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第543話 廃な感じの奥多摩編☆ファイナル『見えない切符』奥多摩ロープウェイ跡後編 [廃村さーくる]

『あれ?そう言えば・・・どこでチョコを渡そうかですぅ^^;』

 

 ムードもへったくれもないですが、この際、廃墟めぐりのどこかでエイヤッ!って差し出す?

 いやいやいや。なるべくなら2人きりになったときに、真剣に(たぶん照れながらですが)渡したい。

 ん?でもこの後2人きりになるなんてありえるの?そもそも。

 しかも鉄壁ブロックの琴音っちが監視してる最中にどうやって?

 

 ・・・ここは敢えておおっぴろげに『は~い義理チョコでーす。わきゃー☆』なんて軽く渡してみようかな?

 ・・・ああ、

 義理チョコって名目だと、教授さんにも配らないと、ううう・・・^^;

 私のバックには、前日に何回も失敗してようやく完成した本命チョコ13号ひとつしか入ってない!(数字が不吉だけど気にしないっ!

 この時の私は舞い上がっていました。

 明日のバレンタインデーに渡せばいいとか、みんなとバイバイした後にこっそり渡しに行こうなんて思わなかったのですぅ・・・

 そんな私のチョコバトル。

 第543話スタートです☆

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『あううう・・・なんか足場がグラグラするです^^;』

 ロープウェイに懐かしみ過ぎて中々その場から離れない私たちに教授が痺れをきらして戻ってきた。

 促がされて先を急いだ私たち。

 ロープウェイの動力室に入った私は奇怪な大車輪を見つけて眺めていたのだが・・・

『夕実君。その足元は“支索緊張おもり”と言って、ロープウェイのワイヤーが緩まないように端に設けられた重りの部分なんだ。

 よく足元を見てご覧?

 他のコンクリートと同様に見えるけれど、君が乗っている場所はコンクリートの塊が宙に浮いてるような場所なのだよ。

 いつ落ちても不思議じゃないほど年数を経ているものだ!

 早く降りなさい』

 いつも温和な感じの教授さんが強い口調で忠告する。

 私はあわてて飛びのいた。

 よーくそれを見るとーーー

 暗闇でよく見えずとも、この下が深いことだけは分かりました。

 あううう・・・。もしプツンとワイヤーが私の重みで切れたなら・・・

 重りと共にまッ逆さま・・・でしたですぅ^^;

『これはボクも気づかなかった・・・迂闊。ごめんね夕実ちゃん^^;』と、菅原先輩が声を掛けてくれた。

 ううん。いいんです先輩。

 ここが廃墟だと言うこと。

 ここが危険だと言うことを忘れていて無闇に行動した自分がいけないんですから・・・。

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 ---途中、

『トンテンカン・・・トンテンカン・・・』と金属か何かを叩く音がこだました。

『ええっ!?・・・私たちの他にも・・・誰かいるんすかね^^;』

 ここにいるメンバー4人が奏でる音とはあきらかに違う音が聞こえてきたのです。

 ・・・も、もしかして・・・おばけ???

 

『これはボク達以外にも先客(廃墟マニア)がいる・・・のかもしれませんね』と、菅原先輩が教授に話しかけた。

 そ、それのほうが全然いいですう^^;

 人なら納得。怖くないです(いいえ・・・廃墟で自分達以外の人に出くわすのも結構びっくりだったりするんですが^^;)

『うう~ん・・・まあ、ここはかなり有名どころの廃墟だそうだし、先客が居ても驚くことは無いだろう。

 ただ、よーーーく耳を済ませてごらんなさいな。

 ・・・どうですか?

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 施設内の音というよりも、外から聞こえてくるように思えませんかな?』

 あ、確かによーく注意深く聞いてみるとーーー

 外。しかもここより山の上から聞こえてくる気がしますです。

『保安林整備の職員さんのお仕事の音かもしれませんね^^ ま、怖がることは無いのです。続けてガンガン行きましょう!アッハッハ☆』

 教授のあっけらかんとした笑いに皆なぜか安堵し、先導されつつ次へと向ったのです。

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 動力室跡らしきところを抜けた私たち。

 明るいスペースへと降り立った。

 目の前に見える小部屋のカウンターらしきものに、琴音っちが『ここってなんだろうね?』と、誰を見るでもなく、誰が答えてくれてもOKって感じで聞いてきた。

 勿論そのアンサートーカーは、教授さんです^^

『ここは恐らく切符売り場のたぐいだろうね^^』

 その答えに皆当時の情景を頭の中にそれぞれ思い浮かべたんでしょうか。

 ここで切符を売りさばいている人や、それを買い求めるお客さんの情景を

 しばらく皆、目を瞑りその場を動かなかったです^^

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 しばらく思い思いに動き回ってた私たち。

『この施設の上に続く外階段が見えたのだけど、どうだろうか?

