドンと半身で隠れている私の電信柱に近づいてくる彼女たちの声。
『こんなところで彼氏さんに会ったら幻☆滅!デスよね^^』
『あ、あたりまえじゃないですか!八つ裂きにしてそっこー別れますよもおー!^^;』
うはあ^^;
絶対にこんなところで再会できねー!
彼氏がどうとかそんなレベルじゃねー!
お嬢様にココであったら何もかもが終りだ^^;
・・・が、逃げようにも逃げられん!
絶体絶命の大ピンチ!
10メートルーーー
5メートルーーー
そしてーーー
もう間近と迫った時に後ろから来たタクシーが偶然にも私の傍に横付けして止まったのです。
タクシーを避けるように過ぎていく彼女たち。
そしてタクシーから降りてくるご老人。
そのご老人はタクシーの運転手がわざわざ下車してご老人をエスコートして私の隠れていた電柱傍の風俗のお店ににこやかに入っていったのであるーーー
・・・神様って信じてないのですが今日は信じさせてください!
おかげで神回避できました^^;
遠ざかる彼女たち。
そして送り届けたタクシーの運転手さんのボソッと『好色じじいめ^^;』という呟き・・・
電信柱から見えたこんな短い時間に凝縮された人間模様に、私は思わずクスッと笑ってしまった。
こんなコソコソじゃなく、今度は堂々と彼女に会いに行ってみよう。
夏が終った時にーーー
ここまで読んでいただきありがとうございました^^
今回は、ぶらりのほほん散歩に絡めて、フシアンナの空白の何年かの少々のお話とお互いの恋模様チックな場面を書いてみましたです^^
男女の感情のやきもきって大好物だったりです(ほんとうはエログロでドロドロを書きたいけどブログじゃ・・・なw)
次回は日常パートに戻ります。
実家へ帰る話だけれど、普通には帰らないのでお楽しみを☆
ちょっとメインブログじゃどうかなあ~ってことで、サブブログのほうに心霊研究部番外編のお話をひとつ書いてみました。
こちら→ 『韮山廃〇〇場跡地』
なんでまた?
心霊系とかタブー的廃墟が苦手な人はリンクを踏まないように。
ま、そういうことだ^^;
一応リンダの一人旅レポって感じにはなってますし、意外と真面目なお話だったりもしますので、
興味がある方だけ見てやってくださいな^^
ではではーーーー
かしこ
こんにちは。
了解しました!
by YUTAじい (2012-08-10 11:04)
実家にお戻りで。
良い時間をば(お母様に色々怒られてくださいw)
by まめ (2012-08-10 12:18)
おばあちゃんによろしくネッ(oゝД・)b
by サンダーソニア (2012-08-10 13:55)
今回は何回も読み返してしまいました。
うん、読み応えがあってすばらしかったです。
実家への旅もどのような経路をたどったのか・・・楽しみ。
東京から路線バスのみの旅・・・なんちゃって(^^)
by 駅員3 (2012-08-10 14:11)
そっかぁ、せばすちゃんはお嬢様のストーカーをして結局ちゃんと会えなかったんですねw
実家への帰省って・・・もしかして先日新幹線で乗り過ごしたのと関係あったりして(^^;)
by ニッキー (2012-08-10 17:16)
こんばんは^^久々訪問ですぅ^^;
知らないブログメイン画像にびっくり・・・・
時を感じます><;
帰省されるのですね!
私はお盆休み始まりです^^v
by 桔梗 (2012-08-10 21:36)
いわゆる赤線街ですね(・_・;)
今でも他の用途に転用された建物が残っているとか…(・_・)
そういえば、どっかに向きの変わる巨大地蔵だか大仏だかがあったなぁ…ちなみに住職が電動スイッチで動かしてるとこだけど^^;
by 下総弾正くま (2012-08-10 22:35)
ちょいのりさん、
迷い迷って、そこが、吉原大門なら、それもまた、乙ですね。
それにしても、突然のお嬢様に、慌てふためく、せばすちゃんが可愛いです。
by kiyo (2012-08-11 01:28)
なるほどなるほど!
と読み進めていたら、いつの間にかセバスチャンとの話も始まり・・・
楽しく読めました!
やっぱり、会わなかったんですね~、2人・・・
次はどんなシチュエーションで会うのか楽しみです!
by リン (2012-08-11 06:20)
まさかの 実家へ帰るの道で迷子とかないですよね…
フシアンナ様の名字が富詩だったのですね〜
初めて知りました
by ねこじたん (2012-08-11 06:40)
風俗ねえ・・・
ア◯バのアレも風俗ですからねえ(-_-)ニヤリ
by 吟遊詩人41 (2012-08-11 15:14)
帰省って楽しいばかりじゃないのかな?
ずーっと生まれ育った街に暮らしてるんで帰省の感覚がなくて^^;
by DEBDYLAN (2012-08-11 21:35)