 行ってみようと思わないかな^^』

『『『行ってみたいです☆』』』

 教授の提案に全会一致。

 一同、この施設の屋上を目指すことに^^

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 ・・・とは言うものの

 踏み抜いたり崩れたりしたら転落もしかねない。

 ある意味廃墟で木造の階段より信用できない鉄階段を慎重にゆっくりと登っていく私たち。

 なんとか上り詰めたその先はーーー

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 雪の覆い被さる。そして枯れた木々が生い茂り、コンクリートの建物の屋上とは思えない自然過ぎる屋上庭園と化した(自然に帰った)場所に出向くことになったのですぅ。

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『雪で見えない裂け目があるかもしれないので慎重に^^』

 教授のアドバイスに、みな恐る恐る。

 今まで登ってきた高さを思えば充分に滑落でどうにかなっちゃう感じです^^;

 なんだかんだ教授さんの足跡に続けば大丈夫~♪と、教授さんの踏んだ足跡に自分の脚を重ねてついていったのです。

 少し藪っている、そこから見えた奥多摩湖。

 当時、ここから見た人は未来の屋上がこんなになってるとは思わなかっただろうなあ~・・・。

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 ほぼ全てを周ったと感じた私たちは、ここを後にすることにするのですぅ。

 この後は都内に戻ってお開きパーティー・飲み会してから、お開き解散かなあ?なんて思ってましたです^^

 チョコ渡せるチャンスもあると思ってたですよ~。

 

 ・・・が、

『ロープウェイと言ったら“反対側”も存在しますね^^ ではでは反対側の“かわの駅跡”へと行って見ましょうか^^アッハッハ☆』

 ええええっ!? このあとまだ廃墟ォ???

 私のなんかガッカリを他所に、菅原先輩は『ぜひ!ぜひ!ぜひ!』と大喜び。

 結局、この『みとうさんぐち』と言うらしいロープウェイ廃墟からワイヤーが伸びるその先へと、私たちは行くことになったのでした^^;

 

 

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 教授さんの車に乗り込んでものの数分で、奥多摩湖対岸の『かわの駅跡』へとやってきた私たちですぅ。

 今は使われて無いだろうと思えるテニスコートやゲートボールのグラウンドの片隅に、ポツンとあったんです。

『では、行きますかな^^ アッハッハ☆』

 教授さんの号令で皆、かわの駅跡へと突入開始ですぅ^^

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 入り口とおぼしきところに入ると直ぐ、かつて改札口だったところに出会いました。

 一階部分と思われる場所をみな思い思いに捜査開始!

 ・・・でも、あるのは、ここが閉鎖された後に近隣の人たちに持ち込まれただろう『畳み』や『機材』があるだけでしたです^^;

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『廃墟になったところを倉庫代わりに使う自治体は今まで結構見てきたよね?みんな^^』

 菅原先輩の声に琴音っちや私はウンウンと頷いた。

 栃木に出向いた時の・石裂常等小学校跡や群馬の矢納水力発電所跡へと出向いた帰りに寄った譲原小学校跡もたしかそんなだったです。

『でも・・・ここは倉庫としても、もう使ってないようだね~』

 ・・・ほんとうにほんとに廃墟さんなんですね・・・

 なぜか普通にめぐり合った廃墟さんよりも悲しく感じたのは何故なんでしょうか。

 

『さあ、そろそろ降りてみましょう。皆さん切符は窓口で購入されましたか?

 ん?買ってない?

 大丈夫^^

 私が皆さんの分まで購入して来ましたので。アッハッハ☆』と、

 教授さんが見えない切符をひとりひとり手渡すそぶりをしてみせた^^

 皆、改札の脇を通るときにその切符を宙空に提示し、エヘへ♪と笑いながら下への階段へと降りていったんです^^

 ーーー少し胸がキュンとした。

 

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『うは!? なんかいますよw さっき見たようなのがマジでw』

 階段を降り切ったところですぐ、琴音っちがニヤニヤしながら。

 でもすごく嬉しそうに何かを指差す。

 それはーーーーそうです!

 だってーーーー

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 私たちのアイドル。『ゴンドラさん』の登場ですから♪

 

『こちらは“くもとり号”なんですね教授』

『向こうにあったのは“みとう号”。ここ奥多摩から山梨側へと裾野を広げる山々から冠号を取ったんでしょうなあ^^

 ・・・おおっと、琴音君は早くも釘付けのようですねw

 そうはさせませんよ?ではではとりあえずすぐそこの部屋へと飛び込みましょう。アッハッハ☆』

 マジマジとゴンドラを覗き見ている琴音っちにちょっぴりイジワルっぽく先を促がす教授さん^^

『ええ~^^; はいはい行くっすよおw』

 渋る彼女だったけれども、笑いながら折った膝をだらだらと伸ばして私たちと共に、ある小部屋へと向うのでした。

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 そこは、先ほどのゴンドラがすぐ見下ろせる薄暗い小部屋。

 窓から見渡せる明るい世界とは対照的に、影に隠れた機械のようなものが蠢いていたんです。

 そのほこりをかぶってる機械からひとつを指差して教授さんが言う。

『見てください』

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 教授さんが指し示した先を皆注目。

 そこには薄汚れていてはいるけれど、うっすらと何かのメーターのような長細い計器があったのです。

『これはゴンドラが今どのあたりに居るかを指し示す計器だね^^』

 おお~!ここでどこにゴンドラが居るかわかるのですか^^

『要するに制御室だね^^ ここでこの奥多摩ロープウェイを管理していたということだよ。アッハッハ^^』

 あれ?そういえばさっきの『みとうさんぐち』にはこんな部屋は無かったですうー。

『こちらがメインのロープウェイだったと言うことですね教授』

『そのようだね^^』

 先輩と教授のやりとりをウンウン聞いていた私たちだったのですが、

 ここで琴音っちが疑問な顔して

『ハイ!ハイッ!教授!教授ぅ~』と挙手をしたんです。

『はい、琴音君。なにかな?^^』

 

『さっき行ったみとうさんぐち駅って周りにな~んも無かったじゃないですか。マジで^^;

 あるのは山肌ってゆーかー崖?

 んで~、こっちは周りに民家があったりするからこっちがメインのロープウェイだったんだなあ~ってのは分かるんすよ。

 でも、ロープウェイってふっつー、起点となる場所から“目的地”とかー、・・・えっと観光地を目指しちゃいますよーって言うのが当たり前じゃないですか。

 対岸側って見るももなんて特になんも無かったですよ???』

 ・・・ああそうそう!たしかにそう!

 ここのロープウェイって私たちの知ってるロープウェイとなんか違うと思ってた。

 

 ---ここで『フッフッフ☆』と不敵な笑みを浮かべてから教授さんが皆に語り始めたのです。

『ようやくこの“奥多摩ロープウェイ跡”を語れるようですなw

 そう、君達の疑問こそ、ここが廃墟に至ってしまったことの理由のひとつになるのかもしれませんな^^

 1962年。ここの当初の目的は奥多摩湖上の遊覧や登山客の運搬を主たるものとして起業したそうだ。

 開業当初は賑わったようではあるけれど、

 数年後に湖を横断する橋が建設されると利用客も激減。

 距離的にも630メートル前後、景観的にも変化の乏しいこのロープウェイは観光客に見放されていくことになっていったようである^^;』

『そりゃそうっすよねえ・・・。だって・・・』と、琴音っちが“くもとり号”の向こうの景色を見つつ嘆きをいれる。

 つられて見たその先に見えるのは奥多摩湖。

 でも・・・めちゃくちゃすぐ向こうに対岸のみとうさんぐち駅跡が見えちゃってます^^;

 

『・・・要するに“魅力の乏しいロープウェイ”だったというわけですね^^;

 そのあと結局4年足らずという短い期間で休業。運行を停止。

 再稼動を待つことなく、ここの母体である会社の経営不振も相まって1975年頃から完全に見捨てられたということなんですな・・・』

 えっと・・・えとえと・・・1975年ってことは・・・

 別に指を折って数えるほど私は、おバカじゃないのですが、

 思わず指を折って年数を考えるそぶりをしていた私を見て、教授さんが続けたのです。

『そう。・・・ここは40年を越えた廃墟だということなのですな。

 経営会社も今や消息不明。

 せめてものと言うことで湖を渡しているワイヤーくらいはと、自治体が撤去を考えたのだが・・・

 なにせそれすらも自治体にはかなりの費用負担。

 所有者が行方不明とは言え、撤去には所有者権限の法令に準拠しなくてはいけないという縛りがあって手を出せずに今に至ってしまっているということのようだ。

 “取り壊したいけれど出来ない廃墟”

 それがまさにここ、奥多摩ロープウェイ跡のことなんですな』

 なんとも言えない面持ちで、くすんだガラス越しのゴンドラを見すえつつ教授さんは語った。

 

『めっちゃ道路とかの上を通ってるあのワイヤーが、ある日突然プツンって切れて、走ってる車や歩いてる人に降りかかってきたら・・・って思うとヤバイですね^^;』

 琴音っちの言葉に皆頷く。

 いままで私たちがめぐってきた廃墟の中でもここは異質のように思えましたです。

 だって、廃墟に到ってもその後、倉庫代わりになって活躍できたり

 もしくは誰にも迷惑掛けることなく、ただただ自然に任せて寂しく朽ちていく(自然と同化する)だけの存在ばかりだったから・・・

 

 普段はオチャラケている琴音っちも真剣な顔をして唸っていたのが印象的でした。

 彼女は真面目な時はとことん真面目なのも知っていましたし。

 

 ーーーいくばくかの私たちの沈黙。

 それを破るように教授さんが『パンパンッ!』と手を叩きつつ、大きな声で続ける。

『はいはい清聴!清聴! 君達をここに連れてきて私は良かったと今実感しているところですよ^^

 滅びの美を感じ取るのも結構。

 廃墟に到る歴史を知るのもなお良しだ。

 そしてまた危険性をそこから学ぶことも重要。

 ですがーーー、過去の遺物から、今や未来にもたらす“何か”を感じ取っていただけたなら、君達のサークルの責任者を担うものとしては満足もしているのですよ。アッハッハ^^』

 

 ここに連れて来ることで、教授さんは私たちに足りないものを知ってもらいたかったのだということに今更ながら気づかされた。

『教授、勉強になりました^^』

 先輩がサッカーの試合終了後の選手みたいに教授に抱きついて感謝してた。

 ま・・そこまでのことじゃないとも思いましたがーーー

『廃墟の美』と『廃墟に到った歴史』くらいしかせいぜい掘り下げてこなかった私たちのサークル活動に

『廃墟の行く末がもたらすもの』について小さい一石を投げ込んでくれた旅路だったのかな?とも思いましたです。

 

『では次いってみよー☆』

 とっても真面目な雰囲気が漂っていたというのに、それもまたぶっ壊すのも教授さんの明るい一声だったりするのが面白いw

 

『廃墟が泣いてますよ?アッハッハ』

 

 せっかく来たんだ。色々巡らないでどうするよ?と、言わんばかりにガンガン突き進む教授さんです^^

 私たちも『ですよね♪』と答え、彼に続いて、このかわの駅跡の施設の残りを巡ったのでしたですーーー

 

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『やはり起点となる施設ということもあって、こちら側の方が断然大きいですね教授』

 先輩が暗がりを進む教授さんに言葉を投げる。

 ・・・一見、私は向こうの廃墟と外観だけなら同じくらいの大きさの施設跡だと感じていたのですがーーー

 中の構造を見回していると、それは間違いだと実感したんです。

 奥行きは確かに変わらないのですが、縦に縦に深く長く高い大きな廃墟だったのですぅ。

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『うおおおおおっ! こ、これは・・・!?』

 暗がりの中でグルグルと見学していた私たちの耳に、菅原先輩の声が突然こだまする。

『え?え?え?ど、どどうしたん?お兄ちゃん!?

 なんかヤバイもん発見みたいな?』

 慌てて駆け寄る琴音っち。

 いったい先輩は何を見つけて驚いているのか?

 思わず顔を見合わせてしまった教授さん共々、私は彼女に追従して先輩の元へ向ったーーー

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 先輩がマジマジと見つめているその先にあるのはーーー

 数ページほど、ほつれて散乱している雑誌の記事でしたです。

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『えっとォ・・・お兄ちゃん? これって・・・・・・競馬・・・の記事???』

『そうだよめっちゃ昔の競馬の特集記事だよ♪

 スピードシンボリとかこれだと期待の印は全然少ないんだなw

 このあと有馬記念を連覇する名馬になるだなんて思った人は、多分いなかったんじゃないかな^^』

 ・・・なんだか廃墟に居る事も、おもいっきり忘れて、落ちていた雑誌の競馬記事を読み漁る菅原先輩がそこに居たです^^;

 まあ・・・それはそれで競馬好きの先輩らしいですが^^;

(先輩は好きだけど、ギャンブルする先輩はあんまり好きじゃなかったりですぅ^^; まあでも、儲かった時に皆をご飯に招待するのは大好きですがw)

 

『懐かしい名前だね・・・って、おっとっと。菅原君。

 ここまで来てそれは無いだろう^^;

 ・・・えーとですな、こちら側にも勿論“外階段と、その屋上”があるのを見たので、皆で最後に奥多摩湖を見に行きませんか^^』

 教授さんの提案に賛成した私たち。

 まだまだ雑誌の切れ端を覗き見たそうな先輩の背中を

 ニヤニヤしつつ琴音っちと一緒に押して上へと続く階段へ向ったのでしたーーー

 

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『うはっ♪ こっちもスゴイっすw』

 おっかなびっくり、錆び色の外階段を登ってきた私たちの目の前に広がった景色は、

 向こうのように雪で覆われてはいなかったけれど、

 コンクリートに自然がうち勝ち取った光景が、やはり広がっていたのでした。

 ーーー自然はすごいですね。やっぱり。

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 先行く教授さんは、屋上の片隅にポツンとある台座っぽい跡を発見し、

 それと向こうの景色を交互に見比べつつ、こう続けた。

『これはーーー多分、観光地の展望台によくある“100円玉を入れて景色を何分か見れる望遠鏡”の跡だったんじゃないかな^^』

『と、ゆーことは、そこがここのベストビュースポットってことっすね^^

 んじゃ、お言葉に甘えてーーー』

 琴音っちがズンズンとその台座まで寄って向こうの景色を眺める。

『んー・・・木がめっちゃ邪魔で全然ベストじゃないんですがマジでー^^;』

『それ程40年という月日は長いということですな』

 周りはどんどん成長して行ってる様を見続けて来た廃墟さん。

 でも自分の時は止まったまま・・・

 廃墟さんに意志があったのならどんなに寂しい思いをしてるだろうかと、少し悲しいキモチになった。

 

『ではそろそろここを後にしますかな^^』

 ほぼこの施設内を見て周った私たち。

 最後にお礼を言ってお別れしましょうねと教授さんが言ったので、

皆一礼をしつつ、国道沿いの寂れたドライブインに止めてある教授さんの車の元へと戻ることにした。

 

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『あれ?上のほうに神社があるっぽいよ?』

 琴音っちが施設跡から出て直ぐに、近所に社があることを発見。

『せっかくここまで来たんです^^ 急ぐ旅路でもないですからどうでしょう皆さん。

 ここの土地の神様にお礼を言っておくのも悪くは無いと思うのだが^^』

 私たちは教授さんの言葉に賛同。

 竹が生い茂る登り道へと針路変更したのでした。

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 数分もしないで目の前に現れた神社は、寂れた道中とは違って少し真新しい感じのする立派な意匠のほどこされた社だったのです。

 私たちはみな思い思いに目の前の鈴緒をガラガラ、そしてパンパン!と手を叩いてお祈りしたです。

 私もガラガラパンパン!

 目を瞑ってむにゃむにゃお祈りです。

 ・・・するとーーー

『あれ~?夕実っちはチョコレート渡せますようにって祈ったりしたのかにゃー。へへへ~☆』

 私の耳元に小声と言うにはギリギリな小悪魔の囁き。

 ムッカー!

 ちょ!?すぐ近くにいるんですけど先輩があ^^;

 聞こえちゃうでしょもうッ!

 私はめいっぱい、キッ!っと琴音っちを睨んでみせる。

 ・・・が、

『え?チョコレートがどうかしたの?』

 聞こえましたか先輩^^;

『むむ?チョコレートとはなんでしょうかね?』

 小声じゃないよ!教授さんにもきこえてるよお!

 

『ああ~この社の鉄の部分がチョコレート色してて渋いな~って夕実っちとお喋りしてただけっすよ^^えへへ☆』

 

 まるでマッチポンプ。

 琴音っちが火をつけて、琴音っちがフォローする・・・

 私は完全に彼女に弄ばれてるんですけど^^;

 

 ---廃な旅路もようやく終了。

 私たちは一路、教授さんの住む町へと帰る事に。

 

 ああ・・・そういえばやっぱり全然チョコなんて渡せるチャンスがないんですけど。

 元々無理だなあとは思ってた。

 でもどこかで渡せたらいいなとマイバッグにこっそり忍ばせていたんだけどォ・・・。

 敵が多すぎです!

 もう明日でいいやと帰りの車中で考えていた。

 明日は先輩どんな予定なんだろうなあ~とか、

 琴音っちの隙はあるのかなあ・・・とか、そんなことを悶々と頭の中を巡らしてーーーー

 

 ---教授さんの住んでる街へとさしかかった頃

『さあ、もうすぐ駅前に着くわけなんですがね、

 菅原君と夕実君は先に車を降りて打ち上げお疲れ会会場で席を押さえておいてくれないかね^^』

 教授さんはどうやらこのまま帰るのは忍びないと、居酒屋さんでの飲み会を提案してくれたのですぅ

 えっと、えっ?

 なんでまた私と先輩???

 琴音っちは?

『車を一旦置きに家に戻るのだが、琴音君が私のミリタリー系グッズを見て見たい~ん♪と仰るもんだから、少しの時間ではあるがご招待しようと思ってるのですよ。

 ねえ?琴音君^^』

『え?あ~・・・、そう。そうそう^^ なんかそんな感じィw』

 教授さんはバックミラー越しに私を見つけ、にこやかに目配せをした。

 

 ううう・・・気を使ってくれたってことですね(T△T)

 

『ではここで^^』

 駅近くの焼き鳥屋さんの前に到着した私たち。

 降りる時『バシッ!』っと背中を叩かれた。

 手型の紅葉がくっきり滲みそうなくらい強く。

 その犯人は彼女しか居ない!

 同じ後部座席に座ってる琴音っちしかできないことだしね^^;

 

 イテテテテ・・・と、なんで叩くのよもうッ!と、文句の一つでも言ってやろうと振り返った先

 そこには親指を立てて『いってらっしゃい^^』と呟く彼女が居た。

『う、うん・・・行ってきます・・ですぅ^^;』

 

 そしてその彼女越しに見えた教授さんは、右手をビシッとおでこに付けて私に敬礼のポーズを見せていたのですーーー

 

 店員さんに案内され席に着いたのだけれど、なんか私・・・ギコチナイ!

 普段は普通に喋れているのに・・・

『教授たちもまだまだ来ないだろうし、先に一杯だけでも飲んじゃおうかw夕実ちゃん^^』

『え?あ、は、はいです。そ、そうですねそうです。・・・いいと思います、、』

 うわあ・・・・・・ダメダメですう^^;

 ・・・

 ・・・ううん。ダメです!これじゃダメです!

 せっかくエールを貰ったのに、後押ししてもらったのに、ここでビシッと行かないでどうするの私っ!

 

 頼んだグラスビールが私たちのテーブルに置かれる。

 そのグラスに付いている結露と同じように私も緊張の汗をかいていた。

『じゃあ~おつかれさまでした~^^』

『お、おつかれさまですぅ^^;』

 私は教授さんたちが来るまでのちょいと一杯なはずのビールを一気に喉に流し込んだ。

『お、夕実ちゃん一気にいっ・・・』

『あのあの先輩!こ、こここコレ!』

 先輩の声を遮り、私はバックからチョコを勢い良く取り出して、その勢いのまま先輩へと付きつけた。

 でも先輩の顔はとてもじゃなく見れません!

 下を向いたまま両手に乗っかった私の小さなチョコレートを

 

『お!こ、これはもしかして・・・チョコレート?バ、バレンタイン・・・かな^^』

『そ、そそそ、そーですッ!手作りしてしてき、きき来ました!』

 お、おち、おち、落ち着け私ッ!あわわわわ・・・

『これをボクに?ありがとう♪』

『せ、先輩にはお世話になってるです。か、感謝のキモチをこめて作ったんです。

 た、たたた食べてもらえたら・・・嬉しいかなあ。・・・わきゃー・・・』

 ああーーーーもおおーーーーー!

 もうどうしようもないくらいに体中が火照ってる!

 耳の先から火を噴きそう!

 ・・・でも、

 でもでも渡せたですよ私ッ!

 やったです!!!

 

『・・・で、これはーーーーーー義理チョコ・・・なのかな?えへへ』

 先輩も少し恥ずかしそうなそぶりを見せつつ私に聞いてきた。

 イジワルな質問です!

 そんなの絶対義理チョコなわけないじゃないですか!

『ほ、本命です。せ、先輩のことす、好きです』

 

 言っちゃった。

 

 とうとう言っちゃった私ッ!

 

 もうどーにでもなってくださいーーー

 

 私たちを包む少しの沈黙。

 先に切り出したのは先輩でした。

『ありがとう。夕実ちゃんのキモチは受け取った。これからも仲良くしてよね^^』

『は、ハイですぅ』

 やったね私!大成功♪

 って・・・なんか先輩のニュアンスおかしくない!?

 ちょ、ちょちょちょ!おかしくない!?

 そこにーーー

『やあやあ待たせちゃったね君達^^』

『あ、夕実っちもう飲んでるのかい!w』と、教授さんと琴音っちが到着です。

 先輩は慌ててポッケに私のチョコをしまいこんだのが見えた。

『ではお姉さんビール4つね^^ みんなで一緒に乾杯しようじゃありませんか^^』

 店員さんに4本の指を掲げて人数分のビールを頼んだ教授さん。

 しばらくして運ばれてくるビールを皆手に持って

『ではでは、今日はオツカレサマでした^^かんぱ~い☆』

『『『かんぱ~い☆』』』

 あらためての乾杯。

 それからは、今日の奥多摩ロープウェイでのお話や、次回はこういうところにご招待したいですな~と、教授さんを中心に話が盛り上がったです。

 ーーー先輩と教授さんがマンツーマンで熱く語り出した頃

『ツンツン』

 琴音っちが私の小脇を突付きつつ、小声でゴニョゴニョと聞いてきた。

『で、どうだったの?』

『どうって・・・チョコ?うん、渡せたよ。しかも好きですも言っちゃった。私、言っちゃった☆

 ・・・でも~、なんかこれからも仲良くしてよねで終っちゃったんだけど・・・^^;』

『照れてるだけじゃないの?なんせお兄ちゃんに渡そうとする本命チョコなんて私が全部ブロックしてきたわけだし、

 初めてのチョコに、ああ見えてあわあわしてるんだと思うけどね☆』

 そ、そうだといいんだけど^^;

 なんか『友達でいいなら・・・』って、やんわりお断わりされちゃったような気がして^^;

『まさか好きまで言うとはこの子w 夕実っちにしては上出来っす。

 でも夕実っちがお兄ちゃんのことを好きってのは本人も前から知ってることだからね~。大学まで追いかけて来てるわけだしw

 ま、これから徐々に愛をはぐくんで行きましょうよ“義姉(おねえ)さん☆”』

 そう言ってバシバシと私の背中を叩く琴音っち。

 イテテテテ^^;

 それは彼女なりの発破だったのかも。

 うしっ!前向きに行きますです!

 とりあえずは私のキモチは伝えたんですから^^

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ちょいのり・サザエさんver1.jpgここまで読んでいただきありがとうございました(え?長すぎて読んでない?w)

ぎゃる魅.jpgなんか腑に落ちないっすね^^;

ちょいのり・サザエさんver1.jpgなんでよ

ぎゃる魅.jpgだってせっかくチョコ渡したのに菅原先輩のあの台詞は夕実ちゃんにしてみたら悲しくね?マジで

ちょいのり・サザエさんver1.jpgそこいら辺の話は、これからの話に関わってくるから心配スンナ^^

 次回からは廃村サークルでの互いの意識に少しづつ違った変化が訪れてくる予定だから^^

ぎゃる魅.jpgま、ここでボクも好きです付き合ってくださいじゃ、話も終わっちゃうっすもんねw

 先延ばし先延ばしっすねw

ちょいのり・サザエさんver1.jpg仕事が忙しくて3記事分くらいまとめ書きになっちゃいましたが、まあ~そこは写真だけでもチラ見してくれればいいかなあ~と思います^^

 じゃ、ではではまた今度お会いいたしましょうず☆

 


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獏

長編 お疲れ様ッス(^m^)☆
熟読させていただきました(@@;)
しかし菅原先輩思わせぶり・・・・
この後どんな態度になるんだろう~(^w^)

by 獏 (2013-03-04 15:55) 

馬爺

多摩湖にロープウェイが有ったのも知りませんでしたね。
それにしても古い競馬情報ですね、騎手も私が知っているのは加賀武見と中野渡位ですね。
なんとなくストーリーが行ったり来たりしているようでこんがらがってきましたね。
by 馬爺 (2013-03-04 17:26) 

亀仙人 タカヨシ

またお会いした時にでも『双方』にインタビューッスかねぇ~(爆
12日はヨロシクです!(^o^)丿

by 亀仙人 タカヨシ (2013-03-04 18:36) 

kiyo

ちょいのりさん、
やったー、夕実っち、大成功でおめでとう。
やっぱり、琴音ちゃんは、夕実っちしか認めていなかったんだね。
きっと、昔でも、夕実っちが渡せば、ブロックしないで渡せていたんではと思いますね。
よかった~~~。

by kiyo (2013-03-04 19:09) 

サンダーソニア

サラッと流した菅原くんの意図は???
by サンダーソニア (2013-03-04 20:38) 

まめ

廃墟は怖いですぅ~w
本命チョコなぁ・・・ そもそも本命ってかなりの長い年数
いなかったしなぁ・・・
さて、どこまでがあったことで、どこまでが無かったことなの
かなぁ?と想像するのも楽しいですね~
by まめ (2013-03-04 20:51) 

風太郎

いやぁ~面白かったです!
ココの廃墟は崩れて大きな事故にならないと良いんですがね~
支柱もワイヤーもかなりヤバそうだから心配です。
by 風太郎 (2013-03-04 20:55) 

ちょいのり

ちなみにサブブログも更新した。
なんせやっとこさゆっくりできる休みだったからね!

http://sinn-niwakunoakuma.blog.so-net.ne.jp/2013-03-04

ストーリーっぽいブログが苦手な人は、サブのほうのどーでもいい感じの記事のほうがいいかもねw

by ちょいのり (2013-03-04 21:24) 

ちょいのり

皆さんコメントどうもです^^

奥多摩の廃墟シリーズも無事に終り、
次回からは伊豆の温泉&思いつき途中下車編を予定です^^
物語形式じゃなくって、おいらのフツー旅です^^
待っててね~
by ちょいのり (2013-03-04 21:28) 

johncomeback

久々の更新、お忙しいんでしょうねぇ(*'-')b OK!
by johncomeback (2013-03-04 21:29) 

ねこじたん

なんだか すごい勉強になりました〜
ロープウェイ系もそうですが
チョコ系も…???
まぁ もう  ねぇ… ですけどね〜(笑
by ねこじたん (2013-03-04 23:21) 

DEBDYLAN

浅間神社の山にもロープウェイあったの思い出しちゃった。
七夕豪雨のときに事故があって撤去されちゃったんだよなぁ。

by DEBDYLAN (2013-03-04 23:42) 

銀狼

長編記事堪能致しました^^
全然大丈夫ですよ~、私も長いんで(爆)
思わせぶりな最後でしたが、どうなっていくのか。。。^^
でも、こんな感じでチョコ渡された事ってないなぁ・・・(涙)
by 銀狼 (2013-03-04 23:58) 

下総弾正くま

そのトンテンカンいう音はもしかすると冬眠から目覚めたお友達かもしれませんなヽ(・Å・)ノ ガオッ
by 下総弾正くま (2013-03-05 00:19) 

ニッキー

おぉ、とうとうチョコを渡して告白までしちゃったんですね(^^♪
これからの展開が楽しみです^m^
by ニッキー (2013-03-05 00:32) 

唐津っ子

読むのに凄く時間かかっちゃいました.
私の睡眠時間を返せ~(笑)

新聞の競馬記事ですが,
スピードシンボリも懐かしいけど,騎手の方々が(驚)
今,バリバリの調教師だったり,調教師を引退してたり・・・
by 唐津っ子 (2013-03-05 02:15) 

YUTAじい

おはようございます。
多作ですね・・・続きも楽しみです。
バレンタイン段々寂しく・・・。
お元気ですか?
by YUTAじい (2013-03-05 06:25) 

駅員3

超長編お疲れ様でした。
なんとなんと、告白まで・・・
それにしても気になるのが、菅原君の反応です(^^・・・・

サブ・・・これから行ってきます(^_-)/
by 駅員3 (2013-03-05 07:28) 

リン

廃墟なのに壊せない。。。
先日熱海に行った際、マンションが建っているのに、入居前に倒産した建物たちが多くあり、その寂しさを思い出してしまいました…

さて、教授?いやもしかして琴音ちゃんの配慮で渡せてよかったですね!(ん。。。よく考えるとやっぱり琴音ちゃんの配慮かな~^m^)
確かに、菅原くんの返事はもやっと。。。ですね(・。・;
by リン (2013-03-05 07:57) 

sakamono

奥多摩湖ロープウェイの歴史を知るコトができて良かったです。
恥ずかしながら、こういう展開のお話、面白いですね^^;。
by sakamono (2013-03-08 16:56) 

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